コロナ禍はフリーランスを直撃。これからの働き方をどうするか。/猪口 真
働き方の自由が叫ばれるなか、多くのサラリーマンがいつかはやってみたいと思う働き方であり、ある意味、自由の到達点ともいえるのがフリーランスとしての働き方だ。しかし、このコロナ禍は、大きな組織に保護されないフリーランサーにとって厳しいものとなった。業種。業態でひとくくりにはできないが、どのような意識をもっているのだろうか。
3月25日に、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が「フリーランス白書2021」を公表した。
果たしてどのような結果だったのだろうか。
このコロナ禍による影響についてだが、今年度(2020年度)の事業収益が減収となると回答した割合は、55.0%で、そのうち前年度比4〜10割減収した人は32.7%に上った。
業種別にみると、やはり事務系の仕事の人は、テレワークや在宅での業務が可能となったのだろう。減ったと答えた人は3割程度、4割程度は変わらないと答えている。
イベント系や広告関連(クリエイティブ関連)は、減ったとする人の多さが目立つ。広告関連でも4割以上減少したとする人は3割近くに上る。セミナー・イベント関係では4割以上減少した人は半数近い。一見関係ないと思われる、コンサルティング、企画、金融保険関連にしても、増加したとする人よりも減少したという人のほうが多い。
驚くのは、IT関連の人たちだ。56%もの人が「仕事が減った」としているのだ。
もちろん、ITでも仕事の内容は様々で、企業はテレワークの推進やECの拡大、遠隔操作の充実といった仕事が増加しているのは間違いないが、全体予算は変わらず、もしくは減少しているため、その分のしわ寄せをくらっているエンジニアやプログラマーは非常に多いのではないか。
末端のITエンジニアの働き方は以前から問題にはなっていたが、このコロナでより深刻化している状況もありそうだ。
さらに、この調査では、オンラインでの仕事が可能な人とオフラインの仕事が中心の人との比較も行っている。当然、オフライン中心の職種の方が、減収したとする人が多いのだが、オンライン中心職種でも、約半数が減収としており、コロナ禍の厳しい状況がうかがえる。
これはオンラインによる仕事の生産性が上がらないことも大きな要因であることは間違いないだろう。多くのフリーランサーの仕事場は自宅だ。なかには夫婦2人とも自宅で作業という人も少なくない。数分の電話であれば、お互いかぶることは少ないだろうが、オンラインミーティングを同じスペースで、複数人数で行うのは無理がある。そこに子どものオンライン授業が重なれば、もはや不可能だ。
これは、小さなスペースしかない小規模事業者でも同じことだ。
オフィススペースの場所がどこであろうが、仕事が生まれたり、効率的に進めるには、やはり現場でのコミュニケーションやプレゼンテーションが必要なのだろう。
また、オンラインでの作業に切り替えるには、設備や環境も必要となる。会社員であれば設備や費用は会社持ちのところが多いが、フリーランサーは当然自己負担だ。
また、今のフリーランスとしての働き方において、何が問題なのかという問いに対しては、「収入がなかなか安定しない」が64.2%で最も多く、前年調査の55.1%から9.1%増えた。そのあとは、「会的信用を得るのが難しい」「仕事がなかなか見つからない」「経理などの庶務・バックオフィス作業が煩雑」「他人とのネットワークを広げる機会が少ない」「自分のスキルが向上しているのかわからない」と続く。
これらの多くは、特にコロナだからということではなく、自らフリーランスを選択した宿命だろう。
むしろ、「収入がなかなか安定しない」が64.2%しかいないことに驚く。収入は度外視しているということか。
フリーランスにとってもっとも問題となるのは、仕事の定期的で安定的な確保だ。会社組織のように、専門の営業職がいるわけでもなく、仕事量のバランスをとらなければならない。
また、これはもちろんケースによっても異なるが、大きな組織の中でのバリューチェーンのなかにきちんと入り込むのは本当に難しいことだ。エンドとなるクライアントと直で契約をとることはほとんどなく、通常、間に何社も入る。そうなると自分で仕事をコントロールすることなどまず不可能だ。そして、多くの場合、フリーランスに仕事を発注する背景には、コストカットがある。
当然、フリーランスになるときには、こうした現状の仕組みに毅然と立ち向かう決意を持つ人も多いのだが、多くの人は現状に飲み込まれてしまうのだろう。
よりよい仕事のためには、フリーランスの力を活用するのは、必要なことだ。組織人にはない発想や能力を持つ人も多い。自由回答のなかに、「発注スキルがない」と指摘する人もいたが、これは事実で、企業のフリーランスの活用の仕方については、再考する必要がありそうだ。
この調査では、「働き続けたいと思う年齢」についても聞いている。フリーランスという生き方を選んだのだから、「生涯現役」がもっとも多いと思ったのだが、実態は11.0%しかいなかった。もっとも多いのは、「60代後半(20.3%)」であった。これでは、サラリーマンと同じではないか。
昨今、副業的に個人としての働き方を望む人も多く、実際にやっている人も増加しているという。しかし、それではむしろ、コストカットとしてフリーランスを助長してしまうのではないか。
フリーランスとしての仕事の仕方も問われているのだろう。
アンケート結果は「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」発表の「フリーランス白書2021」の内容から引用