メイシーズ(Macy's)は、36店舗におよぶ「ストーリー(Story)」ブティックのオープニングにあたって、百貨店における新しい店舗体験を提供しようとしている。テーマはプロダクトのキュレーションと発見だ。メイシーズの社内チームにとっては、ストーリーの存在は会社が迅速に前進するための学習ツールとなっている。

店舗体験を刷新するための取り組みの一環として、メイシーズはコンセプトストア、ストーリーを買収した。チェルシーに展開されたストーリーの場合、2000平方フィートの面積を持ち、数カ月ごとに新しいテーマに沿って店舗が刷新される。その都度、人気上昇中の小規模かつテーマに合った新しいブランドを取り上げるのだ。いまでは、メイシーズ自体にストーリーのフォーマットが取り入れられつつある。

メイシーズにおける最初のストーリーのテーマは「色」であり、参加するブランドにはクラヨーラ(Crayola)、マック(Mac)、そして、リーバイス・キッズ(Levi's Kids)などが含まれる。彼らは参加するにあたって料金を支払う、スポンサーともなっている。小規模ブランドたちの場合は、ストーリー・プログラムで販売されるために、料金を支払ったりはしない。しかし、売上に対するコミッションは発生する。テーマは定期的に変更される。そのため、新しいテーマ設営のために、ストーリーが閉じる期間が生まれることになる。

独立部隊であることの意味



ストーリーのファウンダーでありCEOのレイチェル・シェットマン氏は、買収を受けてメイシーズの最初のブランド体験責任者に就任した。彼女は自分を中心にしたブランド体験チームを構築した。ストーリー・アット・メイシーズは15人編成のチームとなっており、メイシーズの部門とは切り離されている。ストーリーのプロダクト・キュレーションは何も変わっておらず、「ステロイドで強化されたストーリーだ」と彼女は述べる。しかし、素早く業務を動かすためには、メイシーズ本体と部門を切り離すことが必要だったようだ。

「会社全体にとっての学習のチャンスとして活用することができると、私は気付いた。私は完全に統合されたチームを構築した。そして、そのチームは新しいプロセスを生み出すために、メイシーズの全分野とコラボレーションを行っている」と、シェットマン氏は言う。

小規模な社内スタートアップを通じて、メイシーズ自体が学習することが狙いだ。ストーリー部門が独立していることで、大組織のなかでありながら、ストーリーは身軽さをキープすることができる。と同時にストーリーのフォーマットをスケールさせることができる。これはストーリー単独で行おうとしていたら困難だっただろうと、シェットマン氏は語る。

「ノーススター」改革戦略



その一方で、メイシーズのマーチャンダイズ・ストア部門は、新しいプロジェクトをより早いペースで実行するために、ストーリーから学ぼうとしている。店舗勤務でも本社勤務でも、メイシーズの従業員は誰でもストーリー関連のプログラムでの勤務希望を出すことができ、関連トレーニングに参加することができる。

「メイシーズでは、変化がもっと早く、よりよく行われる必要がある。現時点での我々の目標は、ストーリーのような新しいビジネスの分野を見て、会社全体のメタボリズムを改革し、改善することだ」と、メイシーズの最高デジタル責任者であるジル・ラムジー氏は言う。

メイシーズが現在進行系で行っている進化のうち、店舗内で見られる成果の第一波のひとつがストーリーとなっている。CEOのジェフ・ガネット氏は2年前に就任し、モバイル、eコマース、店舗体験を改善するための「ノーススター(North Star:北極星)」改革戦略を展開した。在庫と体験を刷新するために、メイシーズはストーリーの買収と平行して、ベータ(b8ta)にも投資を行っている。ベータはメイシーズの店舗に新しいブランドを導入するためのポップイン戦略であるマーケット・アット・メイシーズ(Market @ Macy's)をサポートするリテール向けテック・プラットフォームだ。マーケット・アット・メイシーズも、シェットマン氏が率いている。

在庫とキュレーションの競争



客足が減りつつある百貨店にとって必須となっているのは在庫への取り組みだ。ノードストローム(Nordstrom)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale's)、バーニーズ(Barneys)もまた、オンラインブランドたちとパートナー契約を結び、店舗内に店舗を展開するという方法を使って、新しい在庫を導入している。

メイシーズの場合、ストーリーの買収、そしてその店舗展開に1年をかけた。停滞していたセールスだったが、2018年には売上が2%上昇している。第4四半期のホリデーシーズンでは0.7%の増加となっている。

「今日では、すべての百貨店が在庫とキュレーションにおいて競争を行っている。メイシーズのような会社の場合、人々が買い物をするときに店舗に行く必要がない、という事実と向き合う必要がある。人々に店舗に行きたいと思ってもらう必要があるわけだ。今回の動きは、それにメイシーズが挑戦している形だ」と、ユーロモニター(Euromonitor)のリテーリング責任者であるミシェル・グラント氏は言う。

いまのところトライアル段階



ストーリーが最終的にいくつの店舗において展開されるか、メイシーズは言及していない。しかし、ストーリー・アット・メイシーズのチームの機能から、ほかに何を学ぶことができるかを見極めるために、そのパフォーマンスを注意深く観察するだろう。特にチームがプロダクト・キュレーションやマーチャンダイズ、そして素早さといった分野でどういう動きを見せるか、が重要だ。同時に、メイシーズ内部でオペレーションするための十分な余地も与えられていると、シェットマン氏は語った。

「私はチームと一緒に百貨店を次々に周り、メイシーズのシステムを理解しようとした。メイシーズに挿入できるプロセスを私たちは開発した。彼らのツールを使うと同時に、我々のニーズを満たすことができる」と、彼女は言う。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)