昆虫食ブーム!「ゴキブリ」を食べてみたら川エビの味がした

マダガスカルゴキブリは「手乗りゴキブリ」と呼ばれ、ペットとしても親しまれている
昆虫食。長野や山梨では蜂の子を食べるし、幼いころに田んぼで捕らえたイナゴを、佃煮にして食べた記憶のある人も多いだろう。
最近では、食糧難を解決するスーパー食とも言われており、昆虫食の自販機が設置されたり、無印良品で「コオロギせんべい」がヒットしたり。ゲテモノ扱いと意識高い系、両者のあいだで、何だかよくわからないことになっている感も否めない。
嫌いなもの・怖いものには、噂がつきまとう。昭和後期から平成にかけて、こんな都市伝説があった。あるテレビ番組で、少年がゴキブリを生で食べた。その後、腹の中でゴキブリが繁殖を始め、少年は胃を食い破られ、腹痛に苦しみながら死んでしまったというものだ。
これを多くの人が信じ、恐怖した。ただでさえ嫌われ者のゴキブリである、噂は一気に広まった−−。ここで、この話が本当なのか、事例をみてみよう。
1971年から1982年まで日本テレビで放送されていた『TVジョッキー日曜大行進』。日曜の真っ昼間から生放送されていたこの番組は、PTAからガチ抗議が絶えない、すさまじい番組であった。令和の今なら、コンプライアンス違反で速攻打ち切り必至だ。
なかでも「奇人・変人」コーナーは、テレビに出たい素人が全力で無茶をしており、ミミズを蕎麦のように食べたり、蛇の風呂に入ったり、体に針を突き刺したりとやりたい放題だった。そして、1976年に同コーナーに出演した少年が、実際にゴキブリを食べている。
この少年は、1973年にも同じコーナーでゴキブリを唐揚げで食べており、3年でパワーアップして再登場、生食までいっちゃったのである。その後については『週刊実話』が追跡しており、東京の大学に入ったあとは、業界紙の記者になっているという。要するに、死んではいないのだ。
「胃酸に負けずに生きていられるほど、ゴキブリは強くないですから。『核戦争でも死なないほどの生命力』なんて言われることもありますが、放射線照射実験ではほかの虫より先に死んだという記録もあります(笑)」
そう語るのは、『スーパーフード!昆虫食最強ナビ』(タツミムック)著者のムシモアゼルギリコさん。さまざまな虫をたいらげてきた達人だ。死ぬことはないとはいえ、ゴキブリの生食は「絶対にしない」という。
「ゴキブリは調理して食べますが、食材として使うのは、清潔に飼育したもの。何をエサとして食べているかわからない不衛生なゴキブリは、食べません。普通に雑菌の塊ですから、お腹は壊しますよね」(ムシモアゼルさん)

バッタは多くの国で食され、大型種はプリプリした肉がエビのよう
昆虫食は、過去にも何度かブームが起きている。キュウリュウゴミムシダマシの幼虫は「九龍虫」といわれ、漢方では強精剤とされ、健康にいい虫とされていた。『虫を食べる文化史』(創森社・梅谷献二著)によると、1936年・1950年代・1965年前後の3回にわたって九龍虫食ブームが起きている。
当時は、エチオピア出身のマラソンランナーであるアベベが九龍虫を食べて金メダルを獲ったとか、某野球選手が首位打者になった、喜寿(77歳)の女性が妊娠した……などなど、ずいぶん盛り上がっていた様子。
「どれも、確認のしようがない噂なんですよね。盛り過ぎといいますか。良くも悪くも『虫を食べる』というのは規格外、神秘的なイメージもあったのでしょう。そういった歴史のひとつとして、解釈するのが妥当ではないでしょうか。
虫は多くの国で日常的に食べられてきた伝統的な食材ですし、食習慣がなくなった現代でも、きちんと調理すれば食べられます。こういう都市伝説がなくなり、日本でも当たり前のように虫を食べる未来が来るかもしれません」(ムシモアゼルさん)
というわけで、自称 “虫少年” だった本誌記者が、マダガスカルゴキブリ(食用)の実食に挑戦した! もぐ、もぐ、もぐ……ゴクン。
香りは少しクセのある感じで、殻はかなり硬め。エビの殻に近い。しっかり揚げたものや、多めの油でじっくり炒めたものは、殻ごと食べることも可能だそうだが、歯の隙間に挟まることもあるのでご注意を。茹でたものは外皮が固いので、内臓や肉をほじり出して食べるが、ほぐした蟹の身に近い見た目。
味わいは川エビがいちばん近いが、もっと香りが強く、歯ごたえがある。繊維質も感じるので、筋肉が強靭なのだろう。肉の量自体は少ない。
内臓は生臭さも感じるが、香味野菜などを使って調理すれば気にならないレベルにはなるだろう。内臓や肉だけ取り出して、混ぜてオムレツなどにしてしまえば、違和感なく食べられそうだ。
好き好んで食べるほど美味しくはない……が、ほかに食べるものがなければ、ためらわずに食せるレベル。見た目への生理的な嫌悪感さえ克服できれば、食材としては問題ない。
都市伝説は、あくまでも噂でしかない。ひとまず、「ゴキブリを食べても死ぬことはない」ということを、本誌記者が身をもって検証いたしました。
