これまでとは対照的に元気がない文在寅大統領(時事通信フォト)

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 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、韓国で拡大する日本製品の不買運動を分析。

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 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、8月15日の演説で日本批判をトーンダウンさせた。日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で、反日強硬姿勢を取ると思われていただけに拍子抜けだ。

「今からでも日本が対話と協力の道に出れば、我々は喜んで手をつなぐ」と淡々と演説したが、式典に参加した人々からの拍手もまた淡々としたものだった。“ワンコリア”という言葉で朝鮮半島の平和と統一を掲げ、「日本を追い越す」と経済大国への未来を語り、最後は「我々はできます」と言い切ったものの、熱狂的な拍手や歓声は返ってこなかった。

 それもそうだろう。反日姿勢を鮮明にして、国民の反日感情を煽るような発言を繰り返して支持率を上げてきたのは文大統領自身だ。日本の輸出管理強化で韓国がホワイト国から除外されると、文大統領は対決姿勢を強めた。日本を「盗人猛々しい」と激しく批判し、「日本に二度と負けない」と発言。これにより、韓国で展開されていた日本製品の不買運動は一気に広がり、5日には「南北の経済協力が実現すれば一気に日本の優位に追いつける」とも発言した。

 文大統領の発言により、民間レベルで始まった不買運動が公共機関や自治体にまで波及し、観光客で賑わう明洞(ミョンドン)を含むソウル中区の通りでは6日、中区の区役所が反日旗を掲げるという騒ぎも起きた。人々は日本への旅行を取り止め、日本製品をボイコット。「不買運動に参加しない者は非国民」という声さえ聞こえるほどだ。韓国にとって反日は正義なのだろう。

 今韓国では、『反日種族主義』というソウル大学名誉教授の李栄薫(イヨンフン)らが書いた本が、ベストセラーになっている。反日を掲げなければ生きていけない「反日種族主義」が蔓延する今の韓国社会を批判的に表現したものだというが、まさに今の韓国を言い表している。

 それゆえ、「不買運動に同調しない者が非国民」とされるのは、社会的圧力に他ならない。同調とは、個人の判断が集団や他者の規範や判断に影響されることを言い、この時に生じる社会的圧力を「斉一性の圧力」という。斉一性とは一様に同じであること。家族や職場、仲間や地域など属する集団が積極的に不買運動をしていたら、正面から反対するより同調する傾向を強めるだろう。反対すれば無視され仲間外れにされ、下手をすれば制裁を受けるかもしれないと思えば、自分の意見はどうであれ同調してしまうのも仕方ない。

 一方、そんな中でも人知れず日本へ行ったり、日本製品を買う人々がおり、この人たちのことを“シャイジャパン”と呼ぶらしい。こういう表現が生まれること自体、韓国には斉一性の圧力があるということだろう。

 過熱する不買運動は韓国経済をブーメランのように直撃。韓国の大手航空会社やLCCでは、稼ぎ頭の日本路線が次々と運休。日本製品を売っている店も、日本食を出している店も経営者は韓国人、従業員も韓国人。サッカーのオウンゴールみたいに、「セルフ経済制裁」が起きているとまで言われる始末だ。

 悪化する日韓関係を前にして、野党は「反日を煽りすぎ」と文政権を批判し、「NO JAPAN」に代わって「NO安倍」のプラカードを掲げる人が増えているらしい。強行な構えを崩せない人々の中にも、やり過ぎ・行き過ぎを感じ、反日感情の矛先を変え始める人たちもいるようだ。

 文大統領が発言をトーンダウンさせたくらいでは、過熱した反日感情は収まりそうにない。「NO安倍」みたいに、矛先を“ちょっとだけ”変えるのだろうか。