震災から11年 栃木県内 放射性物質の影響は今
東日本大震災から11年。特集です。
県内では福島第1原子力発電所の事故で飛散した放射性物質の影響が日常生活にも暗い影を落としました。
県北地域を中心に放射線量が高い土壌や落ち葉などを取り除く「除染」が行われましたよね
中でも高い濃度の放射性物質を含む「指定廃棄物」の処理については国が管理することになっていて、環境省が塩谷町の国有林を処分場の詳細調査候補地として選定しましたが、住民の理解は得られず話は進んでいません。そんな中、国は農家で一時保管されている牧草や稲わらなどの農業系の指定廃棄物を市や町ごとに集約する案を提案、那須塩原市は去年、県内で初めてこの提案を受け入れました。
那須塩原市で酪農業を営む68歳の男性です。青々とした牧草が育つこの場所には去年10月まで「指定廃棄物」およそ20トンが積まれていました。稲わらなどの「農業系廃棄物」は県北地域を中心に6つの市と町の農家123戸で2993トンを保管、このうち那須塩原市と那須町が全体の97%を占めています。
去年6月に集約先や処分方法について国の提案を県内で初めて受け入れた那須塩原市では10月から一時保管されていた53戸の農家から市のごみ処理施設への運び出し作業を行っていて今年の年末には完了する見込みです。
集められるおよそ1200トンのうち基準値の1キログラム当たり8千ベクレルを下回ったおよそ950トンは1月から一般廃棄物に混ぜて焼却処分を行われています。焼却灰は市の一般廃棄物最終処分場に埋め立てられ基準値を超えているものは施設で保管後、下回った段階で焼却されます。市によりますと今月1日現在67トンを焼却、処分は予定通りに進んでいます。
また、これまで毎月1回だった排ガスや灰の放射性物質の検査を毎週1回に増やしていてこれまでのところ基準値を超えたことはないということです。
(高瀬かずおさん)
10年は長かった途中は諦めた時期もあった。
那須塩原市では排ガスなどの検査情報を随時HPで公開するなど市民の不安の払しょくに努めていて、これまでのところ市民からの問い合わせなどはほとんどないといいます。このように処分が進み始めた市がある一方で、ほかの5つの市と町ではいまだに農家で保管されています。
保管している間は農地として使えませんからその補償問題もありますよね。
これについて、県が基準や算定根拠などの交渉を行っていますが、これまでのところ進んでいないのが現状です。一方、放射性物質は風評被害を含めて県内産の農畜産物にも大きな影響を与えました。事故直後、最も多いときは55の国と地域で輸入を規制、現在も14の国と地域では輸入停止や検査証明書の要求などの措置が続いています。輸出に力を入れる農業法人を取材しました。
【VTR】
小山市の農業法人、新日本農業です。1ヘクタールのハウスでイチゴを栽培しています。タイやマレーシアなど東南アジアのほか今年、アメリカ、ワシントンにスカイベリーを出荷するなど輸出に積極的に取り組んでいます。
しかし、ここまでの道のりは簡単なものではありませんでした。
(新日本農業 荒井聡さん)
東京の北と言うと、福島に近いと言われた。
県産の食品に対する輸入規制は2013年ごろから徐々に緩和が進みナシやイチゴなどの輸出ができるようになりました。2018年には日本からの輸出先1位の香港が規制を緩和。そして、先月21日、
輸入を停止していた輸出先4番目の台湾が規制を緩和、一部の品目を除き産地証明書と放射性物質検査証明書を添付することで輸出が可能となりました。
台湾の規制緩和は輸出の拡大に力を入れる栃木県にとっても大きな1歩です。
(県経済流通課)
食肉センターの施設認定やナシの園地登録で輸出再開に向けて積極的に取り組んでいきたい今後は中国への緩和に向けて取組む。
栃木のイチゴを日本一から世界一へ
現在、県内の食品の輸入を停止しているのは中国、台湾、韓国、東アジアの3つの国と地域です。このうち中国は依然として全ての食品と飼料の輸入停止が続いています。中国は輸入を停止している
栃木や福島、宮城など10の都県以外の食品には検査証明書の添付を求めていますが放射性物質の検査項目の合意がなされておらず事実上、輸入が認められていない状況です。
規制の緩和は日中関係も絡み複雑な様相ですが震災から11年が経過する中、関係者の努力で少しずつですが前進しています。