五輪カラーそれぞれにまつわる英語表現、覚えてみませんか?(写真:maruco / PIXTA)

いまだ世界で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、北京2022オリンピック冬季競技大会が無事に閉幕しました。スキージャンプにカーリング、スノーボードにフィギュアスケートやスピードスケートなど、見どころいっぱいの大会でしたね。

東京2020オリンピックと短い間隔で開催されるなか、オリンピックマークを目にする機会も多かったのではないでしょうか。皆さんは、あの5つの輪がオセアニア、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカの五大陸を意味しているというのはご存じでしたか。また、それぞれ異なる色が使われているのですが、どんな色だったか覚えていますか。

今回は色をテーマに、オリンピックマークで使用されている5つの色を含んだ英語の表現を紹介します。新型コロナウイルスの感染拡大が収束して、海外に行ったり、外国の方が来日したりするようになったら、これらの表現を使いこなして、楽しく英語を話したいですね。

5色の輪は、どれがどの大陸?

オンピックマークの輪は赤・黒・青・黄・緑の5色。実はどの色がどの大陸を表しているのかは決まっていないそうです。このオリンピックマークは「近代オリンピックの父」と呼ばれるピエール・ド・クーベルタンというフランス人が考案したそうです。この5色に地色の白を加えた6色で、世界の国旗のほとんどを描くことができるという理由で、これらの色が選ばれたのだとか。

ではさっそく、この5色を使った表現を見ていきましょう。オリンピックマークの色の並び順は、オリンピック憲章で決められているそうですね。左から青・黄・黒・緑・赤という並び、今回はこの順にならって、blue(青)から紹介します。blueを含む表現は数多くありますが、今回は4つ選んでみました。

out of the blue 突然に、不意に
have the blues 塞ぎこんでいる
once in a blue moon めったに〜しない
blue blood 高貴な血筋

out of the blueのthe blueは空のことを指していて、ニュアンスとしては「青天の霹靂」と同じです。青空だったのに、突如雷が響いたり稲妻が走ったりという状況です。何か予期していなかったことが突然に起きたときに使用します。日常会話でよく使われますので覚えておいてください。

have the bluesは「塞ぎこんでいる」「憂鬱である」という意味で、be blue(憂鬱である)と同じように使うことができます。blue自体に「憂鬱な」「陰気な」という意味があるのは、皆さんもご存じですよね。日本語でも「今日、めっちゃブルー」なんて言いますもんね。

そのほかに、blueには「わいせつな」「エロティックな」という意味もあるんですよ。日本語の「ピンク」みたいなイメージです。ご存じでしたか。日本語の感覚からだと、「青」がエロティックというのは、ちょっと新鮮ですよね。

once in a blue moonは直訳すると「青い月に一度」という意味ですが、このa blue moon(青い月)とはいったいなんなのでしょう。満月は通常月に1回、つまり年12回なのですが、まれに1年の間に13回満月が見られるときがあるんです。このエクストラの1回分の満月のことをa blue moonと呼びます。めったにない「青い月」に一度ということで、「ごくまれにしかない」という意味を表しているんですね。a blue moonの詳しい説明は以前筆者が書いた記事をご覧ください。

blue bloodの語源は、貴族など位の高い人々は日焼けしていないため、白い肌に血管が青く透けて見えたことだそうです。青い血が流れているように見えたのでしょうね。have blue blood in one’s veins、be born with blue blood (in one’s veins) などのように使いますが、blue bloodを名詞にしてHe is a blue blood (彼は、家柄のよい人である)のように言うこともできます。ちなみに、血管が青く見えるのって、目の錯覚なんですよね。

いくつか例文を載せておきますので、見てください。

Completely out of the blue, I got a call from my ex telling me she’s back in town.
(超突然に、元カノから町に戻ってきたって電話があってさ)

Hajime’s had the blues since Rika dumped him.
(ハジメのやつ、リカちゃんに振られてからずっと塞ぎこんでるんだよ)

My brother lives in Kushiro, so I only see him once in a blue moon.
(弟は釧路に住んでいるので、めったに会わないですね)

Believe it or not, Reiko was born with blue blood in her veins.
(信じられないかもしれないけど、レイコっていいとこの生まれなんだぜ)

「黄色い腹」ってどんな意味?


(写真:VSamarkina / PIXTA)

次はyellow(黄色)を見てみましょう。yellowを含む表現はあまり多くありません。

yellow journalism 扇情的ジャーナリズム

a yellow-belly 臆病者

yellow journalismは事実報道をすることよりも扇情的な記事で部数や視聴者を獲得しようとするようなジャーナリズムのこと。1890年代のニューヨークにあったワールド紙とジャーナル紙という大衆紙がこの語源なのだそう。この2紙はセンセーショナルな報道で有名だったのですが、黄色い服の少年が登場する「イエローキッド」という人気漫画を奪い合って同時に連載していたことから、大衆におもねる三流報道のことをyellow journalismと呼ぶようになったそうです。現在では、新聞に限らず、すべてのメディアによる扇情的な報道を指します。

yellow-bellyの語源ははっきりとはしていないようです。直訳すると「黄色い腹」という意味ですが、黄色い腹のトカゲやヘビが逃げ出すことからという説や体調が悪いときに肌が黄ばむことからという説などがあるようですが、どれも確証はないそうです。現在ではあまり使用されませんが、yellowという単語自体にも「臆病な」という意味がありますので、それも関連しているのかもしれないですね。

では、これらのフレーズを使った例文を見てください。

That headline will definitely capture people's attention, but wouldn't it be considered yellow journalism?
(その見出しは確かに目立ちますが、イエロージャーナリズムだと思われてしまいませんか)

I didn’t know Yoji was such a yellow-belly. He didn’t say a word at the meeting.
(ヨウジがあんな臆病野郎だと思わなかったよ。あいつ会議でひとこともしゃべらなかったんだぜ)

「目くそ鼻くそを笑う」を英語にすると?


(写真:KazuA / PIXTA)

3つ目はblack(黒)です。Blackは、すごくたくさんの表現があって迷いましたが、3つ選びました。

The pot calls the kettle black. 目くそ鼻くそを笑う
the black sheep  一族の恥さらし、集団内の厄介者
black out  失神する、真っ暗に

The pot calls the kettle black.は直訳すると「鍋がやかんのことを黒いと言う」です。鍋もやかんも黒く焦げているのに、鍋が自分のことを棚にあげて「やかんは(焦げて)黒い」と言っている状況を表しています。the pot calling the kettle black(やかんのことを黒いと言う鍋)という形でも使用されます。日本語の慣用句では「目くそ鼻くそを笑う」が近いでしょう。

the black sheepは家族や集団内の異端児を表していて、ネガティブな意味で使用されます。黒いヒツジの毛は染色することができないため、役に立たず商品価値が低いことから、このような比喩で使われるようになったそう。the black sheep of the familyと、familyとセットにして使うことが多いです。

black outは明かりを消して真っ暗にすることを表します。視界が一面黒くなるイメージですが、そこから派生して意識や記憶がなくなる場合にも使われるようになりました。pass out(気絶する)と同義ですが、black outのほうが瞬間的なニュアンスもあるようです。blackoutと1語で名詞にして、「停電」という意味で使用することもあります。

これらの例文がこちらです。

Are you blaming me for being lazy? Talk about the pot calling the kettle black!
(私が怠けてるのが悪いって?目くそ鼻くそを笑うって、このことね!)

My brother Goro is the black sheep of the family.
(弟のゴロウは、家族の恥さらしだよ)

I blacked out during an asthma attack.
(喘息の発作で失神してしまいました)

嫉妬の色はなぜ「緑」に?


(写真:MediaFOTO / PIXTA)

続いてgreen(緑)のフレーズを見ていきましょう。よく見聞きする表現を選んでみました。

[ give someone / get ] the green light ゴーサインを〔(人)に出す・もらう〕

green with envy ものすごくうらやましい

The grass is always greener on the other side.  隣の芝生はうちよりも青い

give someone the green light (ゴーサインを〔人〕に出す)やget the green light(ゴーサインをもらう)のthe green light(青信号)は、文字通り「青信号」が語源です。日本語では「青」と表現されますが、これは「青リンゴ」や「青汁」などと同様に「緑」を指しています。

英語ではthe green lightですから、the blue lightと言わないように注意しましょう。信号と言えば、道路にある交通信号機を思い浮かべますよね。でも、この表現の語源となったのは鉄道信号機のようです。

green with envyの語源は古代ギリシアにさかのぼります。古代ギリシアでは、人が嫉妬心を抱くと、体内の胆汁が過剰に分泌され、顔色が悪く(pale)なると信じられていたようです。このpaleを表す言葉がkhlōrós(χλωρός)という単語だったようで、この単語にpale(顔色が悪い)とgreen(緑)の両方の意味があったらしいのです。このことから、「嫉妬心を抱くと、顔色が緑になる」というつながりができたという説があります。

英語ではシェイクスピアのオセロに登場するイアーゴのセリフが有名です。オセロ将軍の嫉妬心について以下のように述べています。Beware, my lord, of jealousy; it is the green-eyed monster which doth mock the meat it feeds on.(ああ、将軍よ、嫉妬にはお気を付けなさいませ。それは緑色の目をした怪物で、餌食にする人の心をもてあそぶのです)。この他に、greenという単語には、日本語の「青二才」同様に「経験の足りない」という意味や、「緑」を守るという意味から「環境に優しい」「エコ」という意味もありますので覚えておきましょう。

The grass is always greener on the other side.のon the other side(反対側)は、on the other side of the fence(垣根の向こう側)が省略されたもので、「垣根の向こう」の隣人の庭を指しています。隣人の庭の芝生のほうが、自分の庭の芝生よりも青々としているように見えるさまを描写して、「他人のものはよく見える」という意味を表すことわざです。会話では、The grass is always greener.と省略して言うことも多いです。よく使われる表現ですので、覚えておくと便利ですよ。

では例文も見てください。

We got the green light to go ahead with the new project.
(あの新規プロジェクトを進める許可が下りたよ)

Melissa turned green with envy when she heard that her co-worker got promoted.
(同僚が昇進したことを聞いて、メリッサは非常に嫉妬した)

Megumi: Did you hear Junko’s moving to Vancouver?
Hanako: Yeah. Her husband’s transferring there, right?
Megumi: I wish I could live abroad too!
Hanako: Well, she wishes she could stay in Japan. The grass is always greener, you know?

(訳)
メグミ:ジュンコ、バンクーバーに引っ越すんだってね。
ハナコ:うん。ご主人の転勤でしょ?
メグミ:いいなぁ、私も海外に住みたい!
ハナコ:でも、ジュンコは日本のほうがいいってさ。隣の芝は青く見えるってやつだね。

血に染まった手?


(写真:Macrovector / PIXTA)

最後5つ目はred(赤)です。redを使った表現も数多くありますので、4つを厳選してみました。

catch someone red-handed (人)の悪事の現場を押さえる

cut the red tape お役所的な形式主義をやめる

roll out the red carpet for someone 特別待遇で(人)を迎える

paint the town red 繁華街に繰り出して飲み歩く

catch someone red-handedのred-handedは「手が赤く染まっている」という意味。起源をたどると15世紀のスコットランドだとのこと。殺人や密猟で手を血に染めている様子を描写した表現だったようです。つまり、手を血まみれにしている現場で捕まえるという意味で、そこから悪事全般について、「(人)を現行犯逮捕する」「(人)の悪事の現場を押さえる」という意味で使用されるようになりました。

cut the red tapeの語源については、いくつか異なる説があるようですが、共通しているのは「公文書を赤いひもでくくっていた」というところ。そこからred tapeが、「面倒で形式的なお役所の手続き」の代名詞となったようです。時代や場所については諸説あるのですが、おおむね16世紀のヨーロッパ、多くは英国での慣例が起源とされているようです。この形式的なお役所手続きを破るというところから、cut the red tapeという表現になったというわけです。

roll out the red carpet for someoneという表現のthe red carpet(赤いじゅうたん)ですが、その起源は紀元前458年に古代ギリシアで上演された、悲劇作家アイスキュロスの『アガメムノン』という作品までさかのぼるようです。

トロイア戦争でギリシア軍総大将を務めたミケーネ王アガメムノンの凱旋帰国に備えて、妻のクリタイムネストラが赤いじゅうたんを敷いたというシーンが始まりのようです。現代では、要人が飛行機から降りて歩くときや、ハリウッドのセレブリティが授賞式の会場で歩くときなどで見かける赤いじゅうたん。誰かを重要なゲストとしてお迎え、おもてなしをするときの象徴として使われているんです。

paint the town redの起源についても多くの説があり、どれが有力なのかは決めかねました。実際に町を赤ペンキで塗った話、花火で空が赤く染まったという話、町中血だらけにするぞと脅したという話など、何が「赤い」のかという点では、その起源に共通点がありませんでした。このフレーズの意味を考えれば当然ではありますが、共通しているのはどれも酒に酔ってのエピソードであるということ。「今日は飲みに行って盛り上がろうぜ!」みたいなノリのときに使う表現だと覚えておきましょう。

redを使ったフレーズの例文も見てみましょう。

Today at the library, there was a lady who got caught red-handed stealing toilet paper there.
(今日図書館で、トイレットペーパーを盗んでいるところを現行犯で捕まった女の人がいたのよ)

If you want more people to get vaccinated, you need to cut the red tape.
(もっと多くの人にワクチン接種を受けてほしいのであれば、形式的な手続きは廃止しないとダメですね)

When our son brought his girlfriend home for the first time, my wife and I rolled out the red carpet for her.
(息子が初めてガールフレンドを家に連れてきたとき、妻も私も彼女のことを手厚くもてなしたんですよ)

Hey, Yoshio. Do you want to go paint the town red tonight?
(ヨシオ、今夜はパーッと飲みに行って騒がない?)

色を使った英語表現、いかがでしたか。今回取り上げた5色には、このほかにもまだまだたくさんのフレーズがあります。また、他の色を使った表現もたくさんあります。オリンピックマークの5色だけを取り上げましたが、ほかの色についても調べてみるとおもしろいかもしれないですね。

オリンピックも終わってしまいましたので、当面の楽しみと言えば3月にサクラが咲いて、町をピンクに染めてくれるのを待つことくらいでしょうか。I can’t wait to go paint the town red!(思いっきり外で飲んで騒げるようになるのが待ち遠しい!)

(箱田 勝良 : 英会話イーオン 教務部 チーフトレーナー)