「少年革命家ゆたぼんチャンネル」より

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義務教育とは?

 YouTubeの公式チャンネル「少年革命家ゆたぼんチャンネル」の登録者数は4月16日現在、13万7000人と表示されている。

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 ゆたぼん(12)の挑発的な発言は、ネット上では広範な議論に発展することが珍しくなかった。

 特に物議を醸しているのは、「中学校にも登校しない」と宣言したことだ。ネットメディアの主な見出しをご紹介しよう。

◆「『中学校に行く気はありませーん!』 元小学生ユーチューバー・ゆたぼんが不登校を宣言」(JCASTニュース:4月9日)

◆「ひろゆき氏がYouTuber・ゆたぼんの中学校不登校宣言を一刀両断『アホの再生産になります』」(中日スポーツ:4月10日)

◆「茂木健一郎氏、ユーチューバー・ゆたぼんの“中学校不登校宣言”を支持『学校行かなくちゃ…は時代遅れ』」(スポニチアネックス:4月10日)

◆「ひろゆき氏VSゆたぼんパパ 『子供に罪はない』ネット上ではひろゆき氏に軍配か」(AERA dot:4月12日)

 毀誉褒貶の激しい少年YouTuberが、小学校と同じように中学校でも不登校を貫くと動画で宣言して炎上。「2ちゃんねる」の創始者である「ひろゆき」こと西村博之氏(44)が父親を批判し、父親と論争になったのだ。

「少年革命家ゆたぼんチャンネル」より

新聞報道で人気獲得

 ゆたぼんは2008年12月生まれ。当初は大阪府内の小学校に通っていたが、そこで不登校になったという。

 本人は動画などで「2017年に小学校で宿題をしていなかったことをきっかけに担任教師とトラブルになった」と説明している。

 YouTubeのチャンネルには「2017年3月26日に登録」とあり、18年に一家で沖縄県に移住した。

 19年5月に琉球新報(電子版)が配信した「『不登校は不幸じゃない』10歳のユーチューバー 沖縄から世界に発信『ハイサイまいど!』」の記事で注目を集めた。

 記事の影響は大きく、たちまち人気YouTuberの仲間入りを果たした。そして少年の知名度が増すほど、批判も増えた。特に、ゆたぼん本人というより、父親に対する疑問の声が少なくなかった。

 多くの異議を要約すれば、以下の3点に要約できるだろう。

◆ゆたぼんはどの程度、自分の意思で不登校を貫き、YouTuberとして活動を続けているのか?
◆親のコントロールはどの程度、存在するのか?
◆子供にそこまでの自由意志を認めていいのか?

父親への疑問

 少なくとも一時期、ゆたぼんの動画は相当な再生数を稼いでいた。人気YouTuberとして、相応の収入があったことは容易に想像できる。

 今年2月6日に公開した動画「ガッコウ行かずに月収8桁稼ぐ術」では、《自由に生きてお金も稼いで友達もいっぱいおる》と豪語する姿が配信された。

 ゆたぼんは自身を含め5人きょうだい。父親はブログで自らを《作家、心理カウンセラー。自由人》と紹介している。著書の関連サイトには《元暴走族》で中卒とある。

 関連サイトの引用を続ければ、父親は20回以上の転職を繰り返した後、《高等学校卒業程度認定試験(旧大検)に合格》。《2010年、本格的に心理学とカウンセリングを学び心理カウンセラーとなる》といった経歴の持ち主だという。

 ネット上では、父親がYouTuberのゆたぼんを“メシの種”にしているのではないかという疑念も根強い。

 冒頭でも触れたが、ここ最近は「不登校は不幸なのか」や、「子供の意思をどこまで尊重するか」といった本質的な議論は下火になっている。その一方で、単純に視聴者の反感を買い、炎上する動画が目立つ。

破いた卒業証書

 例えば、ゆたぼんは昨年、元セクシー女優などが結成したグループと共演した。12月には彼の誕生日を祝う動画がアップされたのだが、これに批判が殺到した。

 動画で女性たちは、ゆたぼんに避妊具をプレゼントしたのだ。一応、「いつか使うときが来るから、必ず取っといて」と“性教育”的な説明も行われた。

 だが、納得しない視聴者も相当数いたようだ。

 今年3月24日には「校長室でひとり卒業式してきた」を公開。冒頭で学校側から「髪の毛を染めているから卒業式に出られません」と連絡があったことを明かした。

 学校側は「卒業証書を校長室で個別に渡したい」と提案し、ゆたぼん側は受諾。一部始終を動画に撮影し、モザイクをかけて公開した。

 カメラに向かって《アンチたちが、お前は不登校やから卒業できひんって言ってたけど、卒業できましたけどぉ〜?》と挑発。《小学校なんて1日も行かんくても卒業できるねんな!》と改めて自説を述べた。

 翌25日には「卒業証書を破ってみた【プレゼント】」という動画を公開。いきなり冒頭で卒業証書を破ってしまう。

“アホの再生産”

 これに批判が殺到したことを受けたのか、31日には「卒業証書を破った件について」の動画を公開。《いろいろ言ってる奴がおるみたいなんで、そのことについて話していきたいと思います》と、やはり挑発的に反論を行った。

《まず貰ったものをどうするかって俺の自由やから。関係ないのにグチグチ言っている奴は意味分からん》と強い調子で批判。異論を唱えた視聴者を《めっちゃダサいし、めっちゃカッコ悪いやん!》と切り捨てた。

 そして4月7日、「中学校へ行くかについて」の動画を公開し、中学でも不登校を貫くと宣言した。

 動画では、中学校に通うことを《みんなと同じロボットになるだけ》と主張。校則を読み上げて《アホらしいルールばっかしやし》と批判、制服の強要に異議を唱え、私服も選択できるようにすべきとした。

 これにひろゆき氏が反応。ゆたぼん本人ではなく、父親に批判を行うツイートを投稿した。

父親は反論

 ひろゆき氏は、以下のように批判を行った。

《登校が嫌なら通信制の中学校で教育を受けることは可能。子供に教育を受けさせる義務を放棄してる親には罰則が必要だと思います。教育の機会を捨てるのを是とする考えを広めるのは社会的に良くないしアホの再生産になります。子供は被害者なので責めるべきではないです》

《子供をダシにした動画でしかお金稼ぎが出来ない無能が再生数のために子供から教育と学歴を取り上げること、動画を真に受けて間違えた道に進む子供が出てくる事が社会にとって良くないと思っています》

 これに父親が反論を行った。

《子どもが学校に行かないからと言って親は教育を受けさせる義務を放棄してるわけではない。それに通信制じゃなく家庭内で教育を受けされることはできるし、そもそも我が家はホームスクーリングだってずっと言ってるしな》

 この後、論争はホームスクーリングの内容などに及ぶのだが、それは割愛させていただこう。

ホームスクーリング

 では、不登校の問題に詳しい専門家は、この論争をどのように見ているのだろうか。「不登校新聞」の編集長、石井志昴氏は、この問題の専門家として知られる。YAHOO!ニュース個人に掲載されている略歴を引用させていただく。

《1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行なってきた》

 石井編集長は「そもそも、ゆたぼんくんが不登校になった理由が、ネット上などで曲解されたという経緯をご存知ない方もおられるでしょう」と指摘する。

「ゆたぼんくんは不登校の理由を『宿題をしたくないから小学校に行きたくない』と説明しました。『そんな理由で不登校を正当化するな』と批判を集めたのが“炎上”の原点だったはずですが、これは誤解だったのです。小学校低学年ぐらいですと、不登校の理由を『宿題が嫌だから』と説明する子供は珍しくありません。低年齢のため言語能力が未発達だったり、ストレスの原因を言語化することに精神的な苦痛を覚えたりするため、不登校の理由をしっかり言葉にすることができないのです。実際、ゆたぼんくんは後に、担任教師とトラブルがあったと明かしています」

 ホームスクーリングに関する批判も、「日本では欧米ほど普及していないことが背景にあると思います」と言う。

「台湾でデジタル担当大臣を務めるオードリー・タンさん(39)や、グラミー賞を受賞した歌手のビリー・アイリッシュさん(19)は、ホームスクーリングで教育を受けました。ある程度成長し、『勉強したい』と考えた人の場合、9年間の義務教育を1年で履修することが可能という報告もあります。家庭で義務教育の過程を学ぶことは、決して困難なことではないのです」

意思の尊重

 独学で勉強を続けることは可能でも、友人が必要なのではないかという意見も多い。ホームスクーリングより、フリースクールに通うべきだという考えだ。

「フリースクールの素晴らしいところもたくさんあります。とはいえ、集団生活に苦痛を感じている子供に無理やり通わせることは、学校への通学を強制することと同じです。友人と接しないと社会性が育たないという不安はよく耳にしますが、親と子供が会話し、夫婦の会話を子供が聞くことでも、充分にコミュニケーション能力は育つことが明らかになっています」(同・石井編集長)

 石井編集長は「不登校経験者のうち、85%の人が高校に進学したという興味深いデータもあります」と言う。

「小学校や中学校で不登校を経験しても、大半の人が高校に進学したという事実は、もっと知られていいと思います。2017年に完全施行された教育機会確保法は、不登校になった場合、学校への復帰を前提とせず、多様な学びの機会を与えることで支援するという基本方針を確認しました。ゆたぼんくんが『中学校には行きたくない』という意思を表明したことは、尊重されるべきでしょう」(同・石井編集長)

失敗する権利

 スポーツ指導の現場で、選手の「暴力被害の正当化」によって、体罰が連鎖していくという指摘がある。

 指導者に殴られた選手は「あそこで殴られたから、自分は上達することができた」と正当化し、自身が指導者になると選手を殴るという連鎖だ。

「同じことは教育の現場でも起きています。教師や生徒との人間関係に苦しんだり、一時期いじめのターゲットになったりして、『学校に行きたくない』と思った人は、相当な数に上るはずです。ところが、そうした人々が学校を卒業すると、『あの苦労があったから自分は成長した』と正当化してしまいます。そして不登校のまま学ぶ生徒を見ると、まるで自分を否定されたような気になってしまう。『自分だけ楽しようとしてずるい』と批判するのです。同じ傾向は、ゆたぼんくんを巡る議論でも見られると思います」(同・石井編集長)

 ゆたぼんの将来を心配する声についても、石井編集長は「子供には『失敗する権利』があるという考えがあります」と話す。

「自分の意思で選択した結果が間違っていたのなら、それも重要な学びになります。特に親はどうしても『我が子が間違わないようにしよう』と先回りする傾向がありますが、それは間違いを犯すという機会を奪っていることになるのです」

デイリー新潮取材班

2021年4月17日 掲載