不正受給の「指南役」に厳罰を、役人には猛省を/日沖 博道
最近書いた『給付金の不正受給とGo To Eatの「錬金術」の根は同じ』という記事では、スマホとSNSの普及のせいで具体的なやり方が簡単に拡散することで、昔だったらそうした浅ましい振る舞いに及ぶことはなかったであろう、ごく普通の若者が軽い気持ちで手を染めてしまうことを嘆いた。
もちろんこうしたバカなことをするのは若者だけではないが、若くもないのにそうした所業を嬉々として行う連中には、嘆いてあげる価値すらないと思う。
当たり前だが、持続化給付金の不正受給はれっきとした犯罪である。そして他人をかどわかしてその犯罪に手を染めさせて自らは手数料をぼったくる指南役連中は、それに輪を掛けた犯罪である。彼らこそ警察が真剣に追及すべき悪党である。ふん捕まえたら厳罰対処してもらいたい。
しかしそうした悪党や、直接の実行者である不正受給者、そしてGo Toイート「錬金術」の実施者たちのように分かりやすい悪徳連中の陰に隠れているが、実は非難されるべき輩が他にもいる。それはそうした「ただ乗り」やり放題の穴だらけ施策を世に出して涼しい顔をしている役人たちだ。
政府の制度設計者には、こうした救済策の穴に乗じた火事場泥棒的な行為が発生することは実はサプライズではなく、初めからある程度織り込み済であると考えられる。実際、「トリキの錬金術」問題が報道された直後、農水省の役人が「そういう制度設計になっているので」と問題視しなかったという事実がある。
穴だらけであることを十分認識しながら、それでも政治家と役所の上司から急かされて施策開始を急ぐあまり、「穴をふさぐ」手段の検討をしないまま見切り発車してしまったパターンだと考えられる(時間をかけた通常の『役所発』の制度では、不必要に多くの書類を提出させて、ズル利用を防止するものだ)。
なぜか。それは彼ら役人が税金を「自分のカネ」ではなく「他人のカネ」だと認識し、フリーライダーたちに無駄使いされることに「痛み」を感じないからだ。もし「自分のカネ」という感覚が少しでもあれば、こうした行為を許せるわけはなく、何としても制度の穴をふさごうと知恵を尽くすだろう(役人にとってそれはそんなに難しいことではない)。
我々中小企業のオーナー経営者は税金に対し特別な思いを持っている。サラリーマン経営者や役人、一般のサラリーマン・OLなどとはまったく違う。本来なら会社を強くするために、もしくは将来に備えるために、汗水たらして稼いだ利益は少しでも内部留保しておきたいものだ。日本ではその利益の半分を毎期ごっそりと召し上げられるのだから、実に痛い。まさに血税なのだ。
その血税をコロナ禍という災害の被害を受けた人たちの救済に使うのであれば、それは「活き金」になるので何とか我慢できる。しかし火事場泥棒的なフリーライダーたちに無駄使いされることにはどうしても我慢できない。
同様に、それを承知しておきながら放置しておく役人たちの無神経さも到底許すわけにはいかないものだ。この類のザル制度の続出に甘い顔をしていると、彼らお役人は未来永劫、涼しい顔で税金の無駄使いを続けるだろう。