こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

今回は、ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)をご紹介します。

最強のツッパリ・コンビが繰り広げる青春ストーリー

転校を機に“ツッパリ”デビューをした三橋貴志(賀来賢人)と伊藤真司(伊藤健太郎)。2人の息はピッタリ! (c)NTV

2018年10月期に放送された『今日から俺は!!』が、2020年7月17日に劇場版が公開されることを記念して、同日に『映画公開記念!! 今日から俺は!! スペシャル』(日本テレビ系 午後9:00)を地上波でもオンエアします。

原作は、1988年から1997年までの約10年間、『増刊少年サンデー』から『週刊少年サンデー』(ともに小学館)で連載され、累計4000万部を超える大ヒットを記録した、西森博之さんの代表作でもある同名漫画。卑怯でずる賢い金髪パーマの主人公・三橋貴志(賀来賢人)と、生真面目で正義感の強いトンガリ頭の伊藤真司(伊藤健太郎)という、最強のツッパリ・コンビが巻き起こす、青春ヤンキーコメディです。

ドラマで繰り広げられる、80年代前半、昭和の千葉を舞台にした学園ライフは、なんとも賑やか。“ツッパリ(不良)”という言葉自体になじみのない現代のティーンエージャーも、劇中の高校生たちがいきいきと過ごす様子を見れば見るほど、夢中になってしまうほど。

そもそも古いことは新しく、新しいものは古くなるという流行において、80年代に青春時代を送っている世代には懐かしく、そうではない世代にはとても新鮮に映る『今日から俺は!!』の世界。ドラマ主題歌は、80年代にツッパリ・ロックンロールバンドとして人気のあった横浜銀蝿の弟分としてデビューした、嶋大輔の82年のヒット曲「男の勲章」。この曲をドラマキャストが“今日俺バンド”としてカバーし、ドラマのオープニングタイトルバックとして流れ、おおいに盛り上がっているパフォーマンスも話題となりました。

80年代といえば、何年か前から、世間は“バブル”なものに対して再び注目を集めていた気がします。お笑い芸人の平野ノラさんが、派手なメイクに肩パッド入りのボディコンスーツを着て、ロングソバージュヘアーをなびかせ、超デカイ携帯電話(当時は最新の「ショルダーホン」)を手に、「しもしも〜」と話すネタが大ウケ。

2017年のYouTube国内トップトレンド動画1位になったのは、大阪府立登美丘高校ダンス部による「バブリーダンスPV」で、高校生たちがボディコンスーツを着て踊っていたのは、85年に発売された荻野目洋子さんのダンサブルな曲「ダンシング・ヒーロー」などのバブリー時代の曲です。この時代の曲はアッパーで、気分をアゲてくれるものが多いのは、やはり日本全体がバブルでウキウキだったからかもしれません。

世間ではすっかり“ウェルカム80年代”というムードがあるなかで、同ドラマが2018年に放送され、劇中では三橋と仲のいい赤坂理子役を演じる清野菜名さん、伊藤の彼女・早川京子役を演じる橋本環奈さんは、80年代頭に大流行した松田聖子さんがもととなった髪型“聖子ちゃんカット”をしていて新たな魅力を見せています。

2020年のいまもその空気感はそのままなので、今回の『今日から俺は!!』のスペシャルドラマや映画のお知らせに、心踊る視聴者もいたのではないでしょうか。そしてこのドラマを成功に導いているのは、なんといっても、脚本と演出を担当しているコメディー作品のヒットメーカー・福田雄一さんの存在です。

初々しいカップルの伊藤と早川京子(橋本環奈)。女番長であることを隠す環奈ちゃんの二面性も見どころ! (c)NTV 

“福田組”の若い世代の顔となりそうな賀来賢人、常連のムロツヨシの濃さ

“福田組”の顔といえる、ムロツヨシさんはじめ、シソンヌの高校教師役も楽しい。 (c)NTV

『今日から俺は!!』の脚本と演出を手がけているのは、ヒットメーカーの福田雄一さん。学生時代に旗揚げした劇団「ブラボーカンパニー」の座長として全作品の構成・演出を担当しながらも、放送作家として数多くの好視聴率番組を手がけ、ドラマや映画の脚本や監督など、幅広く活躍しているのはみなさんもご存知ですよね。

映画『銀魂』シリーズ(2017、18年公開)やドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ(11、12、16年 テレビ東京系)など、ヒットを飛ばす福田さんの作品に出演することの多い役者を“福田組”と呼ぶことも。『今日から俺は!!』の主演を務める賀来賢人さんは、舞台『スマートモテリーマン講座』(11年)やミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』(17年)、ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(17年 日本テレビ系)など、多くの作品でタッグを組みました。

そんな “福田組”といえる賀来さんが、コメディー俳優として開花したと評判になったのは、福田さんが監督・脚本を務めた映画『斉木楠雄のΨ難』(17年)への出演。それらの実績があいまって、『今日から俺は!!』の主演への道が揺るぎないものになっていったのかもしれません。

“福田組”の若い世代が賀来さんだとすると、大人の世代の顔であり常連といえば、ムロツヨシさん。同ドラマでは、まるで見た目が金◯先生!? にソックリな、三橋と伊藤のクラスの担任・椋木先生役で出演しています。お調子者の椋木先生ですが、そのコミカルな演技に爆笑。他にも、お笑い芸人のシソンヌのふたりが高校教師役で出演していたりと、職員室なのになんだか常に楽屋のように、うっすら笑いのエッセンスがちりばめられている気がします。

とはいえ、コメディータッチなシーンばかりではありません。三橋と伊藤が対立するヤンキーに立ち向かっていくシーンでのバトルアクションは、息をのむばかりの迫力。時に頭から血を流し、打ちのめされるシーンなどは、見ていられなくなるリアルさがあります。また、三橋と仲のいい理子役の清野菜名さんのアクションシーンでのキレはすばらしく(同局で今年1月期に放送されたドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』でも見事なキレを披露していました!)、伊藤の彼女・京子役の橋本環奈さんの女番長ぶり、そして伊藤の前での“ぶりっ子”演技も見どころだといえるでしょう。

『今日から俺は!!』では、賀来さんと伊藤さんのツッパリ・コンビをはじめとするキャストのみなさんが、きっと福田さんがされる無茶振りにも、真摯に応えながらパワー全開。各キャラクターがめちゃくちゃ濃いんですが、だからこその旨味たっぷりの美味しさが味わえます。原作の面白さはそのままに、福田さんが絶妙な味付けをして、賀来さんたち役者のみなさんが魅せています。

7月17日に放送されるスペシャルドラマでは、いつも三橋にやられている紅高番長・今井勝俊(仲野太賀)が、目前に迫った誕生日を女子と過ごしたいと毎日憧れています。そんななか、今井は、憎き三橋といい感じの理子を目にし、激しいジェラシーに襲われるのでした。あるとき、路上のあやしい物売り(阿佐ヶ谷姉妹 渡辺江里子)に気になることを言われる今井。数日後、サテンを訪れた三橋の前には、美人女子大生・奈美(新川優愛)や詩織(桜井日奈子)たちに囲まれる、モテモテ店員・今井の姿が。しかし、その先は意外過ぎる展開が……! 

もうこの先がどうなるのか、気になって仕方ありませんよね!
そして同日には劇場版が全国で公開され、7月12日からは2018年のテレビシリーズ全10話の再放送も(詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください)。この夏、またもや80年代のツッパリたちの青春に、時を忘れて楽しませてもらえそうです。

突然モテモテになる今井勝俊(仲野太賀)に憤る三橋貴志(賀来賢人)。果たして真実は一体!? (c)NTV

『今日から俺は!!』https://www.ntv.co.jp/kyoukaraoreha/
写真提供/日本テレビ