阿部氏の平成27年6月の交際費(右)と支払い先ランキング表

《特定の職員 交際費4400万円 東北福祉大運営法人前監事が上申書》

 驚きの見出しが、「河北新報」の宮城県版に躍ったのは、2019年12月10日のこと。

 東北福祉大学で監事を務め、11月で退任した犬飼健郎弁護士が、退任直前、不正な経理処理を指摘する上申書を理事会に出していたことを、報じたものだった。いま同大では、この上申書をめぐり、激しい “暗闘” が起きているという。

「じつは2019年10月に、大学に税務調査が入ったのです。その際に、『交際費が高い』という話が出たんです。それを受けて、犬飼弁護士が監事として内部を調査したところ、総務部長が使った平成27年度ぶんの交際費が、総額で4400万円を超えていたことがわかったのです」(東北福祉大の現役教員、以下同)

 本誌も、この上申書を入手。河北新報では匿名となっていたが、取材を進めるなかで、高額な交際費を使ったと指摘されているのは、阿部靖彦総務部長(57)と判明した。

 阿部氏は、1989年に東北福祉大のゴルフ部を新設し、谷原秀人(41)、池田勇太(34)、松山英樹(27)ら人気プロゴルファーを輩出する、同大ゴルフ部の監督も務めている。

「上申書では、たんに交際費が多額なだけでなく、支払先に銀座や六本木などの高級店が並んでいて、『個人的な遊興のための支出としか考えられないこと』や、『実際にはその会食に参加していない人物の名前が、精算書類に書かれていること』も指摘されています。

 とくに、『大谷(哲夫)前学長と飲食した』と支払伺いが出されているのに、実際は参加していないことも、犬飼弁護士は直接確認したそうで、このような虚偽の書類のでっちあげは許されません」

 ことを重く見た同大の教員たちは、12月12日に文部科学省・学校法人経営指導室を訪れ、学校法人調査官らと面談。虚偽の内容が書かれた書類なども持参して、学内有志からの告発文書を提出した。

「担当者は、文書を見て驚いていました。『大学内で調査委員会を早急に立ち上げ、報告書を提出してほしい。こちらでも調査します』との言質を取りました」

 なお本誌が、文科省に問い合わせたところ「個別の法人への指導内容についてはお答えできません」との回答だった。

 冒頭の写真は、阿部氏が交際費を支出した飲食店のリストだ。ほとんどの場合、1回の飲食で10万円を超えており、東京・銀座、六本木の高級店がずらりと並ぶ。

 これ以外にも、たとえば平成27年6月1日からの4日間で、都内の高級店を9店も訪れており、総額は101万6910円にのぼる。また年末になると、銀座や六本木のクラブから、阿部氏宛にたくさんのお歳暮が届くという。

 なぜ、総務部長とはいえ一介の大学職員が、ここまでの交際費を使えるのか。

「阿部さんは、東北福祉大ゴルフ部を強豪校に成長させた “松山英樹の恩師” として、学内で権力を振るっているのです」(ゴルフライター)

 だが、阿部氏にまつわる “疑惑” はこれだけではない。同大ゴルフ部関係者が話す。

「阿部さんは、松山選手の海外メジャー大会の応援に行くための渡航費や滞在費も、大学側に請求しているんです。

 また現在、阿部さんの息子・功太郎氏が社長を務める『KA企画』という会社が、松山選手のマネージメント業務に携わっているのですが、同社は2014年3月から2019年2月までの5年間、大学が所有する施設の3部屋を、事務所として無償で使用していました」

 犬飼弁護士による上申書や、現役教員たちが文科省に提出した告発文書も、こうした阿部氏による “大学私物化” を危惧してのものというわけだ。

「理事会は、当初は対応する姿勢を見せたものの、結局うやむやにしようとしています」(前出・現役教員)

本誌直撃時の阿部氏

 12月16日、本誌は仙台市内の自宅前で阿部氏を直撃した。

――河北新報が報じた「職員」は、阿部さんのことですね?

「私じゃないですよ」

 記者に見せたのは、余裕の笑み。続けて、「あとは弁護士が対応しますから」と言い残すと、車に乗り込んだ。

 東北福祉大に事実確認を求めると、驚きの回答が。

――阿部氏が使用した高額な交際費や領収書の偽造について、お聞きしたい。

「本校財務部に確認したところ、本年税務調査を受けましたが、是正を指摘されたことはありません。担当の公認会計士や税理士からも、交際費について指摘を受けたことはないので、問題ないと認識しています。

 偽造に関しても、職員などから聞き取りをおこないましたが、架空経費や個人的な飲食は見当たりません」

――松山選手の応援に、大学の経費が使われていると指摘する声がある。

「卒業生であり、本校のコーチも務めている松山英樹氏は、本校の知名度に高く寄与されており、最大限のバックアップをしています。業務の一環として、学内手続きを踏んだうえで渡米しております」

――阿部氏の息子の会社が、大学施設を無償利用している。

「セミナーハウスに空きがあり、事務スペースとして提供しました。松山氏からは、今までに数千万円を寄付していただき、家賃相当額以上の財産をいただいています」

 本誌が阿部氏を直撃した翌日の17日には、理事会が開かれ、そこで阿部氏が「(報道された交際費は)大学のブランド力を上げるために宗門関係者、スポーツ関係者、理事らと食事をした」と弁明。問題視する声はなかったという。

「大学のブランド力を上げるために、何度も銀座に行く必要があるのか。いま、大学ではコンプライアンスがきいてない。だから、多額の交際費も不問に付されてしまう。

 今回の騒動を受けて、教員やOBを中心に『東北福祉大学の未来を憂う者』という会ができました。メンバーは、文科省だけでなく、県警捜査二課や記者クラブにも告発文書と証拠を送っています。

 ただ、阿部氏は将来、総務局長の座を狙っており、報復を恐れて声を上げられない人が多い。今回が、大学正常化の最後のチャンスなんですが……」(同大の元教授)

 松山の活躍が、母校を蝕む恩師の “力の源” になっているとしたら、皮肉としか言いようがない。

(週刊FLASH 2020年1月7・14日号)