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キヤノンは「スマート工場 EXPO」に出展し、シーンに合わせてフレキシブルな映像解析・映像監視システムが構築できる「XProtect」(エックスプロテクト)を展示している。「XProtect」は、キヤノンのグループ会社であるマイルストーンシステムズ社(本社:デンマーク)の技術を使ったビデオ管理ソフトウエアで、既に製品としてリリースされている。



ブースでひときわ目立つのは、小型の協働ロボット「COBOTTA」(コボッタ)とキヤノンのネットワークカメラの連携デモだ。



デモは、生産ラインに流れてくるインクカートリッジ製品を掴み、ロゴやバーコードを読んで型番を見分けたり、重量計の数値をカメラで読んで重さで確認し、空きスロットに正確に置いていく、というものだ(画像の読み取りや数字認識にはパターンマッチングが使われている)。なお、インクカートリッジ製品にはスタンダードと大容量タイプがあり、ロボットはそれを見分けて仕分けする。



使っている技術はユニバーサルロボットと発表したときのデモに近い。キヤノンはUR+の認証を受けている)

(関連記事:キヤノンがカメラのビジョン技術を活かして「ロボットの眼」に本格参入!ユニバーサルロボット社との連携を発表!)

特徴的なのはカメラ技術で製品を見分けたり、識別するところ。重量計のメーター数値をカメラ映像で読むところなどは人間と同じ手順で業務ができる印象を持つ。



キヤノンのネットワークカメラの例



パッケージのロゴと、カートリッジを分別するスロットの空きを確認



バーコードの読み取りが完了したところ



パトライトや装置の状態を映像ソリューションで読み取ることができる

下の写真はラインに流れるカートリッジ製品を故意に倒したところ。カメラは異常を検知して、ランプが赤色に光るとともに管理センターには異常を知らせる。



インクカートリッジが倒れてロボットが掴むことができないが、それをカメラ映像から検知して異常を発見する



高いランプが点灯して異常検知、ロボットの作業がストップする。上にネットワークカメラ2基が見える



異常が発生したときにカメラ映像を即座に確認することができるので、効率的に原因がわかる

上記のデモでも活用されていたが、「XProtect」は異常を検知したときに、その前後のカメラ映像を管理者が素早く見て確認できるように提供することで異常確認の省力化を実現している。展示ブースの他のソリューションでもそのコンセプトはゆるぎない。

なお、このデモでは「XProtect」自体には異常を検知する機能はなく、PLCが異常を通知し、キヤノンが提供する製造現場向け異常監視・録画ソフト「Monitoring Edition」が異常発生の前後を自動録画して「XProtect」で映像を確認できる、というしくみ。



●その他の画像解析ソリューション



メーターの数値をカメラで読むデモ



天井や壁のカメラでバーコードを読み取り



アナログ計の数値も読み取れる

●サビを検知するインフラ・チェックのソリューション

例えば、サビの状態を検知する画像解析では、Automagiの「AMY InfraChecker」と「XProtect」の連携を参考出品した。「AMY InfraChecker」はいわゆる老朽化したインフラや破損個所を検知し、点検作業を支援するツール。サビ、塗装のはがれ、クラックやひび割れなどが画像から検知できる。



右上の画像でサビの状況を解析していることがわかる

展示したのはサビの状態を機械学習したAIシステムがカメラ画像を解析してサビの検知を行うシステム。展示ブースではキヤノン製のカメラと組み合わせて使用。通常はセキュリティや監視カメラとして使用し、数日に一回程度、サビ検知・解析に併用するといった効率的な使い方を提案する。



●SCADAとの連携

業務管理センターが映像ソリューションを効率的に使えるシステムも展示している。

そのひとつが、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行い「SCADA」(スキャダ:Supervisory Control And Data Acquisition)と連動したものだ。IoTセンサーと連動してカメラ映像が効率的に提供される、といった方がピンと来るかもしれない。



液体のタンク残量が極めて少なくなったり、排煙装置に異常を検知したら通知され、異常時前後の画像をすばやく提示することができる

通常、IoTセンサーから原材料の残量不足や異常発生を検知した通知を受けた際、異常を確認するために管理センターは異常があった機器の状況を確認しに行くことになる。もしくはカメラを既に導入していれば、異常時点のカメラ映像をチェックするが、異常時の映像を探すのにも時間と手間がかかっていた。「XProtect」では、異常を検知した前後を含めたカメラ映像だけを管理者に見やすく提供するため、確認しに行く工程を削減したり、カメラが記録した動画を遠隔からチェックして作業を効率化するしくみだ。(このシステムの組み合わせは参考展示)

●BIツールとの連携

BIツールを既に活用している工場向けに「XProtect」を連携したシステムも展示している(ブースでは「Motion Board」との連携を参考出品)。BIツールは各プロセスやセクションにかかった時間や機械の稼働状況、作業の進捗度など、工場内のIoTデータを集めて管理できるツール。あらゆるデータが集められる反面、管理者が活用するにはデータが多すぎて、細かく精査ができないという課題もある。そこを「XProtect」が効率的にカメラ画像を提供する。

例えば、BIツールによって生産効率が悪いと判断されたセクションがある場合、それをグラフで管理者に通知するとともに、カメラ動画を簡単に再生して、沿革から原因を探ることができる(原因追跡の省力化)、など。



歩留まりの悪いセクションを通知し、カメラ画像から原因を探る

●トレーサビリティ

映像に検索キーをつけて、自動車工場などで、ライン上のトラブルの原因を追及しやすくするソリューションも展示。



●顔認証システムも開発中

工場などのニーズに応え、ヘルメットやマスクをした状態でも認証できる「顔認証システム」を開発中だ。マスクやヘルメットを着用した状態の写真を登録することもできる。



顔認証データだけでなく、出入り口を通過した際の前後の動画を録画して蓄積させることができる。2020年下期にリリースしたい考えだ。オンプレミスの解析サーバで提供する予定だ。





出入り口に設置する顔認証システムの例

グループ会社を含めた独自の映像ソリューションでもIoTやロボット、AIと連携した工場向け製品の開発を急ピッチで進めるキヤノン。今後の動向がとても楽しみだ。

(神崎 洋治)