2019年3月から8月にかけて、Amazonは同社初となるスキンケアのプライベートブランド「Belei」の発売、Amazonプロフェッショナルビューティーストアのローンチ、レディー・ガガ氏のハウスラボラトリーズ(Haus Laboratories)の独占販売を次々に打ち出した。これらの連続した取り組みから、Amazonが美容分野へ進出しようとする意図が読み取れる。

Amazonが美容ブランドに対し、あまり協力的でないことはこれまでしばしば報じられてきたが、Amazonの利便性は抗いがたいものとなっている。美容関連企業がAmazonに販売を依存したいと考えているかはさておき、Amazonにおける検索やレビューを不可欠なものとして重視する企業は増え続けているのだ。

リップバームブランドのイオス(Eos)もAmazonをそのように位置づけている。

「コンバージョンが非常に容易」

イオスの売上の大半は実店舗や小売パートナーのターゲット(Target)、アルタ(Ulta)らを通じたものとなっている。イオスの最高マーケティング責任者を務めるソーヤン・カン氏によれば、Amazonによる売上は全体の10%に満たないという。同社がAmazonでの販売を開始したのは2017年のことだ。

だが、ほかの小売企業との結びつきが強いイオスは、Amazonのマーケティングにそこまで力を注いでこなかった。同社はほかのソーシャルプラットフォームであるインスタグラム(Instagram)やYouTubeなどにおける戦略(有料ディスプレイ広告、動画広告)をAmazonでも採用し、それに次いで検索連動型広告を利用していた。カン氏によれば、イオスは2018年9月からはじめた検索広告に広告予算の多くを費やすようになっているという。

「Amazonのユニークなところは、自社でD2C販売ができなかったりリソースがなかったりする場合でも、ECとしての居場所を作り出せることにある。最終消費者のコンバージョンが非常に容易なのだ」と、カン氏は指摘する。「Amazonは商品を検索する場としても絶大な支持を得ているため、『イオス リップバーム』や単に『リップバーム』とユーザーが検索した場合に検索結果の上位に表示されるようにしたい」。

キーワード検索は戦略の柱

7月にAmazonラグジュアリービューティーへ進出したバートゥーラボ(Virtue Labs)にとっても、キーワード検索は戦略の柱となっている。

同社の創業者でありCEOのメリス・シャバン氏はタイムセールなどにおけるAmazonの広告を活用しており、「当社はブランドとして歴史が浅く、未成熟だが、そこが逆に強みになっている。何が良い結果を生むか積極的に試すことができている」と語る。「ほかのブランドにAmazonで出し抜かれたくない。現時点におけるあらゆるチャネルで、チャンスと経験を少しずつ増やしていきたい」。

シャバン氏によれば、バートゥーラボはAmazonに進出して日が浅いため、Amazonでの売上は総売上に対して5%以下となっているという。同氏は2020年には、この割合が全体の8%になるだろうと予測している。Amazonで同社が利用するのは、2020年はじめまで引き続き検索連動型広告のみとなる予定だ。

年々高まるAmazonの広告コスト

だが、Facebookやインスタグラムにおけるカスタマー獲得コストが高騰したのと同様のことがAmazonでも起きる可能性があり、現在Amazonでのマーケティングを検討しているブランドはその点に注意すべきだろう。ひとつのマーケティングチャネルにブランドが集まりはじめると、そのコストは急騰する。
ポディアン・マーケットプレイス・マーケティング(Podean Marketplace Marketing)の創業者でありCEOのマーク・パワー氏は、「金を払わなければ勝負にならない。1年前のオーガニックリーチはもはや得られない状態だ」と明かす。

Amazon専用のエージェンシーであるボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)の調査によれば、Amazon上の美容商品におけるスポンサード広告、スポンサードのディスプレイ広告、スポンサード商品は増加しているという。2016年1月に上記の1クリックあたりのコスト(CPC)はそれぞれ0.36ドル(約39円)、0.90ドル(約99円)、0.76ドル(約83円)に過ぎなかった。これが2018年8月にはスポンサード広告は1.66ドル(約182円)、スポンサード商品広告は1.51ドル(約165円)にまで増えた。唯一スポンサードのディスプレイ広告のみが若干の減少となっている。ボブスレッド・マーケティングによれば、2019年11月時点でスポンサード広告のCPCは1.79ドル(約196円)と再び上昇している。

同社の広告ディレクターを務めるステファン・ジョーデフ氏は「Amazonにおけるスポンサード商品およびスポンサードブランドについていえば、CPCはここ2年半安定して上昇傾向となっており、『Amazonへの広告支出に対する収益率(RoAS)』は減少している」という。同氏はスポンサード商品の収益はスポンサードブランドと比べて75%多かったと指摘する(RoASはそれぞれ3.33と2.51だった)。

「当社が1年間分析したほかの11カテゴリーと比べて、美容カテゴリーは(Amazonで)もっとも広告コストが高い分野となっている」と同氏は語る。ジョーデフ氏が美容カテゴリーと比較したのは、アパレルや宝石、キッチン用品、アウトドア用品、家具などだ。

「依存することは危険だ」

Amazonマーケティングのエージェンシー、オルカパック(Orcapac)の創業者でありCEOのジョン・ジョーソ氏は、キッチン家電などの一部カテゴリーではAmazonの広告コストが横ばいになっているものの、美容カテゴリーでは大量生産品、高級品、独立ブランド商品を問わずCPCは今後も伸び続けるだろうと予測する。まだ一部の化粧品大手がAmazonに本格参入していないためだ。たとえばシャネル(Chanel)など、大手のなかにはAmazonでの販売を拒否しており、これは今後に向けて考慮すべき要素だ。

検索連動型広告のコストについてカン氏は「入札プロセスを採用するプラットフォームでは、コストは需要で決まる。これまで、Amazonを正式な流通パートナーとして採用する既存ブランドやニッチなブランド、新興ブランドが増えたことで価格は高騰した」と指摘する。それでも2019年にイオスが行った検索広告への支出は「十分なリターンがあった」という。

シャバン氏もこれに同意する。「全体で価格は上昇傾向にある。もしAmazonでFacebookと似たようなことがあれば、依存することは危険だ。当社はFacebookとインスタグラムで2019年に数百万ドルを投資したが、昨年ほどの効果はなかった」。

売れなくても、投資をする

だからこそイオスはAmazonのほかの広告についても調査をはじめたという。同社はHulu(フールー)やロク(Roku)などでOTT動画の広告も試みている。またAmazonの梱包内に広告を入れたり、梱包自体を通常のAmazonのダンボールではなくブランド独自のものにすることで屋外広告としての効果を期待したりといった手段も検討しているとのことだ。上記の梱包に関わる広告は魅力的だが価格は高い。パワー氏は1箱あたり3から4ドル(約330円から440円)ほどで、最低で10万箱からの注文になると推定している。利用するのに数億円以上かかる計算だ。

「Amazonは消費者とマーケティングをひとつにまとめたプラットフォームだ。だからこそ当社商品がAmazonでそこまで売れていなくても、多額の投資を考えている」と、カン氏は語る。「ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングを同時に行えるのだ」。

シャバン氏は、まだOTT広告と梱包を利用したマーケティングは考えていないが、バートゥーラボの特許技術とイノベーションが髪のダメージをいかに補修するかを伝える動画広告を検討しているという。

Amazonが11月に商品サンプルプログラムの終了を発表したなか、クリエイティブな宣伝手段が確立されれば、メイベリン(Maybelline)やカルバンクライン(Calvin Klein)の香水など、大手が参入する可能性は高まる。

Amazonはシンプルな実行戦略を

一方ジョーソ氏は、Amazonはシンプルな実行戦略をとるべきだと述べている。さらに一部美容ブランドがまだそのことを理解できていないと主張している。

「Amazonは滑車のようなものだ」と、同氏は語る。「ストーリーテリングや動画は検討の価値がある。こと美容カテゴリーにおいて15秒の動画はサムネイル画像よりも効果的だからだ。一方商品検索においては積極性が求められる。Amazonは、芸術性よりも科学と数字を信奉してきた。Amazonのコンテンツが一部ブランドにとってメインの場となっていないのはそのためだ。ブランドにとってAmazonはGoogleやセフォラ(Sephora)を超える、もっとも重要なウェブサイトだ。Amazonを利用しているブランドは、その強みを活かしている」。

PRIYA RAO(原文 / 訳:SI Japan)