ミームの活用が話題になる2020年大統領選挙だが、ミームだけでなく、インフルエンサーたちも活用されるかもしれない。

2月中旬、マイケル・ブルームバーグの大統領選キャンペーンが支払った広告が@KaleSaladや@Tank.Sinatra.といった影響力の大きいミームアカウント(ネタ画像のまとめアカウント)にいくつも投稿された。これらの広告は新しく立ち上がった会社ミーム2020(Meme 2020)によるもので、ブルームバーグ候補について何かを伝えるものでも、フォロワーたちに誰に投票するべきか、と伝えるものでもなかった。その代わりに、キャンペーンはメタな広告としてこれらを機能させた。ブルームバーグがミームを使うことで若い投票者たちに「クール」に見られようとする試みを、アカウントたちがネタにする、というメッセージ風のものになっている。認知度を高めることが狙いだ。

インフルエンサーと政治

今回の大統領選挙にあたり、インフルエンサーマーケティングにお金を支払って活用している候補者たちは、ほかにもいる。すでにレースからは降りた候補者だが、コーリー・ブッカー議員を指示するスーパーPAC(政治資金管理団体)は、彼についての投稿に対してインフルエンサーにお金を支払っていたと報じられている。しかし、インフルエンサーマーケティングの専門家たちは、ブルームバーグのキャンペーンによる今回の試みは最大規模かつもっとも成功しているものである可能性があると指摘する。少なくともこれまでの政治家による有料インフルエンサーマーケティングの使用法として、そのメディアでの取り上げられる成果に注目した場合は、これが事実だと言えるとのことだ。専門家たちはまた、ブルームバーグがミームによって得た注目を、ほかの候補者たちも確認するなかで、政治的なインフルエンサーマーケティングは、はるかに大きくなるだろうと予測する。

「有料キャンペーンに関する、新しい外からの関心がたくさん集まっている」と、インフルエンサーマーケティング・プラットフォームであるイジア(Izea)のCEOであるテッド・マーフィ氏は言う。「ブルームバーグの話題によって、ほかの人々も潜在的な戦略としてインフルエンサーマーケティングに注目している」。これらのリクエストがどこから来ているのか、大統領選挙の候補者から来ているのか、という点についてマーフィー氏は明らかにしなかった。

インフルエンシャル(Influential)のCEOであるライアン・デタート氏は、政治分野でのインフルエンサーマーケティングが台頭しつつあると語る。「今後も成長し続けるだろう」。ただ特定の候補者を純粋に支持表明するだけだと、インフルエンサーに対してバックラッシュを生むだろう、と付け加える。インフルエンサーの活用はブルームバーグによるミーム戦略と似たような形を取るだろうと、デタート氏は考えている。特定の候補に投票する理由を投稿して、それに対してお金を受け取るのではなく、認知度を高めるための戦略として使われる、といった具合だ。「強制されている、と捉えられればバックラッシュがあるだろう」と、デタート氏は言う。

若年層攻略には効果的

インフルエンサーにお金を払い、認知度を高める戦略に活用する手法はスウェイ(Sway)のCEOであるダニエル・ワイリー氏にとって、理にかなっている。「若い有権者たちはテレビ広告を見ていない」と語るワイリー氏は、インフルエンサーを使うことで候補者たちは何百万人の18歳から24歳に、彼らがいる場所でリーチできると付け加える。「インプレッションと露出という点では(インフルエンサーマーケティングは)大きい」。

今回のキャンペーンサイクルで、どれほどがインフルエンサーに費やされているかは不明瞭だ。ザ・デイリー・ビースト(The Daily Beast)が以前報じたように、ミーム戦略の前はブルームバーグキャンペーンはブランデッドコンテンツのマーケットプレイスのトライブ(Tribe)を起用し、インフルエンサーたちに投稿ひとつに月150ドル(約1万6000円)を支払った。このキャンペーンサイクルでテレビ広告に費やされた金額は4億3500万ドル(約474億円)となっており、そのうち2億3000万ドル(約250億円)はブルームバーグによるものだ。データはウェスリアン・メディア・プロジェクト(Wesleyan Media Project)によるものだ。

たとえ戦略が認知を高めるものであって、候補者の支持を呼びかけるものではないとしても、広告であることの表示についての議論は出てくるだろうとインフルエンサーマーケティングの専門家たちは予測する。政治広告は連邦選挙委員会(the Federal Election Commission)によって管理されているが、BuzzFeedが報じたように、現状のデジタル広告環境に合わせて規則を更新していない。ブランド相手のインフルエンサーマーケティングを取り扱う連邦取引委員会(the Federal Trade Commission:FTC)はこれまでに何度も広告主との関係を表示するようにガイドラインを更新してきたが、必ずしもインフルエンサーたちはこれを守っていない。インフルエンサーによる政治広告でも、同様の問題が出てくるだろうと専門家たちは予想している。

ブランド企業たちの本音

候補者たちはインフルエンサーマーケティングに目をつけているなかで、特定の候補者を称賛して報酬を受け取るという仕事を受け入れるインフルエンサーたちが何人いるかも不明瞭だ。それを実施することで彼らのオーディエンスの一部を阻害する可能性があるだけでなく、ブランドたちはこのインフルエンサーを起用したがらなくなる可能性もあると、専門家たちは指摘する。政治、宗教、そして他の議論を呼びやすい問題について意見を大きく表明するインフルエンサーたちを起用しないよう、ブランドは求めてくると、彼らは指摘した。ワイリー氏によるとインフルエンサーたちは「広報担当者のように」見られる可能性があるため、ブランドはこう言った問題を扱わないインフルエンサーたちを好むようだ。

ブランドとの関係性や表示に関する問題があるとしても、政治インフルエンサーキャンペーンは消えたりはしないだろうと、専門家たちは考えている。インフルエンサーマーケティング協会(Influencer Marketing Association)のエグゼキュティブディレクターであるクリスティ・サミス氏は「これが新しい標準となるだろう」と返答した。「インフルエンサーマーケティングはいまではよく知られた、確立された戦術だ。これはビルボードやテレビ広告と同じだ。ミーム広告を背後で繰り出しているのはファイヤー・フェスティバル(Fyre Festival)のプロモーションをしたジェリー・メディア(Jerry Media)の最高責任者であることは特筆すべき点だ。これまでも言ったことだが、ファイヤー・フェスティバルで唯一成功したのがインフルエンサー戦略だった」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:塚本 紺)