この記事をまとめると

■日本に入国する際の水際対策が大幅に緩和されそうで、自粛要請の撤廃にも期待したい

■街に活気が戻る一方、深夜タクシーが捕まらない状況が社会問題化するかもしれない

タクシー乗務員の減少は簡単に解決できない問題であり、そのほかにも課題が浮上しそうだ

水際対策の緩和で自粛要請の撤廃にも期待

 5月5日に海外歴訪をしている岸田首相が、訪問国のイギリスでの講演で、6月に日本以外のG7諸国並みに入国が円滑になるように、水際対策を大幅緩和すると表明した。

 G7諸国並みの円滑な入国といえば、たとえばアメリカならば、入国時には有効なワクチン接種証明書、有効な検査(陰性)証明書(出国便出発日から1日以内に検査)、宣誓書が必要となるものの、入国後の隔離措置はない。

 一方でアメリカから日本に入国する際には、有効なワクチン接種証明書、検査証明書(陰性証明書/出国前72時間以内)、誓約書、スマートフォンの携行及び必要なアプリの登録・利用、質問票が必要となり、ワクチンを3回接種していれば免除されるが、それ以外は一定の待機が必要となる。

 現状では、海外に出張などで出かけた人のほとんどが、「目的国での入国は必要な書類などを用意していればスムースなのだが、日本に帰ってきたときはかなり面倒」と語っている。検査証明書についても、日本政府が指定するフォーマットが特殊なもので、各国でこのフォーマットに対応した検査証明書を発行してもらえる検査機関は限定的となっている(そのため検査料も高め)。

 どこまで水際対策が緩和されるのか、詳細はまだ発表されていないが、コロナ禍前までとはいかないものの、緩和後はいま停止されている外国人観光客の入国が復活する可能性はほぼ間違いないだろう(段階的に緩和していくとの報道あり)。

 一方、お隣の韓国では、6月1日より一部の空港に到着する一部の外国人について、ビザなしでの入国が可能となる(ワクチン接種済みなど条件を満たす必要あり/日本人は対象外)。韓国国内では、新型コロナウイルスに関する規制が全面解除され、飲食店の時短営業なども撤廃された。

 撤廃後には韓国のニュースによると夜の街に人が戻ってきたのはいいのだが、深夜に帰宅する際にタクシーの稼働台数が少なく、大げさに言えば帰宅困難な状況が社会問題になっているようである。行政としては、地下鉄や路線バス運行時間の延長などで対処しようとしているのだが、勤務時間の延長など調整が難航しており、いますぐには実現しないとも報じている。

 タクシーの稼働台数減少の原因は、コロナ禍でタクシーの稼働台数が激減し、仕事が減ったことでタクシー乗務員から離職する人が相次ぎ、現状乗務員不足となっているのが影響しているとのことだ。

急激に街に活気が戻るとタクシーが足りなくなる

 日本も今年のゴールデンウイークは新型コロナウイルスに関する規制のない久しぶりの大型連休となり各地の観光地がにぎわった。筆者も久しぶりに都内で、少々グレードの高い飲食店で会食を行ったのだが、飲み物の追加を頼んでもなかなか従業員がやってこない状況が続き、どう見ても利用客は増えたが十分対応できる人数の従業員が確保できていない様子を垣間見た。

 日本でも韓国同様にタクシーや路線バスの乗務員は3年間のコロナ禍を経て離職する人が目立ち、コロナ禍前以上ともいわれる人手不足状況となっている。話を聞けば、ひどい時には月に数回程度タクシーに乗務できればマシだった時期もあったようで、そもそも高齢乗務員が目立っていたタクシー業界では、「コロナ禍を契機に」とか、新型コロナウイルスへの感染を危惧してなど、高齢ドライバーの離職が目立った。「1週間ぶりにステアリングを握ることもありましたが、そのときは感覚を戻すのに苦労しました」とは中高年タクシー乗務員。

 日本の場合は、いまだに多くの企業で社員の会食や企業接待を自粛する動きも目立っており、規制が撤廃されたとはいえ韓国ほど夜の街ににぎわいが戻っているとはいえない。そもそもニューノーマルの世の中となり、今後も夜の街に人が戻ってくることはないのではないかと語るタクシー乗務員も目立つ。それはタクシーや深夜だけの問題ではなく、「路線バスでいえば、いまはコロナ禍前に比べ、利用客は7割程度しか戻ってきていません」とは事情通。

 しかし、仮に6月から外国人観光客の入国を認め(当面は団体旅行のみとなるのでコントロールは効きやすいようだが)、このタイミングで企業の社員同士の会食や企業接待の自粛要請も撤廃されれば、明らかにいま以上に夜の街はにぎわうことになるだろう。ただ都内でいえば、鉄道は終電時間を繰り上げして運転しているし、路線バスは減便運行も目立っている。タクシーでは、東京隣接地域ではタクシーを呼ぼうとしても空車がいなくて配車を断られるケースが目立ってきている。

 利用客が戻ってきたからといっても、そう簡単にコロナ禍前のレベルに稼働状況を戻すことは難しい。今後、バブル経済以降で久しぶりとなる深夜のタクシー争奪戦が報道で取り上げられるような社会問題化すれば、経済再生が進んでいるひとつのトピックともなるが、利用者としては困ったことになりそうだ。

 ただ、そもそも働き手不足が顕著な日本では簡単に解決できない問題でもあり、根本的な公共交通機関の今後の在り方というものを考えていく必要も出てくるかもしれない。