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舞台があれば、人の輝きは映える!

東京パラリンピックも本日が閉幕の日。しかし、この最終盤にかけても盛り上がりは増すばかりです。この週末も日本勢の奮闘はつづき、次々に朗報が飛び込んできています。東京五輪では苦しい戦いがつづいたバドミントンからは女子シングルスWH1クラスで里見紗李奈さんが金メダルを獲得したほか、女子シングルスSU5クラスでの鈴木亜弥子さんの銀など複数メダルを獲得。「東京2020」という全体で見れば明暗反転するようなバドミントンの大活躍となりました。

THEパラスポーツといった存在感を示すボッチャでは、男女共通チームの銅、混合ペアでの銀とチームの団結を示すようなメダル獲得がつづきました。今大会では杉村英孝さんが個人でも金を獲得していますが、この日も「さすが金メダリストだ」と唸るような神投球を連発。特に男女共通チーム3位決定戦での最後の1球は、至高の1球だったなと震えるばかりの思いでした。

この試合、日本は最終エンド3球を残して勝ちを確定させていました。すでにそのエンドで日本が得点を取って勝利することは確実であり、勝負は決していました。単に時間切れを待ってもいいですし、残ったボールが悪影響を及ばさないように足元に投げ捨ててもいい。要するに、何もしなくてもいい場面でした。しかし、日本は残された3球に万感の想いを込めました。

選手交代でこの試合には登場していなかったリオ団体銀メダルメンバー・藤井友里子さんを送り込むと、コート中央にあるクロスを目指して想いを込めた2投。そして最後の1球を杉村さんが握ると、クロスにビタ付けする神投球。スコアに影響を及ぼす投球ではありませんが(※スコアに影響を及ぼさないように投げている)、だからこそ凄味を覚える一投でした。

直前の準決勝で敗れ、目標の金メダルがなくなったあとでも心を切らさず、逆に銅メダルを確実としたあとも心を切らさず、誠実に投げ抜いたことがまざまざと伝わってくる一投。この姿勢は、パラスポーツに限らず、すべてのアスリート、そしてすべての何かに取り組む人が、こうあらねばと思うような姿でした。スコアに影響しない最後の1球を投げ終えたあとの杉村さんのガッツポーズと、「こりゃすげぇな」と呆けるような笑顔を見せる広瀬隆喜さん。心の芯にビタビタにきました!

↓これができる人は世のなかにそう多くはないはずです!

どんな状況でも心を切らさず、やり抜くこと!

そこに障がいも健常もない!



そして、この日を締めくくったのは車いすテニス男子シングルスの国枝慎吾さん。世界のクニエダは決勝でも強かった。ダブルスの3位決定戦においてペアとしては敗れたオランダのエフベリンクを相手に6-1、6-2のストレート勝ち。準々決勝ではフランスのウデ、準決勝ではイギリスのリードと、強豪との対戦がつづいた日程を最後まで「1セットも落とさずに」勝ち抜きました。

日本のクニエダが東京で金を獲る。この大会の招致が決まったときから、そうなるだろう、そうなってほしいと日本の多くの人が思っただろう結果のひとつですが、それを現実に成し遂げました。リオ大会では故障もあって金メダルを逃し、苦しい試合がつづく時期もありました。東京は厳しいのではないかと不安視する声もありました。それでも東京でしっかりと金に返り咲いた。これが「世界のクニエダ」だなと思います。



この日も国枝さんの車いすさばきは冴え渡ります。世界1位なのですから全面において強いのは当たり前ですが、そのなかでもスピードというのは圧倒的です。コートを広く素早く動き回り、2バウンドまでが許される車いすテニスでありながら1バウンドでテンポよく返していく国枝さんのテニス。展開を巧みに見極め、なるべく動かずに返していく場面が多いぶん、ここぞというときの「一歩目」の速さは際立ちます。

それに対抗するかのように、相手のエフベリンクもムッキムキの上体から車いすテニスとは思えない160キロ、170キロといったパワーサーブを繰り出してきますが、国枝さんがチカラ負けせずに打ち返すと、その高速の返球にエフベリンク自身が苦しんでいるようなところさえ垣間見えます。これが「やることなすこと」というヤツでしょうか。打つ手ナシの完敗だったと認めるほかないでしょう。

テニスと言えばジョコビッチやフェデラーのような超人がいて「こりゃ勝てんわ」と何度も唸らされてきたスポーツですが、クニエダもまたそういう存在なのだなと思います。速くて、上手くて、心も強い。真偽不明の噂話として、「日本からは何故世界的な選手が出ないのか」と問うた記者に対して、フェデラーが「何を言っている。日本にはシンゴ・クニエダがいるじゃないか」と答えたなんて話をよく聞きますが、それが本当の話でも何らおかしくはないなと思います。この種目におけるクニエダはそういう格の伝説的選手なのですから。

それだけに勝利の瞬間、国枝さんが見せた涙には昂ぶるものがありました。世界のクニエダが、この伝説的選手が、勝った瞬間に涙するほどの舞台がここにあったのだと。それを東京に迎えることができたのだと。改めて誇らしくなるような思いです。できてよかった、そう思います。日本の選手だからということだけではなく、世界を代表するパラアスリートのひとりが泣いてくれた。ありがたい限りです!

↓世界のクニエダ、涙の金メダル!


↓NHKによるハイライト動画はコチラです!


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「世界のクニエダ」の存在、そこにはこれから変えていくべき明るい未来というものが見えています。この大会には数多くの素晴らしいアスリートが登場しています。日本だけでなく世界からも。そのなかで、国枝さんを「世界の」にしているものは何だろうかと考えると、それはテニス界の仕組みだろうと思います。

テニス界では車いすテニスも「テニス」の一部分と認識し、世界最高峰の大会であるグランドスラムにおいても車いすテニス部門が実施されています。車いすではない男女シングルスが最大の注目を集めることは確かですが、同じ座組みのなかに車いすテニスもしっかりと組み込まれています。それにより国枝さんはグランドスラムをいくつ制したという表現で戦歴を語ることができますし、フェデラーからコメントが出たとしても何ら不思議はないだけの足跡を残してきています。何ならホームパーティーしていたって不思議はありません。

五輪・パラリンピックにおいても、五輪と同じ座組みのもとでパラリンピックが行なわれることで、五輪に比肩する注目が集まり、そのプレーや振る舞いが広く知られることになります。ひとりひとりのアスリートが積み上げていることは変わらず、その技能は変わらなかったとしても、座組みによって世間は変わっていきます。舞台さえあればその輝きが世界まで届く人が、世のなかにはたくさんいるのです。

それを日常においてやりつづけているテニスと、4年に一度のこの機会を待っている競技と、「世界の」を分ける差はそこにあるのだと思います。そういう意味では、今後世のなかが変わっていくなかで新しい座組みが生まれていけば、「世界の」はもっともっと増えるでしょう。「世界のスギムラ」「世界のキムラ」「世界のサトウ」といった形で、その名が轟くこともあるでしょう。面白くなることさえあれ、それで困ることは何もありません。いいことしかないのならやったほうがいい、そう思います。

とかく今大会はさまざまな意見がありました。「パラリンピックだけでも中止を」なんて意見も見ました。パラリンピックが始まりもしないうちに「今大会は失敗だった」と総括する輩もいました。IOCのバッハ会長がパラリンピックのために来日したら「来なくていいでしょ」なんて言われたりもしました。そういうところからなのかなと思います。完全に一緒のものではないけれど、座組みとしては一体のもの。違うところもあるけれど、重なるところもあるもの。「いろいろある」のひとつの形となれば、「世界の」という広がりが生まれるように思います。

「世界のクニエダ」はそうした未来の希望であり、予感であると思います。

僕らが抱く敬意は、その選手が車いすに乗っているからといって減ったりはしないのであると。

その人を知り、その人の活躍を取り込む座組みがあれば、ちゃんと「世界の」になるのだと。

それは、面白くなりこそすれ、それで困ることは何もない未来です!

↓国際テニス連盟公式アカウントのヘッダーも国枝さんに変わりました!

テニスの大きな大会の王者ですからね!

この日のヘッダーは、そりゃあクニエダでしょう!



「この日はクニエダだろうな」と思えるくらいになっているのがすごい!