誰かに言葉をかけた後に「もしかしたら言い方が悪かったんじゃないか」と後悔したことはないだろうか。何気なく発したひと言。しかし、そのひと言に相手が傷ついてしまっているということは多々ある。

「あの言い方、ちょっと悪かったかも」と自分で気づけるならば、まだ改善の余地がある。問題は「よけいなひと言」が無意識に出てしまっている状態だ。そのひと言によって嫌われてしまったら、それは損でしかない。

「無意識に使っている言葉が、印象をつくっている」

そんなドキッとする言葉から始まるのが、コミュニケーションやメンタルヘルスに関連する研修・講演活動を行う大野萌子さんによる『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言いかえ図鑑』(サンマーク出版刊)だ。
この本、昨年8月に出版されて以来、版を重ねて今や20万部突破のベストセラーになっている。テレビをはじめとしたメディアでも取り上げられており、見たことがあるという人も少なくないだろう。

たとえば、どんなよけいなひと言が自分の印象を悪くしてしまっているのか。

●「ちょっといいですか?」

誰かに時間をもらいたいときに使ってしまうこの言葉だが、実は「ちょっと」という言葉が問題。どのくらい時間を取られるのかがあいまいなため、すれ違いを生む大きな原因になることが多いという。相手に時間を取ってもらいたい場合は「10分ほどお時間はありますか?」などと具体的に期限や期日を伝えよう。

×ちょっといいですか → ○10分ほどお時間ありますか?

●「やればできるじゃないか」

意外なところで実力を発揮した部下をほめるつもりで言った「やればできるじゃないか」。この言葉は「普段はたいしたことがないのに、切羽詰まるとやることはやるんだ。だったらいつも本気出してくれよ」というネガティブなニュアンスとして受け取られやすいのだとか。

ほめるときは素直にほめることが重要。「土壇場にあなたが頑張ってくれたおかげで助かったよ」と、感謝の気持ちをストレートに言おう。

×やればできるじゃないか → ○土壇場に強いね。おかげで助かったよ。

●「やる気あるの?」

注意をしたいときに、ついイライラしていると「やる気あるの?」「真面目にやってるの?」などと強い言葉を言ってしまう。しかし、これは相手を責めているのと同じこと。たとえ事実で相手に非があっても、言われた方は素直に受け止めにくく、やる気を引き出すことにもつながらない。

では、どう言いかえればいいのか。「最近、仕事のパフォーマンスが落ちているように見えるけど、何か困っているの?」と事例性にフォーカスするといいと大野さん。また、相手のせいで自分が困っているときは、先に事実を伝え、感情は後で伝える。この順序が鉄則だ。

×やる気あるの? → ○パフォーマンスが低いように見えるけど、何か困っている?

 ◇

本書では「挨拶・社交辞令」に始まり、「気遣い」「ほめ方」「自己主張」「謝罪の仕方」「子育て」など、ビジネスから日常生活に至るさまざまな場面での「ひと言」を取り上げ、ポジティブな印象につながる言いかえを提案する。

大野さんは本書の終わりに、「好意をもって接する相手からは好意的に思われるということ」を示す「好意の返報性」という言葉を取り上げる。自分が何気なく使うことで相手の反応が変わる。ならば、本書を参考にしながら、日々、言われて心地よい言葉を自分から使っていきたいものだ。

(金井元貴/新刊JP編集部)

【関連記事】

気が付かないうちに嫌われる? 会話で「損する人」と「好かれる人」の違いとは
孫正義、イチロー…結果を出し続ける人たちはどんな「言葉」を口にするのか