童話×ミステリ『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』の斬新な世界
赤ずきんにシンデレラ、ヘンゼルとグレーテル。
子どもの頃に絵本で呼んだ童話のストーリーや登場人物たちの性格を覚えているだろうか?
赤ずきんはお使いをたのまれておばあさんの家に向かう途中にオオカミにあい、道草を食っている間にオオカミに先回りされ、おばあさんを食べられてしまう。母親と姉に虐げられていたシンデレラは、舞踏会をきっかけに王子様に見初められる。
■童話×ミステリ『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』の斬新な世界
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』(青柳碧人著、双葉社刊)は童話の世界の中でさまざまな事件が起こるミステリ短編集。そのまま生かされている童話の設定と、アリバイ工作などの緻密なトリックのミスマッチがおもしろい。
表題作では、赤ずきんが森の中の川で洗濯をするシンデレラに出会う。話を聞いてみると「継母と二人の姉に家事その他をすべて押しつけられ、自分はいつもボロボロの服を着て家の仕事をしている」という、あのおなじみの身の上である。
そして、その日の夜は「舞踏会」である。魔法使いの魔法で優雅なドレス姿に変えてもらったシンデレラと赤ずきんは「かぼちゃの馬車」でお城に向かう。
■シンデレラと赤ずきんが殺人事件に巻き込まれ…
ここまでは、「シンデレラ」の話に赤ずきんが加わっただけ。しかし、馬車の道中に事件が起こる。二人が乗る馬車に一人の男が飛び込んできたのである。
慌てて馬車を下りる二人だったが、男はすでに死んでいた。自分たちがひき殺してしまったのではと焦るシンデレラと赤ずきんだったが、ともかく舞踏会に向かうために、いったん死体は森の中に隠すことに。
しかし、舞踏会に参加したのもつかのま、すぐに死体が発見され、会は中断してしまう。死んだのは炭焼き職人のハンス。彼は王の覚えめでたい職人だったが、周囲の証言では「若い娘を炭焼き小屋に連れ込んで乱暴」し、「王子をも脅迫」していたという、ならず者であった。あちこちから恨みを買っている人物だったわけだ。
ただ、侍医によると、ハンスは馬車の前にあらわれた時にはすでに死んでいたものと思われた。何者かが、死んだハンスを、シンデレラと赤ずきんが乗る馬車の前に投げ込んだのである。
一体だれが、どうやってハンスの死を偽装しようとしたのか。赤ずきんが謎解きに挑むが、手がかりとなったのは、これまたあまりにも有名な童話的アイテムであった。
◇
本格的なミステリであるのと同時に、作者がなじみ深い童話のキャラクターに付与したより人間臭いキャラクターが物語を盛り上げる。
シンデレラや赤ずきんのほかにも「眠り姫」「マッチ売りの少女」「ヘンゼルとグレーテル」が各話に登場。彼らがどんな役割を演じ、どんな事件を起こすのか。けっして童心にはかえらせない作品である。
(新刊JP編集部/山田洋介)
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■童話×ミステリ『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』の斬新な世界
表題作では、赤ずきんが森の中の川で洗濯をするシンデレラに出会う。話を聞いてみると「継母と二人の姉に家事その他をすべて押しつけられ、自分はいつもボロボロの服を着て家の仕事をしている」という、あのおなじみの身の上である。
そして、その日の夜は「舞踏会」である。魔法使いの魔法で優雅なドレス姿に変えてもらったシンデレラと赤ずきんは「かぼちゃの馬車」でお城に向かう。
■シンデレラと赤ずきんが殺人事件に巻き込まれ…
ここまでは、「シンデレラ」の話に赤ずきんが加わっただけ。しかし、馬車の道中に事件が起こる。二人が乗る馬車に一人の男が飛び込んできたのである。
慌てて馬車を下りる二人だったが、男はすでに死んでいた。自分たちがひき殺してしまったのではと焦るシンデレラと赤ずきんだったが、ともかく舞踏会に向かうために、いったん死体は森の中に隠すことに。
しかし、舞踏会に参加したのもつかのま、すぐに死体が発見され、会は中断してしまう。死んだのは炭焼き職人のハンス。彼は王の覚えめでたい職人だったが、周囲の証言では「若い娘を炭焼き小屋に連れ込んで乱暴」し、「王子をも脅迫」していたという、ならず者であった。あちこちから恨みを買っている人物だったわけだ。
ただ、侍医によると、ハンスは馬車の前にあらわれた時にはすでに死んでいたものと思われた。何者かが、死んだハンスを、シンデレラと赤ずきんが乗る馬車の前に投げ込んだのである。
一体だれが、どうやってハンスの死を偽装しようとしたのか。赤ずきんが謎解きに挑むが、手がかりとなったのは、これまたあまりにも有名な童話的アイテムであった。
◇
本格的なミステリであるのと同時に、作者がなじみ深い童話のキャラクターに付与したより人間臭いキャラクターが物語を盛り上げる。
シンデレラや赤ずきんのほかにも「眠り姫」「マッチ売りの少女」「ヘンゼルとグレーテル」が各話に登場。彼らがどんな役割を演じ、どんな事件を起こすのか。けっして童心にはかえらせない作品である。
(新刊JP編集部/山田洋介)
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