次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第35回は「サブスクグルメ」。

さまざまな種類のクラフトビールがサブスクで楽しめる「BEER TO GO」。お洒落なカップも特徴


○「サブスクグルメ」って何?

サブスク=サブスクリプションとは、簡単に言えば「定額制」のこと。一定期間に対し利用料金を支払うことで、企業や店舗からのサービスが受けられるというものだ。身近なものでいえば新聞や雑誌の定期購読、ジムの月額利用など、サービス自体は今に始まったものではないが、近年は動画配信、音楽配信、車、ファッションなど、より幅広い商品に対して定額制が取り入れられている。

「サブスクグルメ」もその一つで、店に毎月一定の料金を支払えば、期間中は食事や飲み物を無料で提供するという飲食店が増えている。一日一回、一品のみなど制限を設けている場合がほとんどだが、通常料金を利用の度に支払うよりもお得な料金で利用できるとあって、店の常連客や近隣の企業に勤めるビジネスパーソンなど利用機会が多い客を中心に、利用が広がっているようだ。

○サブスクグルメはどこで食べられる?

特定の飲食店だけでなく、アプリを使ってエリアの中から好きな店や料理を選べるのが、イジゲンが開発・運営するプラットフォーム「always LUNCH(オールウェイズランチ)」。月額7980円(税別)の利用料金を支払って会員登録すれば、提携店舗のランチメニューを1日1品食べることができる。東京(渋谷/新宿)、京都(烏丸/西院・大宮)、大阪(淀屋橋/梅田/心斎橋)など、6都道府県14エリアで計397店舗が提携しており(2020年4月時点)、順次拡大中とのこと。月額料金を支払えばどのエリアでも利用できるため、出張の際なども便利だ。

提携店舗の中から好きな料理を選べるサブスクサービス「always LUNCH」(画面はイメージ)


主な登録者は20代後半〜40代のビジネスパーソン。オフィス街の飲食店で食事をする際、1回のランチに1000円以上かかることも珍しくないことを考えれば、7980円という月額料金のお得感は強い。また、その日の気分で好きな店のランチメニューを選べるので、飽きがこないのもポイントだ。メニューのジャンルはエリアにもよっても異なるが、定食、カレー、中華、麺類などが多いという。

イジゲンPR・広報の佐藤裕子さんは「利用者様からは『いろんなお店のランチをオトクに食べられて楽しい』『行きつけの店ができた』、提携店舗様からは『新規客やリピーターが増えた』という声が届いています」と話す。双方にとってメリットが大きく、今後さらなる拡大が期待できそうだ。

※新型コロナウイルス対策として、サービス一時停止中(4月8日〜5月31日)6月1日に再開予定(ただし状況を見ながら決定)

○「サブスクグルメ」を利用してみた

東京メトロ銀座駅直結のGinza Sony Park地下4階にあるクラフトビール&デリスタンド「BEER TO GO(ビアトゥーゴー)」でサブスクサービスを利用してみた。同店が2019年6月から提供しているサービス「CLUB BTG」では、月額2496円(税込)を支払うと、平日限定でクラフトビール各種のレギュラーサイズ(通常500円〜・税込/250ml)が1日1杯無料になる。

銀座の「BEER TO GO」。キッチンにあるタップでクラフトビールが注がれる


IPA、ペールエール、各地の醸造所でつくられたさまざまなタイプのクラフトビールを最大17種類ラインナップ。WEB上(スマホ・PC・タブレットなど)で会員登録(住所や氏名などの個人情報、料金を引き落とすクレジットカードの情報などを登録)を行えば、その日から利用が可能だ。スマホでWEB会員証の画面を見せ、メニューの中からビールを1杯選んでオーダー。スタッフがタップを操作してクラフトビールを注ぎ、コーヒーのような蓋つきのプラカップで提供してくれる。

注文したのは同店を運営するキリンビールのクラフトビールブランド「スプリングバレーブルワリー」の代表的なフレーバー「496(ヨンキューロク)」。飲み口を開けると爽やかなホップの香りがふわりと立ち上る。クセがないので飲みやすく、後味はビール特有の苦みが抑えられたすっきりとした味わいだ。もちろん、この1杯は月額料金に含まれるため、「CLUB BTG」会員なら無料だ。

ビールは「496」(写真右)、「JAZZBERRY」(同右)をオーダー。会員なら「フードデリ」(同手前)や「フレーバーポテト」(同奥)もお得に!


ほろ酔い気分になってきたところで、今度は通常料金の500円を支払って「JAZZBERRY(ジャズベリー)」(レギュラーサイズ)を追加でオーダー。ラズベリー果汁の甘みと酸味がバランス良く効いたフルーツビールで、香りとコクが深い。魚介類との相性が特に良いそうだ。さらに「CLUB BTG」会員なら、フードメニューの「フレーバーポテト」(通常600円税込)と「フードデリ」(通常各400円税込)が、それぞれ300円(税込)という会員価格で食べられるのもうれしいポイントだ。

「CLUB BTG」のサービスについて、「昨今さまざまな企業で“働き方改革”が推進されている中で、仕事終わりの有意義な時間を過ごす選択肢のひとつとして、新たな飲み方・シーンを提供したいと考えました」と話すのは、キリンホールディングスコーポレートコミュニケーション部の菅原光湖さん。さまざまな個性を持つクラフトビールを選ぶ楽しさをもっと多くの人に知ってほしいと、定額料金でいろいろなビールが選べるサブスクプランを開始したという。

評判は上々で、会員がクラフトビールをあまり飲んだことがない友人や同僚を連れて来たり、月額料金内のビールだけでなく一緒にフードメニューをオーダーしたり、来店回数が多い会員からスタッフにビールに関する質問などのコミュニケーションが生まれたりと、さまざまな相乗効果が生まれているそう。当初のねらい通り“クラフトビールを飲む楽しさ”も同時に提供できているようだ。

※新型コロナウイルス対策として、新規会員登録一時休止中(4月1日時点。既存会員の更新は可能)。状況を見て再開予定

※同対策として、Ginza Sony Parkのスケジュールに沿って営業予定。随時公式サイトに掲載

お得に楽しめるサブスクグルメは、店の常連客にとって嬉しいのはもちろん、新規で利用する人にとっても新たな店や料理との出会いのきっかけになるかもしれない。昨今の情勢では外食に行く機会も制限されつつあり、残念ながらサービスを一時的に休止せざるを得ない店もあるが、状況が落ち着いた際はぜひサブスクサービスを利用してお得に「行きつけの店」を増やしてみては。