現役パイロットが実践する「目のケア術」
▼ホットアイマスクと野菜ジュースは必携品
■厳しい航空身体検査
現場で航空機を操縦するパイロットは、「航空身体検査」を年に1回もしくは2回受け、それにパスし続ける必要があります。この検査は、航空業務を安全かつ的確に遂行できる健康状態であるかを確認するためのもので、内科、耳鼻科、精神科領域等、心身の状態がくまなくチェックされます。肥満度を示すBMI値にも上限が設けられているほど厳しいので、パイロットという仕事をしていると、自ずと健康への意識が高まり、同僚からもいろいろな健康情報が入ってきます。

なかでも私たちにとって重要なのは、やはり「目」に関することです。私が受験した頃に比べれば、視力条件の緩和が進んでおり、1995年からは日常的にメガネやコンタクトレンズを使用する人でもパイロットになれるようになっています。ですが、目が操縦の要であること、視覚情報の重要性に変わりはありません。離着陸時にきちんと滑走路や計器などの情報を見て、都度的確な判断ができるかどうかが安全に直結するのです。
そこで私が日常的に心がけているのは、何か調べ物をするときは、スマホ等の小さな画面でなく、できるだけPCの大きな画面で見ること。フライト中や勉強のときに使うマニュアルはiPadがメーンとなり、パイロットが画面を見る機会は増えています。また、オフィスでPC作業をするときも、1時間に1回は目の運動をし、休ませています。目を閉じてグルグル回すことによって目の周りの筋肉を動かしたり、遠くを見たり。フライトの際には市販のホットアイマスクを持っていき、ホテルで寝る前に使用することもあります。
医薬品の使用についてパイロットは、市販品の場合第二類以上の使用に制限があり、処方薬も含めて詳細なルールが決められており、基本的には申告が必要です。そのため普段は目薬は使いません。
食事は目の健康も考えて、栄養バランスのいいものを。渡航先によっては、あまり野菜が摂れないこともあります。ビタミン不足は目によくないとされていますので、野菜ジュースを持参しています。
■富士山の3倍以上の高さを飛ぶ
また、私も含め、ほとんどのパイロットがフライト中にサングラスを着用しています。フライトでは富士山の3倍以上の高さを飛ぶため、まぶしい光にさらされます。そのまぶしさを軽減し、紫外線の刺激から目を守るためにも、多くのパイロットがサングラスを使用するのです。サングラスの選び方にはポイントがあります。コックピットの計器ディスプレーには操縦に必要なデータが表示されていますが、光量の多い外のためにレンズを濃くすると、機内のディスプレーを見る場合、見えにくくなることがあります。そうならないよう、レンズの色は過度に濃くないものを。また、サイドから光が入り込まないような形状のレンズを選んでいます。
「人生100年時代」と言われる今、いつまでも現役で活躍し続けるためにも目は大切です。ぜひ実践してみてください。
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全日本空輸・機長
1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、全日本空輸に入社。エアバスA320やボーイング777の副操縦士を務め、現在はボーイング777の機長。
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(全日本空輸・機長 西山 裕一 構成=大高志帆 撮影=村上庄吾)
