頻繁に見かける警告の看板

 郊外をドライブしていた夫婦があるカーブを通過したとき事件が起きた。

 妻「ちょっとアナタ、なんでいまのカーブで減速しないの!」

 夫「えっ、普通に曲がれたけど」

 妻「いま『スピード落せ』って看板があったのに」

 夫「法定速度は守っていたよ」

 夫・妻「●×△◆……」

 じつはけっこう頻繁に見かける『スピード落せ』の看板。この看板を見たドライバーは、一体どれだけスピードを落とせばいいのだろうか? 法定速度以内ならOK? 徐行程度まで? 20%ダウン??? 基準がないので何とも言えない。

 むかし、1970年代後半から80年代初頭の少年漫画の広告に「武道の通信教育」というのがあった。写真入りのテキストを見ながら、カセットテープの号令に合わせて、突いたり蹴ったりする練習をするのだが、その号令の途中で「もっと腰を落として」という指導が入るらしい。「もっと腰を落として」といわれても、どれだけ落とせばいいのやら? という笑い話があったが、この『スピード落せ』の看板もそれに似ている!? でも非常に気になったので、警視庁交通相談コーナーに訊いてみた。

事故が多い場所などに設置されている法定外表示

「『スピード落せ』の看板ですね。あれはスピードが出やすいところや、速度の出し過ぎによる事故が多い箇所などに設置されている法定外表示です。つまり注意喚起が目的で、『40km/h規制のところを20km/hで走りなさい』とかそういう意味ではなく、スピードを控えめにするようお願いするようなニュアンスです。
本当に速度規制が必要なら、その区間の制限速度そのものを引き下げますし、徐行が必要なら明確に『徐行』の道路標識を表示するので、『スピード落せ』の看板があったからといって、徐行までする必要はありません。
したがって、法定速度内であれば『スピード落せ』の看板の箇所で減速しなかったからといって取り締まるようなこともありません。
ただ、見通しが悪かったり、知らず知らずに速度が出やすい場所だったりすることが多いので、一応スピードメーターを確認していただき、対向車や歩行者などに気をつけて通過してもらえればと思います」

 とのことだった。ちなみに「スピード落せ」の『落せ』だが、学校で習う送り仮名は『落とせ』だったはず! しかし、辞書を引いてみると『おと・す【落(と)す】』とあり、カッコ内の送り仮名は省くことができるとされている。つまり一応間違いではなく、例外的にOKな範囲らしい。「危い!」「(登坂車線)終り」なども同様で、漢字を記号的に用いる場合の例外に当たるらしい。

 というわけで「スピード落せ」の看板を見かけたら、必ずしも減速する必要はないが、スピードメーターを確認したうえで、一層気を引き締めて通過することを心がけよう。