毎日LINEはくるのに、告白はされない。これって…?
お金持ちは、モテる。ゆえに、クセが強いのもまた事実である。
そして、極上のお金持ちは世襲が多く、一般家庭では考えられないことが“常識”となっている。
“御曹司”と呼ばれる彼らは、結果として、普通では考えられない価値観を持っているのだ。
これは、お金持ちの子息たちの、知られざる恋愛の本音に迫ったストーリー。
▶前回:イケメン御曹司とデート中に女がフリーズ。彼のLINEアイコンは“あの人”とのツーショットだった…
由利子(30)「彼は一体、何を求めているのだろうか」
最近の私の楽しみ。それは、韓流ドラマを流しながら電話をすること。
最近、日々の些細な出来事も笑えるようになったのは、彼のおかげだと思っている。
かなり親密な関係のはずなのに…。彼からの告白は、まだおあずけだ。
私は公認会計士として、ある大手監査法人に勤務している。学生時代に予備校へ通い、努力して資格を取った。
性分か職業ゆえか…どちらかはわからないが、生真面目な性格なのだ。
おそらく、普通の女性であれば、自分からお付き合いのきっかけを作ることができるだろう。
しかし、私は違う。勉強ばかりしていたからか、恋愛のやり方がわからないのだ。
仲の良い友人たちからも「由利子はとにかく真面目で、数字と結果がすべて。論理的でない思考が嫌いだよね」などと、よく言われる。
確かに、その通りなのかもしれない。
だから、明確なゴールが見えない恋愛に対して、モヤモヤしている自分がとにかく嫌なのだ。
なぜ、真面目な女が御曹司と出会ったのか?
そんな彼との出会いは、ナンパだった。
イマイチだったお食事会の帰りに、同期と飲みなおそうとコリドー街を歩いている途中、2人組の男に声をかけられたのだ。
「こんばんは!」
ナンパはいつもスルーするが、このときだけは私の好きな韓国俳優に似たイケメンだ…と本能が反応してしまったのだ。
声をかけてきた男の隣にいたのが、将吾だった。
将吾は弁護士をしていて、私の2つ年上の32歳。実家は不動産賃貸業を営んでおり、彼も実家の会社をたまに手伝っているという。
また、出身地はディズニーランドの近くで、小学校から東京の学校へ通っていたようだ。
将吾の話し方から、都心で遊んでいる商社マンより堅そうな雰囲気を感じていたので、その話を聞いて納得した。
ナンパされた後、4人で適当なお店で飲みながら将吾のことを知る。
外見でいえば、将吾ではなく友人の方がいい…と思っていた。だが、将吾の友人はどうやら彼女がいるようだった。
― 仕方ないか…。
この先の進展はないだろうと思ったが、とりあえずLINEだけ交換して解散した。すると早速、将吾がLINEをくれたのだ。
『由利子ちゃん、今日はありがとう』
こうして、将吾とのやりとりが始まった。
◆
『今日はランチ何食べた?』
『疲れるよね。仕事(笑)』
毎日の他愛ないやりとりが、とにかく楽しく心地よく、私は将吾からの連絡を待つようになっていた。
実は、私は4年ほど彼氏がいない。
だから、将吾と毎日LINEをするまで、誰かと日常的に連絡を取り合うことをくだらないとさえ思っていたのだ。
しかし、それは違った。
何をしてどう感じたかを伝えることが、こんなにも心温まるものなんて…と、私はすっかり将吾とのやりとりに安らぎを感じていた。
また、酔っ払った将吾が電話をかけてきてくれた日から週2回、私たちは電話もしていたのだ。
それなのに…将吾が直接会おうと言ってくれたのは、知り合ってからたったの1回だけ。
『今日、仕事終わるの何時?食事に行かない?』
偶然、私も早く上がれる日だったので、丸の内の『THE UPPER』で一緒に食事をした。
これまで旅行で行った場所や好きなファッションの話など、まるでカップルのように盛り上がり、さすがに今日こそ…と期待していた。
「また連絡するね!」
ところが、将吾はサッとお会計を済ますと私のためにタクシーを拾ったのだ。
― あれ…。もう解散するの?
帰宅後、私はモヤモヤした気持ちをかき消したくて、すぐにお風呂を沸かした。
去年の誕生日に先輩からもらったCHANELの入浴剤を入れ、お風呂のなかで将吾のことを考え込んでしまった。
私は賢いから、仕事や勉強のどんな難問でも、明確な答えが出る。それなのに…将吾のことは、まったくといっていいほど、答えが出なかった。
どれだけやりとりを続けていようが、彼が何をしたいのかわからない…。
そう思っていても、日常的に連絡を取り合う安心感を知ってしまった以上、その相手がいなくなるのは無理だと気がついたのだ。
私はこれからも、何がしたいのかわからない将吾と連絡を取り合う。
今度の発展に願いを込めて。
なぜ将吾は、彼女との発展を望まなかったのか…?
将吾(32)「自分から好意を伝えるなんて、できない」
由利子とは、俺の友達がナンパして出会った。
「なあ…将吾。そろそろ彼女くらいつくったら?」
今の俺は昔と比較にならないほど、恋愛に対して奥手だ。そんな俺を心配した友達が、俺のためにナンパをしてくれたのだ。
友達は、由利子たちを後ろから追いかけて声をかけた。彼女たちの後ろ姿は、他の女性たちよりもとても綺麗だったからだ。
正直なところ、後ろ姿だけなら由利子の連れの方が綺麗に見えた。
だから最初は、由利子の友達の髪の長い子の方がいいな…と、思っていたのだ。
ところが、振り返ってよく見ると、由利子のバランスの整った顔と知的な雰囲気に驚いてしまった。
そして俺は、由利子の外見に心をつかまれてしまったのだ。
ナンパ後は、4人で適当に空いている店に入り、終電まで談笑した。
由利子は、大手町にある監査法人で働いていることがわかり、見た目に表れている知的さは本物だ…と感心したのだ。
解散したあと、もう少し由利子と2人で話してみたい…と強く思ったので、ひとまずLINEをしてみることにした。
『由利子ちゃん、今日はありがとう』
『こちらこそありがとう。由利子でいいよ!』
お礼から始まり、日々の他愛もない話をLINEでやりとりし始めた。
ある日、俺は酔った勢いで電話をしてしまう。その日から、由利子との電話が日常になった。
― 由利子と話すと、落ち着くなあ…。この子なら、大丈夫かもしれない。
実は、俺は自分から恋愛に踏み出せないタイプだ。というのも、過去のひどい失恋を未だに引きずっているから。
「あのさ…将吾とは別れたいんだけど」
元カノは弁護士で、名古屋出身のお嬢様だった。愛らしくて知的でこの子がいれば何もいらない…とまで思ったほどだ。
彼女が望むことはなんでもした。欲しいものだって、行きたい場所だって、言うとおりになんでも叶えた。
なのに、あっさりとふられてしまった…。理由は、俺の性格だという。
「ごめん、将吾はなんでも私のいいなりすぎて、つまらない」
そして、元カノは俺と別れてすぐに一回り年上の経営者と結婚した。
◆
由利子なら大丈夫と思ったので、ナンパからしばらく経ったあと、2人きりで飲みに行こうと誘ってみる。
『仕事終わりにサクッと飲みに行かない?』
しかし、期待は裏切られた。
皮肉にも由利子に対し、自分からお付き合いを申し出るほどの熱量を持てないと確信してしまったのだ。
それは、由利子が旅行の話をしたときだった。
どうやら彼女は旅行が好きで、色々な場所へ行っているようだ。それなのに、パッとした、うーん…なんと言ったらいいのだろう。
いい旅館に泊まるとか、名店へ行くとか、何かしら得るものがある旅行をまったくしていないのだ。
1泊あたり3万円前後の宿に泊まり、名店を巡るわけでもない。
― くだらないお金の使い方してるんだな…。
俺は、平均1泊10万くらいの宿に泊まる。ホスピタリティーも、宿のデザインから得るインスピレーションも、3万の宿とは得るものが違う。
そう思った瞬間、今後、価値観を合わせるのは難しいと思ってしまったのだ。
それだけではない。由利子は、おそらく僕にもう惚れている。
それなのに、由利子から何もアクションを起こしてこないのだ。
俺は連絡を取り続けていても、これまでの経験上、自分から深い関係になることは望まない。
由利子から何かしらアクションがないと、俺は不安で堪らない。
今後について、俺からは期待など一切しないのだ。
Fin.
▶前回:イケメン御曹司とデート中に女がフリーズ。彼のLINEアイコンは“あの人”とのツーショットだった…