米同時多発攻撃により世界貿易センタービルの周囲を覆う煙(2001年9月12日撮影、資料写真)。(c)Timothy A. CLARY / AFP

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【AFP=時事】2001年9月11日にジハーディスト(聖戦主義者)らがハイジャックした旅客機で世界貿易センタービル(World Trade Center)に突入した時、当時26歳だったジャクリーン・フェブリレット(Jacquelin Febrillet)さんはその近くで働いていた。

 それから15年後、フェブリレットさんは転移性がんと診断された。有害性の粉じんを浴びたことが原因と考えられている。

「私は9月11日にそこにいた…あの日以来、何年間も毎日そこまで仕事に通っていた」と、現在44歳になったフェブリレットさんは語る。世界貿易センタービルの跡地「グラウンド・ゼロ(Ground Zero)」の近くに住んでいたこともあるという。

 フェブリレットさんとは異なり、当時19歳だったリチャード・ファーラー(Richard Fahrer)さんは事件当日、現場の近くにはいなかった。だが、2001〜2003年、世界貿易センタービルのシンボルであるツインタワー(Twin Towers)があったマンハッタン(Manhattan)南部で測量技師として定期的に働いていた。

 ファーラーさんは18か月前、侵襲性の強い大腸がんと診断された。通常は高齢の男性が発症する疾病で、ファーラーさんに大腸がんの家族歴はなかった。

 フェブリレットさんやファーラーさんのように、約3000人が犠牲になった米同時多発攻撃の後、貿易センタービルの近くに暮らしていたり、働いていたりした人の間で、がんの発症率が増加している。

 彼らはグラウンド・ゼロに駆け付けた緊急隊員ではない。また何か月もがれきの除去に携わった作業員でもない。しかし、米同時多発攻撃から18年を迎えたニューヨーク市では今、そうした人々と同じように有害な粉じんの影響を受け、がんや重篤な疾病を発症する人が増えているというのだ。

■がん発症率と有害粉じん暴露に明確な相関関係

 2001年9月11日の事件では、ダイオキシン、アスベストなど発がん性物質を含む大量の化学物質が前例のない規模で放出された。消防士ら初期対応者や何か月もがれきの除去にあたったボランティアらが最初に影響を受けた。複数の研究が、これらの人々の間でがんや心臓疾患リスクが増したことを示している。

 連邦政府による生存者支援プログラム「世界貿易センター健康プログラム」では、約1万人のこうした初期対応者やボランティアの人々ががんと診断されている。

 そして、今年6月末時点の支援プログラム対象者のうち、初期対応者ではない人の数は約2万1000人だった。これは2016年6月時点の約2倍となっており、このうち約4000人ががん患者で、中でも前立腺がん、乳がん、皮膚がんが多かった。

 専門家は、全てのがん患者の原因を突き止めることは不可能だとしながらも、がん発症率と有害粉じん暴露には明確な相関関係があるとしている。

 ニューヨーク市消防局の医療部門責任者デビッド・プレザント(David Prezant)氏は、有害粉じんにさらされた人はさらされなかった人に比べ、がん発症率が「10〜30パーセント高い」ことが複数の研究で分かっているとAFPに述べた。

 そして、この発症率の増加は、有害粉じんにさらされた人が年をとることでさらに高まると考えられている。プレザント氏によると、がんリスクは年齢と共に高まることが分かっており、また肺がんなど一部のがんでは発症までに20〜30年かかるとされている。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領はこれを受け7月、犠牲者が補償金を請求できる期限を2020年12月から2090年まで延長している。

【翻訳編集】AFPBB News