受注高増減率

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 主要上場建設会社の2019年度第2四半期(中間期)決算が出揃った。

 2017年度の受注額は、東京五輪に伴う再開発事業の発注面でのピークアウトなどから微増にとどまったものの、2018年度は、首都圏を中心とした再開発案件などの旺盛な民需が受注額を押し上げ、前年度比8.6%増と大幅な伸びを示した。こうしたなか、2025年開催予定の大阪万博や今後、候補地決定が予定されているIR(統合型リゾート)など都市インフラの整備、開発に対する期待が高まるなど、ポスト五輪を牽引する要素もみられる。

 しかしながら、近年の人手不足や海外情勢の変化による原油・資材価格の動きなどを踏まえ、各社とも引き続き労働力の確保や生産性の向上が課題となっている。

 帝国データバンクは、全国の主要上場建設会社の2019年度第2四半期の決算短信から、単体ベースの受注高とその官・民比率、および連結ベースの売上高、売上総利益率について調査・分析した。調査対象は主要な上場建設会社57社。

※前回調査は2019年6月25日、前々回調査は2018年12月21日
※なお、(株)竹中工務店(未上場、大阪市中央区)は、売上規模を勘案し分析対象に加えている

東京五輪をはじめとする建設需要のピークアウトなどを受け、受注高は減少

 主要上場建設会社57社のうち、単体の受注高が判明した41社の2019年度第2四半期の受注高合計は、前年同期比13.5%減の4兆9519億5600万円。第2四半期としては3年連続の減少となったほか、減少率は2ケタ減と2018年度第2四半期(前年同期比4.9%減)より減少幅が拡大。41社のうち、28社(構成比68.3%)の企業で受注高が減少、増加企業数13社(同31.7%)を上回った。

 東京五輪等による建設需要のピークアウト、米中貿易摩擦の影響による設備投資意欲の減退、地方における復興需要の落ち着きなどが受注高減少の背景にあるとみられる。

 受注高の増加率では、官公庁受注を大幅に伸ばした「大本組」が前年同期比41.0%増でトップ。次いで「三井住建道路」が同22.6%増、「日本道路」が同22.3%増と道路工事業者が続いた。
減少率では民間受注の大幅な落ち込みより「熊谷組」の前年同期比66.1%減がトップ。次いで「金下建設」の同61.2%減、「佐田建設」の同45.3%減となった。

官・民、いずれも減少

 工事受注高の内訳(官・民)が判明した31社をみると、官公庁工事の受注高は、前年同期比20.1%減の8165億2900万円。2018年度第2四半期(前年同期比▲9.0%)より減少幅は拡大し、3年連続の減少となった。

 増加企業数10社(構成比32.3%)に対し、減少企業数は21社(同67.7%)となった。

 官公庁受注高の伸び率は、「大本組」が前年同期比88.8%増でトップ。次いで「福田組」の同58.7%増、「世紀東急工業」の同51.9%増となった。

 民間工事の受注高は、前年同期比7.9%減の2兆9857億5900万円。官公庁工事と同じく、2018年度第2四半期(前年同期比▲1.6%)より減少幅は拡大し、3年連続の減少となった。

 増加企業数13社(構成比41.9%)に対し、減少企業数は18社(同58.1%)。

 民間受注高の伸び率トップは、「錢高組」の前年同期比66.1%増。次いで、「植木組」の同35.1%増、「大本組」の同25.9%増となった。

売上高増加率は「淺沼組」がトップ

 主要上場建設会社57社の売上高合計(連結ベース)は、前年同期比6.5%増の8兆2437億4200万円。

 増収企業数は39社(構成比68.4%)、減収企業数は18社(同31.6%)となった。

 売上高の増加率では、「淺沼組」が前年同期比25.1%増でトップ、次いで「植木組」の同23.3%増、「五洋建設」の同20.8%増となった。

 減少率では、「北野建設」の前年同期比33.5%減が最も大きく、次いで、「森組」の同32.0%減、「テノックス」の同23.1%減となった。

労働力や資材確保などのコスト増で、利益水準の上昇傾向は鈍化

 57社の売上総利益率の平均をみると、2019年度第2四半期は11.9%。前年同期比0.1ポイント増とほぼ横ばいとなった。

 売上総利益率は29社(構成比50.9%)で上昇し、28社(同49.1%)で低下し、ほぼ半々となった。
リーマン・ショック後の売上総利益率が7%程度だったことからみれば、引き続き採算重視の選別受注により利幅は高水準を維持しているとはいえ、全体として、利益水準の上昇傾向は鈍化し、労働力や資材確保などのコスト増から利幅が縮小しており、今年度通期では低下に転じる可能性がある。

 売上総利益率の増加幅トップは、「竹中工務店」で前年同期比9.4ポイントの増加。次いで、「日本基礎技術」が同7.0ポイントの増加となっている。減少幅では、「大本組」の4.1ポイント減が最大となった。

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 今回の調査では、単体の受注高が判明した41社の2019年度第2四半期の受注高合計は前年同期比13.5%減と3年連続減少となった。41社中28社が減少、減少率も2ケタ減となるなど減少幅が拡大した。また、工事受注高の内訳(官・民)が判明した31社をみても、官・民工事の受注高も、ともに3年連続の減少となった。背景としては、東京五輪等による建設需要のピークアウト、米中貿易摩擦の影響による設備投資意欲の減退、地方における復興需要の落ち着きなどが考えられる。

 また、57社の売上総利益率の平均をみると、前年同期比0.1ポイント増の11.9%とほぼ横ばいとなり、利益水準の上昇傾向は鈍化し、労働力や資材確保などのコスト増から利幅が縮小傾向にあることがうかがえる。

 今後、業界の課題となっている「ポスト2020」については、2025年開催予定の大阪万博や今後開催候補地が選定されるとみられるIR(統合型リゾート)などポスト五輪の目玉となる大型案件がみられる。また、今月5日には政府が総合経済対策を閣議決定。災害からの復旧・復興と安全・安心の確保として財政支出5.8兆円程度、事業規模7兆円程度が予定されているなど今後、公共工事の増加なども見込まれる。そのほかにも、首都圏において、関東のゼネコンでは3年程度先まで案件が見えているとの話も聞かれるように、引き続き再開発の大型案件のほか、2020年前後に工事が集中することを避けるため控えられていた工事の発注が見込まれるなど、総じて堅調な推移が見込まれる。

 しかし一方で、消費税増税など経済環境の変化から、地方圏では民間の投資意欲は低い傾向にあるとされ、首都圏とそれ以外の地域とで二極化が進むことに加え、首都圏においても中堅以下のゼネコンを中心に受注競争の激化が予想される。また、引き続き人手不足や資材価格の高止まりなどコスト増による利幅の低下が進むものとみられ、各社の利益確保に向けた経営策がより強く問われることになりそうだ。