最期の望みを叶えるため競馬場にやってきた男性(画像は『Racing.com 2021年5月4日付Facebook「Dying man given final wish at the races」』のスクリーンショット)

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「余命僅かで、最期にたった1つだけ望みが叶うとしたら…」―オーストラリアに住む58歳の男性の最期の望みは「競馬場でレースを見ること」だった。男性の夢を叶えるべく奔走した救急隊員や騎手らの心温まるニュースを、『Racing Post』『Racing.com』などが伝えている。

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豪南オーストラリア州のモーフェットビル競馬場で今月1日、15日間にわたる競馬の祭典「アデレード・カーニバル」が開幕した。

この日行われた「G1-TABクラシック(芝1200m)」で優勝したのはクレイグ・ウィリアムズさん(Craig Williams、43)で、豪最高峰と言われる「メルボルンカップ」で優勝経験があり、2010年に京都競馬場で行われた天皇賞(春)で外国人初の優勝騎手になるなど世界の舞台でも活躍。40歳を超えてもオーストラリアのグランドスラムを達成するなど誰もが一目置く存在だ。

そんなスター騎手であるクレイグさんが、レース後のインタビューで次のように語り注目された。

「今日のレースは、ナイジェル・レイサム(Nigel Latham、58)にインスパイアされたからこそ成功したんだ。」

「ナイジェルは今日ここに来ている。ただ残念なことに、彼に残されているのは数日しかない。彼は救急隊員の人たちとここに来て、コースの200メートルラインのところにいるんだ。競馬を見ることが彼の最期の望みだったからだ。」

「だから僕は騎乗する馬にこう言ったんだ。『もし僕たちが最初にゴールしたら、勝利のゴーグルを彼にプレゼントするからね』とね。」

「そして僕の馬はよくやってくれた。今日の勝利はナイジェルにインスパイアされたんだ。ナイジェルはこの素晴らしいレースの日に、最期の望みを叶えにここにやって来た。彼のようにこの業界を支えてくれる人がいるということは、本当にありがたいよ。」

そして競馬ニュースサイト『Racing.com』が、競馬場でレースを見つめるナイジェルさんや家族と思われる女性、救急隊員の姿を捉えた動画とともにクレイグさんのインタビューをSNSに投稿したところ、「なんて温かい話なんだ」「クレイグ、君は最高だよ」「レースの中だけでなく、外でも熱い」「彼こそスポーツマン」「レジェンドだね」「彼はこの業界の第一人者。レースに強いだけでなく人間としても素晴らしい」といったコメントが多数あがった。

さらに動画では、馬に乗った騎手がストレッチャーに横たわるナイジェルさんに次々と挨拶にやってくる様子も捉えられており、「ナイジェルさんは夢が叶ったね」「これは本当に嬉しかっただろうね」「男性のことを知ったら、涙なしでは見られなかった」「騎手たちを誇りに思うよ」「騎手ら全員がナイジェルさんを思って走ったに違いない」といった声も寄せられた。

『Mirror』によると、ナイジェルさんは終末期ケアを受けるために救急車で病院からアデレードにある自宅へ向かう途中だったそうで、救急隊員が「競馬を見たい」というナイジェルさんの最期の望みを叶えるために競馬場に立ち寄ったそうだ。

2006年にイギリスからオーストラリアに移住したナイジェルさんは、このレースの2日後に自宅で息を引き取っており、遺灰は後日、英ウースターシャーのモルヴァン丘陵(Malvern Hills)に移されるという。

画像は『Racing.com 2021年5月4日付Facebook「Dying man given final wish at the races」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)