外国人客でにぎわっていた「GINZA SIX」(東京都中央区)周辺も、現在は人通りもまばら(2月26日、記者撮影)

新型肺炎の影響が直撃し、訪日外国人など多くの人が集まる百貨店の客足が遠のいている。大手百貨店が3月2日に発表した2月の既存店売上高は、軒並み2ケタの落ち込みとなった。

百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)傘下の三越伊勢丹は、2月の国内既存店売上高(グループ会社含む)が前年同月比13・6%減だった。新型肺炎の感染拡大による不安が広がり、入店客数の減少や消費マインドへのマイナス影響が出た。

三越伊勢丹HDのIR担当者は「外国人の来店数が大幅に減少し、化粧品を中心に販売が落ち込んだ」と肩を落とす。

シニアの消費マインドに影響も

外国人客だけでなく、日本人客も外出を控え始めた。観光地として全国各地からの来店客が多い店はその分、売り上げの落ち込みが激しい。三越銀座店(東京・中央区)の2月の売上高は同36.2%減と、全店の中でもっとも下落幅が大きかった。

同じく銀座に本店を構える老舗百貨店の松屋も、2月の既存店売上高は同31.6%減と、大きく落ち込んだ。「訪日中国人はもちろん、国内のお客さん、特にシニア層の消費マインドに影響が出ている」(同社広報担当者)。

J.フロント リテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店も、2月の既存店売上高(グループ会社含む)は同21・4%減。「百貨店業界で、対前年比2ケタのマイナスは珍しい。リーマンショック以来の落ち込みになった」(J.フロントの広報担当者)という。

観光地としてにぎわっていたエリアの店舗が大きく落ち込んでおり、大丸心斎橋店(大阪市中央区)が同45.5%減、大丸札幌店(札幌市中央区)が同28.3%の減少となった。

高島屋も2月の既存店売上高(グループ会社含む)が同11.7%減。阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オー リテイリングも同14.3%減だった。

新型肺炎の拡大を受け、営業時間を短縮する百貨店も続出している。高島屋は2月28日から、国内10店舗の開店や閉店の時間を見直した。そごう・西武も3月3日から全国15店舗の営業時間を短縮。大丸松坂屋百貨店は3月に合計4日間、大丸東京店(東京都千代田区)や大丸京都店(京都市下京区)など全16店を原則臨時休業する。

業績はさらに下振れも?

時短営業は売上高のさらなる減少を招く。三越伊勢丹HDやエイチ・ツー・オー リテイリング、松屋などの大手百貨店は、1月に今2020年3月期(松屋は2020年2月期)の業績計画を大幅に下方修正した。三越伊勢丹HDは当初、売上高1兆1900億円(2018年度1兆1968億円)、営業利益300億円(同292億円)とみていたが、今回1兆1550億円、200億円へと営業増益予想から減益予想に変えた。


百貨店各社の業績はさらなる下方修正もありそうだ(2月26日、記者撮影)

松屋も当初は売上高940億円(2019年2月期実績925億円)、営業利益21億円(同18億円)とみていたが、それぞれ910億円、10億円へと減益予想に修正した。当初、売上高9392億円(2019年3月期9268億円)、営業利益180億円(同204億円)とみていたエイチ・ツー・オー リテイリングは今回9280億円、160億円へと営業減益幅を拡大した。


コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

ところが、ある百貨店幹部は「現時点では、新型肺炎の影響を織り込み切れていないのが正直なところ」と明かす。新型肺炎の展開次第では、百貨店の2020年3月期の業績はさらに下振れする可能性がありそうだ。

「新型肺炎の影響は、今年の夏ごろまで続くかもしれない」と別の小売業界経営幹部は語る。先行きの見えない状況に不安を抱きながら、早期収束することを多くの関係者は祈っているが、混乱は当面続きそうだ。