年下彼氏のワガママにうんざり!LINEで別れを告げると会社に来て…
女にとって、経験豊富な年上男性は魅力的に映る。
だが、その魅力ゆえこだわりの強いタイプが多く、女は年を重ねていくうちに気づくのだ。
― 頑張って彼に合わせるの、もうしんどい…。
年上ばかり選んできた女が、自然体でいられる相手は一体どんなタイプの男なのだろうか?
これは、アラサー独身女がこれまでの恋愛観をアップデートする物語。
◆これまでのあらすじ
開幕戦で初のスタメン出場をすることとなった颯。その試合に、自分だけが特別に招待されたと喜んでいた多佳子だが、そこには美人モデルrinaの姿も。そのことを彼に問いただすと…。
Vol.11 彼とはもう終わり…?
「多佳子さん、インスタで俺の知り合いのこと探ってたの?…それって、ちょっと引くんだけど」
電話口の颯は、あきれたような口調で痛いところを突いてきた。
私のほかに、rinaのことも試合に招待していた颯。
彼女は、明らかに颯のことを狙っている。だが、日ごろ男ばかりの環境でサッカーに明け暮れているからか、はたまた女心に疎いからか、彼はそのことに気がついていないようだ。
だから、私は余計にやるせない気持ちになって、チクチクと嫌な言い方で彼を責めてしまった。
「どういう意味?インスタ見るのって、そんなにいけないこと?それにまず、私の質問に答えてよね」
「そのままの意味だよ!ていうかさ、多佳子さんだって、男友達と仲良くしてるんだから、別にいいでしょ」
さらに颯は、こう吐き捨てた。
「…今日は、もう話したくない」
「そう、私も。じゃあね」
― 気に入らないことがあると、すぐに放り出すんだから。こういうの、もう何回目だろう。私たち、もういい大人なのに…。
彼のことを初めて“面倒くさい”と思ってしまった私は、今回の件は自分から折れないと決心した。
そして、沈黙を貫くこと2週間。
その間、1度だけ颯からの着信があったけれど、仕事中で出られなかった。
2月末にはJリーグ、3月末にはプロ野球が開幕する。スポーツ部の記者である私は地方への出張が増え、一気に忙しくなったのだ。
多忙な日々のおかげか、颯やrinaのことで頭を悩ませる時間もグッと少なくなった。
ちょうどそのころ、私のもとにあるLINEが届く。
颯との連絡を絶った多佳子。そこへ送られてきたLINEとは?
『ご無沙汰しています、多佳子さん』
LINEの送り主は、黒木さんだった。
― 黒木さんからの連絡って、颯くんのことだろうなあ。
その予感は、的中。私と颯の今の状況を、黒木さんに相談したのだろうか。
『多佳子さん、颯と…何かあったんですか?』
『うーん、ちょっとケンカをしてしまって。颯くん、何か言ってました?』
LINEを送ってから既読になるまで、丸1日がたった。
― どうして黒木さんから、返事がこないんだろう?
よくないことを伝えられるのではないかと、胸騒ぎがしたとき、黒木さんから返事が届いた。
『あいつ…最近、別の女の子とよく会っているみたいで』
立て続けに、もう1通。
『でも、こんなこと僕から多佳子さんに言うのもなって。だけど、このままにしておくのも…。余計なことを言って、すみません』
これには「やっぱりな」と思った。しかも、心のどこかで準備ができていたのか、想像していたよりも驚きも落ち込みもしなかった。
― こうなる気はしていたし…。はっきりわかって、むしろスッキリしたかも。
『黒木さん、言いにくかったですよね。お気遣いありがとうございます。でも、私たち、もうダメだと思います』
『そっか…、僕と美智子はいつでも話聞きますから!』
颯との出会いのきっかけとなった黒木さんは、私の同期の美智子と交際半年。2人は最近になって、結婚を前提に同棲している。
よくよく考えてみると、颯と私もこの2人と大差ない交際期間だ。
それなのに、恋人同士の関係性の深さが天と地ほど離れている気がする。颯がアスリートで、寮生活をしていてなかなか会えないことや、12歳も年下だということだけが理由ではないだろう。
― 黒木さんと美智子って、しっくりくるんだよね。このままうまくいくといいなあ。私たちみたいには…きっとならないよね。
◆
翌日。会社のデスクで取材原稿をまとめている私のもとへ、心配そうな顔をした美智子がやって来た。
「ちょっと、大丈夫なの?昨日、黒木くんから、多佳子の話を聞いてやってくれって言われたんだけど」
「あーうん、大丈夫!颯くんといろいろあって。でも、もう別れるって決めたから」
ランチがてら一部始終を美智子に話したことで、さらにスッキリした私は、仕事が終わると颯に電話をかけた。
が、しかし、2度の着信に彼が応じることはなかった。
おそらくわざとだろう…そう思っている自分に嫌気が差してしまう。
この状況に耐えきれなくなった私は、仕方がないと思いつつ『別れよう』と颯にLINEを送った。
すぐに既読になったが、返事はこない。私は仕事の疲れからか、スマホの充電を忘れたまま眠ってしまう。
そして翌朝。私は、予想外の事態に大きなため息を漏らすのだった。
電話とLINEにも応じない颯。2人はこのまま別れてしまうのか?
『多佳子さん、今、話せる?』
『別れるって、本気?』
『ねえ、返事してよ』
『もう1回会えない?』
・
・
・
『シカトするとか、マジであり得ないんだけど!』
『いいよ、別れるよ』
『もう返事もいらないから』
颯の焦りと怒りが感じられるLINEが、全部で10通も送られてきたのだ。
― こういう短気なところ、本当に無理…。しかも、夜中の2時半って、どっちがあり得ないのよ…。
私たちが連絡を取り合わなかったのは、2週間と少し。
その間、rinaと会ったり、親しくしたりしていたであろう颯。それなのに、私との別れを受け入れない自分勝手な彼に対して、すっかりあきれてしまった。
その上、冷却期間を経て、颯に何の感情も湧かなくなってしまっていることにも、気がついてしまったのだ。
私は、ためらうことなく彼とのトークルームを削除したのだった。
― 颯くんと私って、やっぱり無理があったんだよね。彼は、rinaの方がずっと似合ってる。
そう気持ちを切り替えると、いつもより女性らしいメイクとヘアスタイルにセットして身支度を整える。
とっておきの日に履くことにしているジミー チュウの「LOVE 100」を靴箱から出すと、気合を入れ直して出社した。
「おはよう、多佳子!今日、いつもと感じが違うんじゃない?」
そう言う美智子は、どこか幸せそうな雰囲気をまとっている。聞くと、昨日の夜、黒木さんからプロポーズされてOKしたらしい。
「えー美智子、おめでとうっ!やだ…私まですごく嬉しい…」
「ありがとう、多佳子。でさあ、急なんだけど、今日の夜、一樹くんも誘ってみんなでご飯食べない?」
早速、一樹に連絡をすると、20時までには私たちが働くテレビ局の前まで来てくれると言う。
颯に気を使って会っていなかった一樹とは、久しぶりの再会だ。一足先に仕事を終えた私は、浮かれた気持ちで局のエントランスを出る。
すると、ふいに誰かに呼び止められた。
「ねえ!」
「えっ?」
声のほうに視線を向けると、颯が立っていた。
「ちょっと、多佳子さんこっちに来て!」
初めて会った時と同じ鋭い目つきでこっちに近づいてくると、彼は私の腕をグイッとつかんだ。
― 怖い…!
そう思った瞬間「大丈夫っ!?」と、私たちの間に誰かが割り込んできた。
▶前回:「他の女も招待してたよね?」大切な試合で発覚した二股疑惑。女がアスリートの彼氏に不満を告げると…
▶NEXT:1月20日 木曜更新予定
職場まで押しかけて来た颯…。彼から守ってくれたのは、あの人だった