5月3日に急逝した渡辺裕之さん(享年66)が、妻の原日出子と最後に夫婦共演した映画『心の詩〜扉のむこうに〜」の完成試写会が、7月21日におこなわれた。

 家庭は妻(原日出子)に任せっきりの仕事一筋の父(武智大輔)。長男が引きこもりになっても単身赴任先から戻ることはなく、子供たちからは「こうなったのはお父さんのせいだ」と恨まれている。

 だが、父が亡くなり、遺品を整理すると、どこかのアパートの鍵が見つかった。なんのためにアパートを借りていたのか。

 子供たちが理由を知るために行動すると、思っていた父とは違う「もう一つの顔」が見えてきた。愛する妻と子供たちに伝えたかった父のメッセージとは――。

 家族の絆をテーマにしたこの作品で、父に素直になれない長女を演じたのが、元NMB48の矢倉楓子だ。

「言葉にはなかなかできないけれど、“家族の温もり” を感じていただける作品だと思います」と語る。

 渡辺さんは父の上司を演じている。

「すごく穏やかで優しい方でした。撮影が始まる前、みなさんと円陣を組んで『行くよ、ファイト・イッパーツ!』と気合を入れてくださったことが忘れられません。あれで緊張が解けました」(矢倉さん)

 次男役の松本岳は「渡辺さんと原さんの関係性がすごくいいなあと思いました」と振り返る。

「おふたりが打ち合わせの席や現場にいらっしゃると、和やかな安心感に包まれました。僕のなかでは、渡辺さんと原さんが一緒にいて “一つの存在” みたいに感じていました」

 父役を演じた武智大輔は、渡辺さんと30年以上の付き合い。舞台、Vシネマなど共演作品は50本になるという。

「いまでも渡辺さんを思い出さない日はありません。月に1回ほど一緒にゴルフを楽しみましたが、渡辺さんはスコアが悪いと帰りに練習場に寄って打ち込むんです。

 この “ひたむきさ” や向上心は、役作りでも一緒でした。とにかく突き詰める。学ぶことばかりの先輩でした」

 まだまだ悲しみは癒えない。作品は今夏より劇場公開される。

写真・『心の詩〜扉のむこうに〜」(配給アイエヌジー)(C)「心の詩製作委員会」・F&T PRO