コロナ禍で男女の結婚への熱量はどう変わったのでしょう。婚活のプロ2人の対談(2回目)です(イラスト:よこてさとめ/PIXTA)

リモートワークの推進や家での滞在時間の長期化など、コロナ禍で仕事や家庭生活が大きく変わった今、ウィズコロナの婚活市場では何が起きているのか――。

東洋経済オンラインにて人気コラム「仲人はミタ」を連載し、仲人として活躍する鎌田れい氏と、『カップリング率80%超の仲人が教える 恋愛マッチング方程式』を刊行した仲人、高須美谷子氏が、この2年で様変わりした婚活市場の実態を明らかにする。今回はその後編をご紹介します(取材・文:遠山怜)。

(前編)「結婚したい!」コロナ禍婚活で見えた男女の行方

――内閣府男女共同参画局の調査によると、生涯未婚率が男女ともに上昇しています。婚活市場にも何か影響がありますか?

鎌田:少し前に草食系という言葉がはやりましたが、どちらかというと日本人は男女問わず、恋愛に積極的ではないという印象があって。ただ、そうはいってもふつうに恋愛できている男女もいるので、何となく「恋愛できない人」と「できる人」の二極化が進んでいるとは感じています。

恋愛できる人とできない人が二極化

高須:それは確かにありますね。

鎌田:昔も、草食系という言い方はしなかったにせよ、そういう男女がいたと思うんですね。それでも、結婚することはそれほど困難ではなかった。それはなぜかというと、20代で結婚することがふつうだったからです。結婚が人生のレールに組み込まれているので、その年ごろになると、自分で相手を見つけられない人たちには親戚や近所のおばちゃんとかが勝手に結婚相手を探してきて、紹介して……。

高須:その相手と結ばれる(笑)。


「人柄は大事」と高須氏(撮影:編集部)

鎌田:そうそう(笑)。

高須:昔の職場もそうでしたよね。「結婚相手がいないなら、いい人を紹介しようか」とか言ってくる上司がいたりして。まぁ、今はコンプライアンスが厳しいですから、そんなことが言える状況ではないですけど。

鎌田:そういうお節介を焼いてくれる人たちがいなくなったことが、草食系の人たちを結婚から遠のけてしまった。結局、自ら動くしかなくなったわけです。

――そう考えるとそうかもしれません。

鎌田:でも、実は独身の男女が増えたのは、それだけが理由ではないとも考えています。それは、草食系であろうがなかろうが、結婚しなくてもいいという状況ができてきたということで、その背景にはコンビニの普及があるのではないかと、ひそかに思っています。

高須:コンビニですか?

鎌田:24時間開いていて、レンチンですけどいつでも温かい食事が手に入る。結局、一人暮らしでも困らないんです。だから、「何としても誰か相手を見つけなくては」という危機感が生まれにくい。

高須:なるほど。

鎌田:もちろんコンビニは一例ですが、結果的に恋愛をしないまま今まで来てしまったけど、将来が不安だから結婚したいという人は、男女問わず、私の相談所にけっこういます。

高須:恋愛経験はないままにお見合いというバッターボックスに立つわけですから、無謀ですよね。今では結婚前に「デートレッスン」を受けたりと、練習の場を設けています。

――結婚相談所のようなところは、そういう人たちにとって最後の望みの場になっているのでしょうね。ところで、コロナ禍で経済不安があるなか、相手に望むのは年収だったり、堅実な仕事だったりするのでしょうか。それとも性格とか、人となりとかでしょうか。

高須:わたしの相談所では、高年収や堅い仕事の男性に必ずしも人気が集まっているとはいえないですね。平均的な年収であっても人柄のいい人であれば、割と早くに成婚されます。

年収の高さより家事や育児に積極的か

鎌田:そうなんですね。

高須:これはコロナ禍の傾向なのですが、年収の高さより家事や育児に積極的かどうかをといった生活感を重要視する女性が増えています。


「条件面から入る人が多い」と鎌田氏(撮影:編集部)

鎌田:うちはどちらかというと、違う感じかも。結婚相談所で知ることのできる相手の情報って、年齢や職業、収入、婚姻歴などの条件でしかなく、フィーリングから入る自由恋愛とは絶対的に違う。だから、どうしても条件面に目がいきます。私も婚活は先に条件から入るけれど、そこから恋愛をすればいいのよって言っています。

高須:とはいえ、お見合いのプロフィール欄に「家事・育児には積極的に参加したい」と自らアピールする男性が増えている時代です。私としては、年収だけではなく、仲人からの推薦コメントや本人からの一言プロフィールにも目を通してほしいとは思いますけどね。

鎌田:それはそうなんだけれど、やっぱり男性は年収が高いほうが人気ですね。年収が高く、かつ素直でこだわりが少ない人であれば、すぐに相談所からいなくなります(笑)。

――年収が高めで、キャリアを積んだ女性の人気はどうなのでしょう。

鎌田:うーん……。おそらくこれはコロナ禍にかかわらず最近の傾向なのかもしれませんが、自分の仕事にある程度のメドがついたときに、ではそろそろパートナーを見つけようかと考えて入会される女性は増えているかも。外資系におつとめの方だったり、士業の方だったりすると、年収は30代でも1000万円ぐらいあって、見た目的にも魅力的なんです。

高須:でも、そういう女性ほど婚活に手こずったりしますよね。

鎌田:本当にその通りで、実際、苦戦している方が多いです。

高須:同年代で、同じくらい年収のある男性を求めがちなので、結局、ミスマッチが起こってしまう。

鎌田:それで言うと興味深い数字があって、転職サービスの会社が2021年に出した報告なんですけど、年収1000万円超の30代は全体の0.9%、40代では2.9%。700万円台まで下げても、30代だと全体の3.7%、40代だと6.6%。これは既婚者も含めた数字なので、未婚で、かつ相手を探している男性になると、さらに数が減ってしまう。

「過去に付き合っていたか」は関係ない

高須:厳しいですよね。

鎌田:意外とそういう方って、さっきの恋愛経験ナシ男女とは違って、それなりに恋愛経験を積んでいるんです。でも、それがかえってネックになっていることもあって。少し前ですが、年下を希望される女性がいて、「過去にはちゃんと年下の男性とお付き合いしてきました」って言うんですよね。でも、結局いまは独身で、結婚相手を探している。つまりはそういうことなんです。

高須:それが現実、っていうことですね。

鎌田:これまでがんばってキャリアを積んで、そこそこ収入を得られるようになった女性って、つまりはそれなりに高いポジションにいるわけです。そういう女性の周りにいる社内や取引先の男性って、既婚未婚問わずそこそこ稼いでいて、かつコミュニケーション能力も長けている。その結果、そういう男性がふつうだと勘違いしてしまうんですよね。そうなると、先ほども言いましたけど、狭き門に挑まなくてはならない。

高須:厳しい言い方ですけど、男性は往々にして自分より年下の女性をお見合い相手に選ぶことが多く、それは年収の高い男性でも同じです。

鎌田:ですから、私はそういう女性には「できれば社内でお相手を見つけましょう」とお話ししています。

――なるほど! もう1つ、恋愛や結婚はしたいけど、「なかなか人を好きになれない」「ピンとくる人がいない」という人たちが増えている気がします。

高須:特にそういう女性が多いです。

鎌田:これは持論ですけど、「計算が得意」とか、「細かいことに気付ける」とか、持って生まれた能力ってあると思うんです。そう考えると、人を好きになりやすいかどうかも個人差があるような気がします。生まれつき恋愛や婚活に向いていない人もいるんじゃないでしょうか。


高須氏(左)と鎌田氏。両氏とも婚活でパートナーを見つけたという(撮影:編集部)

高須:さっき鎌田さんも話していましたけど、結婚相談所は結婚を目的として活動する場なので、多くの方が結婚してからお相手と恋愛を始めることになる。相談所で婚活してパートナーを見つけたお客さまからは、「一緒に暮らし始めて、やっぱりこの人でよかったと思った」とか、「生活してみたらしっくりいった」という声はよく聞きます。

――結婚相談所では、「好きな相手には選ばれない」と悩まれる方もいるのではないでしょうか。

鎌田:そうですね。「好きな相手に選ばれない」と気付いたときに、男性と女性とではその後の婚活の仕方が変わってきます。男性は"結婚"という結果に執着し出すので、結婚できる相手を選ぶようになる。若くて美人から自分を受け入れてくれそうな相手に、申し込みの幅を広げていきます。

高須:わかります。男性はそういうことができるんですね。でも、女性はゆずれない条件は変えたがらない人が多い。

鎌田:そうそう。女性はいつも気持ちが優先で、寄り添える人、好きになれる人を探そうとするんですよね。

高須:だから、そういう場合にはまず本人の意思を尊重し、あまり口を出さず、思うように活動してもらっています。

鎌田:言っても聞く耳を持ちませんからね。

高須:そうしているうちに、だんだんと「選ばれない」ことに気付いていく。そこからが私たち仲人の出番です。「自分が何を求めているのかではなく、相手が自分に何を求めているか、考えてみましょうか」とか、一緒に活動を進めていきます。

鎌田:婚活疲れっていう言葉がありますが、選ぼう、選ぼうとするほど疲れてしまう。ですので、そういう方たちには、「試しに、選んでくれた人と一度、付き合ってみたらどうかしら」と話しています。わたしも婚活で出会った男性と結婚しましたが、「次に選んでくれた人と結婚しよう」と思っていました。

高須:婚活を続けていると、真っ暗なトンネルを1人で歩き続けているような、心細い気持ちになることがあります。お断りされるたびに振り出しに戻るわけですからね。結婚に向かうまでに、何度も「必要とされていない」という烙印が押されていくような気がしてしまうんです。

鎌田:受験とか、就職活動とか、人生のなかにはいろいろながんばる場があるけれど、そこには何らかのゴールがある。でも、婚活には結婚するか、このまま1人でいるか決めない限り、終わりがない。それってやっぱりつらいと思います。でも、とにかく結婚を望むのであれば、動き続けることが大切です。

――婚活中の人や婚活を考えている人たちには、ぜひこの対談を読んでほしいと思いました。最後に一言ずつお願いします。


鎌田:結婚相談所を運営している人間が言うことではないのかもしれませんが、結婚に関してはもう個人の問題だと思っています。事実婚や、結婚をしない付き合いなど、結婚という形にとらわれないかたちも、いまは普通ですし、”お一人さま”で自由に生きるという選択肢もあります。とにかく、まわりに惑わされず、自分の好きな生き方をしていってほしいです。

高須:コロナ禍では、オンライン婚活など新しい出会い方も生まれました。人とのつながりの大切さを考えるなかで、やっぱり結婚という道を選びたい人もいます。そういう人たちには寄り添って、できる限り応援していけたらなと思います。