Dado Ruvic / Reuters
Dado Ruvic / Reuters

TikTokの元モデレーター2人が、この人気ショート動画投稿プラットフォームおよび親会社Bytedaneを相手に集団訴訟化も視野に入れた訴訟を提起しました。2人は仕事として次々と投稿されてくる動画に目を通し、ガイドラインに違反する動画を取り締まる仕事に従事していましたが、その内容のあまりの酷さに精神的苦痛を受けたと主張しています。

訴えを起こしたひとりAshley Velez氏は、モデレーターの仕事を与えられた際「未成年の子どもたちを暴力から守る仕事」との説明を受けたものの、毎日何時間も延々と視聴させられたのは獣姦、屍姦、数多くの未成年の裸や小さな子どもへの暴力、そして自殺や殺人の瞬間までが大量に含まれていたと述べました。いわば放送コードなどなく、精神を破壊しに来るような最悪の衝撃映像オンパレードを毎日毎日見させられたわけです。また問題の動画には、直接的な映像はなくとも新型コロナのパンデミックを嘘だと主張したり、第二次大戦時ナチスによるユダヤ人などの大量虐殺などなかったと論ずる陰謀論の数々もモデレーターを悩ませる原因になりました。

もうひとりの原告であるReece Young氏もやはりモデレーターとして「自分たちがこのような不快なコンテンツをフィルタリングしなければ、他の誰かがこれを見なければならなくなる」との一心で、同様の仕事を担当していたとのこと。

しかし、TikTokはこうした大きな動画を見続けることで生じる不安やうつ状態、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対処するための、適切なメンタルヘルス治療プログラムを提供せず、モデレーターは精神的に危険な労働環境に晒され続けたと訴訟では主張されています。

2人はやむなく自費でカウンセリングを受けるなど自己防衛的な対処をしたものの、会社からはしばしば残業を強要され、酷いときは15分間の休憩を2度と昼食を摂る以外は休憩時間も与えられずに12時間もの連続労働を強いられたと述べました。そして、指定された以外の休憩を取った場合は減給されるとも言われていたとのこと。

また、2人は雇用条件として秘密保持契約書に署名することを強制され、家族にさえも仕事で見たものについて相談できませんでした。そして、TikTokのシステム上でどれだけ効率的に動画をモデレートできたかが報酬に直接結びつけられていたため、とにかく大量の動画を見るほかに選択肢はありませんでした。

訴訟では、動画モデレーターは、1本あたり数十秒の動画を複数同時に再生し、違反があるものを弾いていく作業を一定以上の正確性を保ってこなすよう求められたと述べています。そして違反と判定した動画は単にチェックを付けるだけでなく、違反の理由を示すタグを付けることが求められていました。しかしこのタグも当初は20種類程度だったのが次第に100以上に増えてしまったうえ、モデレーターにはその動画の背景で起こっていることの簡単な分析までが期待されるようになったとしています。

このような問題は他の動画投稿プラットフォームにも存在しています。たとえば2019年にはFacebookのモデレーターが動画を見続けさせられたことでパニック障害を引き起こした事例がありました。また2020年にもYouTubeのモデレーターがメンタルヘルスに不調を来たした集団訴訟が起こされています。

TIkTokでも、昨年12月に別のモデレーターが今回と同じような理由でBytedanceに訴訟を起こしていました。ただ、この訴訟は原告が後に取り下げたと伝えられています。この訴訟を担当していた弁護士Joseph Saveri氏は、今回の2人の訴訟にも携わっています。

Source:NPR

Coverage:The Verge