タイやインドネシアでは圧倒的にトヨタ比率が高い

 日本では日産セドリックタクシーが生産終了となり、トヨタ・クラウンセダン及びクラウンコンフォートの生産も終了し、タクシー専用車としてはトヨタのJPNタクシーが後継車種として登場している。そして、タクシー車両の規格緩和もあり、東京都内で見れば、JPNタクシーがメインで、トヨタ・シエンタ、日産NV200、日産ノート、トヨタ・カムリなど多様な車両がタクシーとして活躍している。

 筆者が訪れた世界の主要都市でも、MPV(多目的車)を中心にタクシー車両の多様化が進んでいるケースが多いので、ここでは都市別でタクシー事情を見ていくことにする。

1)中国(北京、上海、広州)

 かつては、上海大衆(大衆はVW・フォルクスワーゲンの意味)のサンタナが多くの都市ではメイン車種としてタクシーでは活躍していた。その後ヒュンダイのソナタ系(起亜ブランド兄弟車含むDセグメントセダン)や、エラントラ(Cセグメントセダン)が幅を利かすようになってきた。

 筆者が中国を訪れ初めたころ(2005年あたり)でも中国車のタクシーも存在したが、当時の中国車では耐久性にかなり問題があり、ズタボロ状態で走っていたのは、乗客として乗っていても明らかであった。その後品質向上もあり、中国車は増えてきたがしばらくヒュンダイメインとなっていった。

 上海市は万博開催のタイミングで上海大衆のトゥーラン(MPV)が導入され、その後も新規導入や入れ換えが行われているようで、いまも多く走っている。

 そして中国でBEV(純電気自動車)が急速に普及してくると、タクシーでもBEVが増えることになり、ラインアップの豊富な中国車がタクシーでも急速に増えてきた。北京市はその筆頭となり、地元北京汽車のフリート販売専用車となるBEVセダン“EV快換版”という車両が北京のような華北だけでなく、華南地区の広州市あたりでも目立ってきている。

 このモデルは二次電池の脱着が可能となり、バッテリー本体のみで充電を行う、バッテリー交換タイプのBEVとなっている。車型としてはセダンがメインなのだが、広州市内あたりでは地元広州汽車のBEVとなるMPVタイプのタクシーも走っており(セダンも多く走っていた)、上海汽車のステーションワゴンタイプのBEVも走っていた。セダンが圧倒的に多いなか、タクシー車両の多様化も目立ち始めている。

2)バンコク(タイ)

 カローラフリークの筆者としては、世界の主要都市でも愛してやまないのがバンコク。タクシー車両が“ほぼすべて”といってもいいぐらいカローラとなっている。一般仕様よりも装備をやや削ったりした、“Limo”というタクシー(営業車)向けグレードを用意しているぐらいである。

 バンコク市内ではHEVやPHEVを多く見かけるようになり、カローラ自体もラインアップの中心はハイブリッドとなるが、タクシー向けはガソリンエンジンとなっている。タクシーとして使われていることからも、筆者個人としては日本のクラウンのような存在がカローラなのかなあと考えている。ただ他人数乗車可能な中型MPVのトヨタ・イノーバクリスタのタクシーなどもあり、けっして“カローラのみ”という状況でもない。

 また近年では、中国BYD汽車のBEVとなるタクシー専用車e6がチラホラとバンコク市内を走るようになっており、本格参入のタイミングを見計らっているように見えてならない。

3)ジャカルタ(インドネシア)

 ジャカルタのタクシー車両といえば、トヨタ・ヴィオスが多いと言いたいところだが、見た目はコンパクトセダンのヴィオスなのだが、タクシー向け車両には“Limo”という別車名が与えられている。長いことヴィオスだらけだったのだが、ホンダが新興国向けMPVとなる“モビリオ”をタクシー向けとして販売するようになった。

 ただ、トヨタのようにタクシー車両向けに別車名を与えなかったことが災いし、“タクシーには乗りたくない”と、一般向け販売が落ち込んだという話も聞いている。このタイミングでインドネシアでもライドシェアが普及するようになった。

 インドネシアではもともと一般ユーザーの間でMPVが好まれることもあり、ライドシェアでもMPVが多く使われ、荷物の多い空港へ向かう外国人旅行客などの間で積載容量が多いことがウケたこともあるのか、タクシー車両でもトヨタが自社のMPV“アヴァンザ”ベースの“トランスムーバー”というタクシー車両を登場させている。最新トピックでは、中国BYD汽車がBEVタクシー専用車となるe6を最大手のタクシー事業者に納めている。

アメリカでは車両は多様化しているが基本はハイブリッドだ

4)ホーチミン(ベトナム)

 地元では旧地名となる“サイゴン”が愛称のようによく使われているのがホーチミン。この都市でのタクシー車両のメインは、トヨタのイノーバという中型MPVとなる。

 最大手の“ヴィナサン”というタクシー会社の車両はシートカバーが全面にかけられ、運転士も制服を着て親切な対応をしてくれ、その様子は日本並みかそれ以上であった。ほかの事業者でもイノーバばかりであった。イノーバは東南アジアでは企業の社用車などでもひんぱんに使われている。

5)台北(台湾)

 筆者が十数年ぶりに台北を訪れた数年前、タクシー車両といえばトヨタ・ウィッシュばかりであった。一般ドライバーの間でもウィッシュが好まれて乗られており、台湾は“世界でもっともウィッシュを愛する地域”とまで言われていた。その後すぐに台湾でのKD(ノックダウン)生産が終了すると、タクシー車両も急速に多様化が進んだ。

 そのなかでウィッシュの後継モデルといってもいいほど存在感を見せたのがシエンタ。台湾だけでなく、タイやインドネシアでも大ヒットしている様子を目の当たりにしているが、タクシーとしてシエンタを見かけるのは台北が初めてであった。ほかにも日産シルフィやホンダ・ヴェゼルなど、とにかく多種多様となっているのが、いまの台北のタクシーの特徴である。

6)ニューヨーク(アメリカ)

 かつてのニューヨークのイエローキャブといえば、チェッカーブランドの専用車があったが、その後は“パトカーのおさがり”ともされている、アメリカンブランドのフルサイズセダンとなっていた。

 さらにそののち、フルサイズセダンが事実上消滅すると、トヨタ・プリウスとなり、いまではタクシー組合の“推奨車種”から選ぶことになる。ラインアップのメインはハイブリッドとなり、圧倒的にカムリハイブリッドが走っている。

 そのほかにはトヨタRAV4 ハイブリッドや日産アルティマハイブリッドなども目立っている(アメリカンブランドも推奨車種には入っているが、多くは日系モデルとなっている)。ハイブリッド以外では日産NV、トヨタ・シエナ(ミニバン)なども走っている。プリウスではプリウスV(日本名α)が圧倒的に多い。一時期日産のNVで一本化するという話がまとまったが、フォードが強力なロビー活動を行った結果ともされているが、それがひっくり返される形となり、いまに至っている。

 ニューヨークでタクシーとして使われたハイブリッド車(おもにプリウスやカムリ)が、全米各地でタクシーとして“再利用”されるというパターンも多いようで、ロサンゼルスなど沿岸都市だけでなく、内陸の主要都市でもハイブリッドタクシーが目立ってきている。

 ちなみにシカゴではカムリタクシーが圧倒的に多くなっている。ロサンゼルスでは3代目プリウスのタクシーがメインで活躍する。ロサンゼルスで聞いた限りは、プリウスに対して「タクシーで使っているから嫌だ」という意見がある一方で、「タクシーで使われるほど耐久性があるので好感が持てる」とする意見があり分かれているようだ。

 フルサイズセダンはV8エンジンを搭載していることもあり、ガソリン代がかなりかかっていたが、ハイブリッド車になると単純に排気量も半分以下になることもあり、飛躍的に燃料代がセーブできるようになったとドライバーから聞いたことがある。