増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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・大学授業の実際
大学生活のオンライン化は確かに気の毒だと思います。大学生活は授業だけにとどまらず、同級生や先輩後輩との交流など、さまざまな体験を得ることができる人生の貴重な機会です。しかし多くの大学ではオンライン化授業を恐らくこのまま年度いっぱい続けることでしょう。他の選択肢があるとも思えません。

それに対し、「オンライン授業なら通信教育と変わらない」「小中高が対面授業なのに、なぜ大学はやらない」「味気ないモニター越しの授業を一刻も早く止め、対面授業をすべき」という意見が圧倒的なように感じます。

あえて敵を作るようなことを書きますが、オンラインが悪で対面授業こそが正義なのでしょうか?

オンライン授業が万全でないのは当然ですし、単なる知識付与だけが大学授業の目的ではない以上、対面授業が望ましいことは言うまでもありません。しかしこのコロナ蔓延状況下で、たくさんの学生が一堂に会する大講義は現実的なのでしょうか?少人数制の授業やゼミなどなら問題ないのではという声もあります。

もう何が正しいやら、訳がわからない大学教育の現状です。

・論点整理
いろいろな価値観で、良かれと思っての意見であっても、このようなごちゃごちゃした視点のままでは何一つ生産的な議論や選択になりません。

オンライン授業が万能でないことは当然として、一方のコロナ対応としての選択肢に、オンライン以外があるのでしょうか?「対面授業が良い」は、大学という小中高と異なる学習環境や通学環境を考えれば、私は選択肢とは思いません。「コロナ対応が万全(に近い)対面授業をすべき」であれば選択肢となりますが、それってあるのでしょうか?

無い袖を振ろうとしても、それはただの精神論です。どんなにがんばっても竹やりでB29爆撃機と戦うことはできないのです。
またオンラインは不幸、対面は幸福となぜ言い切れるのでしょうか。

オンライン授業の問題点としては;
授業が一方的
課題ばかり出されて学生が疲弊(しかもフィードバックもない)
授業を受けるモチべーションが上がらない・孤独
パソコン操作やネット環境格差

など、挙げられていると思います。
あえて問いたいのは、それってオンライン授業の問題点なんですか?ということです。

・ダルい授業よりもチャット
私が大学生だった30年以上前の時代も、ダルい授業、くそつまらない昼寝授業、出席出すだけのため授業などがありました。
アルバイトばかりしていた私、しかも毎日夜勤バイトで仕事明けが午前8時という、そもそもまともに授業受ける気ないだろ的なダメ学生でしたので、とりあえず単位取れれば良い授業ばかり取っていたからかも知れませんが。(そういう時代だっただけ)

理系科目の実験や、美術・芸術系の実習など、オンラインでは実現不可能なものもあるでしょう。オンラインで全てが解決できないことは当然です。それでも日々授業を進めなければならない中、「対面こそすべて」で対面授業率を上げようという政策や意見には反対です。オンライン以外に感染防止手段が見つからない現実を受け止め、どうすればより効果的オンライン授業ができるかを考えるべきだと思います。

実際に授業中ディスカッションをすることは難しくなりました。いくつかのオンライン会議システムでは、オンラインでディスカッションすることも可能ですが、メジャーなシステムではまだ、リアルと同様な瞬時の自由自在グループ作りはできません。

私はチャットを活用しています。なかなか手を挙げて発言したりできない昨今の学生。しかしチャットは授業のオープニングからの誘導で、限りなく障壁が下げられます。結果としてリアル授業以上に発言や質問は増えています。助手など付けずに一人で回すため、すべてのチャットに応えるのは不可能ですが、もれたものについては後日フィードバックを行うことで、限りなくフォロー可能です。

小中高などでは不登校生徒の参加が見られたという話も聞きました。オンラインはベストではありませんが、その方法によってリアル対面授業では実現できない良さは確実にあります。どう学生を授業に引っ張り込むか、これまで以上に顧客対応能力は必要になるでしょう。しかしそれがこれまで顧みられていないとしか思えない、つまらなくてくだらない対面授業が放置されていることの方が、授業オンライン化よりはるかに問題であると感じています。

オンラインは地方と中央の距離も縮めました。これまでなら行けないような遠方の大学から、お試しで単発講義のご依頼をいただいたり、講演で呼んでいただく際もスケジュールさえあえば限りなくお応えしやすい環境になりました.オンラインだからこそのメリット、私は十二分に感じています。