先の見えない不安な状況が続く今だからこそ、大切なものを見失わないよう周囲との関係性を見直す時期かもしれません(写真:Fast&Slow/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

新型コロナウィルスの影響を受けて、仕事の制限を受けたり、外出の自粛をしたり、不自由な生活を強いられてストレスを感じていらっしゃる方も多いかと思います。このストレスには、段階があります。

惨事ストレスの観点からみると、3月下旬の現在は、第3段階にあたり、今までの心身の疲れが蓄積し、日常回復までの道のりに焦りや不安を感じる時期に突入しています。

じわじわと襲ってくる心のダメージ

もう少し詳しく説明しますと、問題が起き始めた時期、必死になって日用品を買い求めたり、子どものために無理して仕事を休んだり、緊急事態なので仕方がないと理不尽なこと(急な仕事のキャンセルなど)も受け入れられる時期が、第1段階にあたります。


この連載の記事一覧はこちら

この時期は、感情よりも身体が反射的に動き、不満やストレスを感じるよりも、何とかしなければという使命感のようなものが気持ちの多くを占め、これを乗り切ればなんとかなるという強い気持ちが原動力になります。

そして、次に来るのが、第2段階で、この時期は連帯が生まれ始めます。必死になって行動したり、不自由さを体験した人たちが、日常生活や仕事の問題と向き合いながらも強い連帯感で結ばれ、お互いに助け合おうとするつながりを意識する段階です。

身近な者同士が助け合ったり、情報を共有し、何とかしようという動きを通じて連帯感を高めていきます。給食のパンが余って困っています、という情報が流れるとみんながパンを買いに行くというようなことがあちらこちらで始まる時期です。

しかしそれが続くと、次に来るのが、第3段階です。もちろん個々の状況や現場によって一概には言えませんが、現状は、この段階にあると思います。

この時期は、第2の災害と呼ばれる事態が起きやすいといえます。「いつまで自粛したらよいのか」「いつになったら気兼ねなく出かけられるのか」「元の生活に戻れるのか」と先が見えないからこそ、個々それぞれが自分の状況や受けたダメージの大きさに気づき、今まで表面化しにくかった心の問題が徐々に表れてきます。

それに伴い、協力的だった身近な人間関係に感情的な反目が生じるケースも多く出始めます。例えば、学校が一斉休校になり、仕事を休めない親のお子さんを、仕事が休みになったご家庭が、子ども同士が仲良しだからという理由で日中預かったとします。

最初は、少しでも役に立てるなら、自分の子どもも喜ぶし、遊び相手がいることで自分も助かるという気持ちで引き受けたかもしれませんが、いくら簡単な昼食やおやつを出すだけといっても、毎日のこととなれば疲れも生じてきたり、お互いに遠慮がなくなりトラブルがいつ起きてもおかしくない状況になってきます。

トラブルが起きると、そのまま関係を断つというようなことにもなりかねません。このように、組織やコミュニティー内でも軋轢が生まれ、分散化が表れ始め、つながりが薄れ孤立感を深める人も増えていきます。みんなで頑張ろうという時期を過ぎると、次の問題が表面化しやすくなるのです。

また、状況に順応し始めた人たちへの嫌悪が生まれやすくなります。

例えば、つらい気持ちを話した相手から「仕事がなくなるのはみんな同じ、みんな大変なんだから我慢しましょうよ」「出勤してるの? テレワークに切り替わらないの?」と言われたらどうでしょうか。あなたは大丈夫かもしれないけど、私は切羽詰まっている、とますます不満や反発感を募らせることになります。行き場のない気持ちを抱えやすくなるのです。

先が見えないからこそ、不満のはけ口を求めてしまいがちで、身近な人のちょっと自分と違う「環境や考え方、行動」が許せない気持ちになったりします。先が見えない不安に加え、身近な人間関係が不安定になることは、ぜひとも避けたいところです。

そんな中、身近な人間関係にひびを入れないための関わり方をいくつかご紹介します。

●会話NGワード

「みんな同じ。みんな大変。みんな頑張っている」
これらは、相手のことをその他大勢と同じと捉え、一般化する表現です。確かにみんな大変だとは思いますが、一人ひとり事情は違います。相手の状況や気持ちを一般化しないことが大切です。

「我慢しなきゃ。耐えなきゃダメ」
典型的な強制表現です。相手を追い詰めることになるので、避けましょう。もしかすると、子どもにこのように声かけしてしまう方も多いのではないでしょうか。

「もっと大変な人がいる」
私は、こんなに大変。あなたは、○○だけまし。人の幸・不幸感は、人と比較することから生まれることが多くあります。自分よりも不幸な状態と比較し、それよりもよい(まし)という考えは、自分自身を納得させるために必要な場合もありますが、他者からの発言は単なる押し付けになります。つらさや不安を理解しない発言です。

心に寄り添う言葉かけが必要

相手と関わる機会が生じたときには、相手の状況や気持ちをそのまま受け止めていくことが大切です。

相手がアドバイスを求めていることは少なく、つらい状況をわかってほしい、誰かに自分の気持ちを聞いてほしいという思いで関わりを持つことが圧倒的に多いです。

「そうなんだね」「そんなことがあるんだね」「○○な気持ちなんだ」という共感が求められます。否定や反論されずに気持ちを話すことは、カタルシス効果(心の浄化作用)を生み、次の行動エネルギーを生み出します。身近な人間関係が良好なことこそが、ご自身のストレスマネジメントを可能にし、第4段階、回復のエネルギーにつながります。

長く続けば忍耐との勝負になってくるかと思いますが、いずれ状況は変化します。大切なものを見失わないよう、周りとの関係性を改めて考えることも大切です。