敗北を認めた、とまではいかないものの、先日のジョナ・ペレッティ氏の発言は新しい方向への舵切りを予感させるものだった。

6月第1週、BuzzFeedはBuzzFeedニュース(BuzzFeed News)のプログラミング部門責任者であるシンディ・シンディ・ヴァネガス−ゲサウーレ氏を、BuzzFeedスタジオ(BuzzFeed Studios)の新しいトップに任命した。BuzzFeedスタジオはFacebookからケーブルテレビに至るまで、外部のプラットフォームやバイヤーのための番組を制作している。従業員に対してこの発表をするにあたり、BuzzFeedのCEOであるジョナ・ペレッティ氏はBuzzFeedスタジオの今後の方向性について示唆している。

「より大きな、組織全体を通じて我々が行っていることと、BuzzFeedスタジオの戦略は今後対応していく。我々がもっとも得意なことにフォーカスをする。これはプラットフォーム向けのイノベーティブなコンテンツの開発を強化することを意味している。テレビ制作は素晴らしいことだが、我々はテレビの未来とは何かを見極めることにより大きな興味を持っている」と、彼は書いた。

「新しいモデルを切り開くとき」



取材に応じてくれたBuzzFeed社内の情報源によると、これによって従来の映画やテレビ制作が終了されるわけではなさそうだ。一度バイラル現象を引き起こした「ブラザー・オレンジ(Brother Orange)」の物語を使った映画制作をワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)とともに行っている。また彼らの記事をベースにした、ほかの2本の映画製作もニュー・ライン・シネマ(New Line Cinema)とジョージ・クルーニーの制作会社スモークハウス・ピクチャーズ(Smokehouse Pictures)と契約している。

その一方で、「ポストテレビの時代における、新しいモデルを切り開くときが来た」と、ペレッティ氏は書いていることからも、彼が考えるBuzzFeedの強みが明確にわかる。Twitterにおける「AMからDMへ(Am to DM)」やYouTubeにおける「ワース・イット(Worth It)」といった番組に代表されるように、BuzzFeedはプラットフォーム向けの番組制作ビジネスを構築してきており、それによって継続的な収益源を作ろうとしている。

今年彼らは20のデジタル番組を制作する計画を持っている。そのなかにはFacebookやスナップ社(Snap)とのプロジェクトも含まれている。映画やテレビ制作のプロジェクトに関しては、伝統的なハリウッドにおけるパートナーとの協働関係を探し続けるだろうと、ハリウッド・リポーターは報じている。

BuzzFeedの決断の意味



エンターテイメント業界では、従来のハリウッドスタジオたちにとって、これまでの仕事のやり方がますます困難になってきた。そんななかでのBuzzFeedの今回の決断がある。番組がキャンセルされることによって収益が失われる危険性は常に存在しているのだ。実際、BuzzFeedとVice Mediaが今年、経験している。Netflixの「フォロー・ディス(Follow This)」とHBOの「ヴァイスニュース・トゥナイト(Vice News Tonight)」だ。しかし、ほとんどのハリウッドスタジオやプロデューサーたちはますます、フランチャイズ化される番組を制作し、長期における収入を得るよりも、制作費のマージンから収益を得る未来図に直面している。

外部のバイヤーたちにテレビ番組や映画を売ることによって新しい収益を得る道を見出したBuzzFeedは、長年スタジオ部門の構築に投資してきた。しかし、スタジオ関連のビジネスは、いくつもの課題を見せている。番組のキャンセルから、ますます制作費の小さなマージンにプロデューサーが依存せざるをえないビジネスモデル、といった具合だ。

映画やテレビ制作を完全に停止するには至っていないが、自社がよりコントロールを利かせられる、収益を生むデジタル番組制作に、より注力するようになっている。ほかのパブリッシャーたちもスタジオ部門ビジネスを構築していくなかで、どのような種類のスタジオになりたいのかが、重要な問いかけとなるだろう。

IP(知的財産)の所有問題



米DIGIDAYではこれまでも、IP(知的財産)の所有問題について記事にしてきた。Netflix(ネットフリックス)は自社制作でのオリジナルの映画やテレビ番組へと急速にシフトしている。彼らが外部のプロデューサーたちから購入する場合は、長期の全世界領域での限定配信権を優先するようになっている。ディズニー(Disney)、ワーナーメディア(WarnerMedia)といった新しい世界規模のストリーミングサービスたちは依然として、外部のプロデューサーからプロジェクトを購入するだろう。しかし、彼らもサブスクリプション入会者を増やそうとするなかで、長期の配信権を求める可能性は高い。

プロジェクトごとに雇われる制作会社になることに、ビジネス上の価値は十分に存在しているのか。そして、どれほどの量のプロジェクトを販売することで、社全体に収益に意義のある貢献ができるのか。

取材に応じてくれた情報源のひとりによると、ひとつとある有名なデジタルメディア会社はハリウッドスタジオ関連の収益で去年1000万ドル(約10億円)を得た。これが利益という点では、どれほどになるのか詳細は得られなかったが、一般的とされている10%もしくは15%のマージンで考えても利益は100万ドル(約1億円)程度となる。

コストの一部を償却する、もしくは追加の手数料を足すことができれば利益は高められるだろうと、エンターテイメント業界で長年務めるプロデューサーのひとりは語ってくれた。「権利を持っており、権利を得ることができればより大きな勝利となる」。

どんなスタジオにしたいか?



スタジオビジネスを成功させるために、IP所有がもっとも重要、とは限らない。Vox Mediaのエンターテイメント部門責任者であるチャッド・マン氏が以前、米DIGIDAYでのインタビューに答えてくれたところでは、IP所有を重要視することは誤解を生みやすいと述べている。獲得するプロジェクトを増やすことに集中することで、より弾みが生まれ、さらに多くのプロジェクトを獲得することができる。そのようにして、スタジオビジネスをVox Mediaはゆっくりと、しかし着実に構築してきたとのことだ。

しかし、IPの問題は最終的には、どのようなスタジオをパブリッシャーが構築したいと考えているか、という問いに戻ってくる。BuzzFeedにとっては、この問いの答えは、彼らが所有することができるプラットフォーム向けのプログラムにより時間を費やすことにある。この方向性でフランチャイズを作っていくことに、より長期的な価値が存在していると判断したのだ。コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)がデジタルプログラムにおいて行っているように、コンテンツのいくつかは外部のバイヤーにライセンス貸し出しを将来的に行うこともできるだろう。そのプロセスにおいて、映画やテレビ番組の契約をいくつかこぎつけることができれば、それは追加的なメリットとなる。

報道によると、Vice Mediaは60の映画もしくはテレビ関連のプロジェクトが開発段階にあるという。アダム・ドライバー主演の長編映画「ザ・レポート(The Report)」をAmazonに1400万ドル(約15億円)で売却した。だからといって「ヴァイス・ニュース・トゥナイト」がキャンセルされたことが帳消しになるわけではない。しかし、彼らのニュース番組の新しいプラットフォームを見つけるまで、損失をカバーするだけの物量を抱えていることは確実だ。

スタジオ部門の売り上げという点では、ひとつのアプローチがあらゆるパブリッシャーにとって正解となるとは限らない。しかし、映画やテレビへとつながる道は、真っ直ぐではないことは確かだ。

Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)