装飾品として高い人気を誇るダイヤモンドは非常に硬い物質であり、研磨材やドリルビットの材料としても使われています。そんなダイヤモンドよりも硬い「ロンズデーライト(六方晶ダイヤモンド)」の存在が知られていましたが、ワシントン州立大学の研究チームが六方晶ダイヤモンドの形成に成功しました。

Phys. Rev. B 103, L100101 (2021) - Elastic moduli of hexagonal diamond and cubic diamond formed under shock compression

https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.103.L100101



Lab-made hexagonal diamonds stiffer than natural diamonds | WSU Insider | Washington State University

https://news.wsu.edu/2021/03/31/lab-made-hexagonal-diamonds-stiffer-natural-diamonds/

六方晶ダイヤモンドは、グラファイトが隕石の衝突などによって強い衝撃と熱を加えられた際に形成されます。通常のダイヤモンドが立方晶と呼ばれる構造をしているのに対し、六方晶ダイヤモンドは炭素原子が六角形のパターンで配置されているため、理論的には立方晶のダイヤモンドよりも硬いとされてきました。

しかし、天然の六方晶ダイヤモンドは、隕石の衝突によるクレータなどで発見されるため不純物が多く、純粋な硬さの測定は行われたことがありません。また、実験室で六方晶ダイヤモンドを形成する研究はこれまでも行われてきましたが、形成される六方晶ダイヤモンドが小さすぎるか、存在できる時間が短すぎたため、硬さの測定には至ることはありませんでした。

今回行われた研究では、10セント硬化サイズ(直径約18mm)の円盤状のグラファイトを時速約2万4100kmで壁と衝突させることで、隕石の衝撃による高エネルギーを再現。その結果、硬さを測定するのに十分な大きさの六方晶ダイヤモンドも形成に成功しました。



形成された六方晶ダイヤモンドは数十億分の1秒で崩壊してしまいますが、研究チームは物質が硬くなるほど音波が物質中を移動する速度が上がることを利用し、六方晶ダイヤモンド中の音波の移動速度をレーザー光線を用いて測定することで、六方晶ダイヤモンドの剛性を計測しました。

研究チームによると、六方晶ダイヤモンドは立方晶ダイヤモンドよりも高い剛性を示したとのこと。さらに研究チームは剛性をもとに推測される硬度から、「六方晶ダイヤモンドは立方晶ダイヤモンドよりも硬い可能性がある」と結論付けています。

研究チームの一員であり、ワシントン州立大学の衝撃物理学研究所所長を務めるヨゲンドラ・グプタ氏は、「ダイヤモンドは非常に硬い結晶であるだけでなく、美しい光学特性と高い熱伝導率を備えています。今回の研究で形成さた六方晶ダイヤモンドは、通常のダイヤモンドよりも大幅に高い剛性と硬度を持っています」と述べ、六方晶ダイヤモンドの硬さをアピールしています。

また、研究チームの一員であるトラヴィス・ヴォルツ氏は、「硬い物質は機械加工能力に優れるため、ダイヤモンドはドリルビットなどの工業製品に用いられてきました。六方晶ダイヤモンドは立方晶ダイヤモンドよりも硬い可能性が高いため、立方晶ダイヤモンドが用いられてきたあらゆる用途で、立方晶ダイヤモンドの代替手段として用いられる可能性があります」と語り、将来、六方晶ダイヤモンドが安定生産されることに期待を寄せています。

なお2020年には、立方晶ダイヤモンドよりも硬いとされる「ペンタダイヤモンド」の存在を筑波大学の研究チームが予言しています。

あのダイヤモンドよりもさらに硬い「ペンタダイヤモンド」の存在が予言される - GIGAZINE