次の100年へ。パナソニック中興の祖が語る「改革」と守るべきもの
規模を追う意味ない
−『破壊と創造』という強い言葉で、構造改革を進めました。
「何事も破壊する時は一番批判が高まる。1万3000人のリストラに、私は当然悩んだ。創業者の思索の場だった『真々庵』で決断したことを覚えている。社長は創業者の分身。経営理念と自分の決断は合っているのか、常に考えた。ただ、技術などは猛スピードで進化する。時には理念を乗り越え、新しいものを創る必要がある」
「私はある程度『破壊』はできたが、新事業を開発して成長する『創造』に課題を残した。独自技術に裏打ちされた強い体質を持ち、事業創造できる会社にできなかった。当時『電機メーカー10兆円の壁』という言葉もあったが、規模を追う意味はない。大事なのは強い体質だ」
幸之助さんが大好きで入社した
−人材の流動化によって、日本企業のあり方は変わりそうです。
「私は幸之助さんが大好きで入社した。『企業は社会の公器』と話し、無償でラジオの特許を公開するなど、常に公を念頭にした経営に、感銘を受けた。今の人は『若い時は苦労しろ』という私のような考えを嫌うかもしれないが、創業者の理念を知らずに企業活動していいのだろうか。一方、事業で成功しなければ、良い人材は集まらない。事業で成功し、理念に共鳴する真面目な人材を集め、大事にしてほしい。そういうグループにしてもらいたい」
−雇用関係や働き方は米国流に近づくのでしょうか。
「米国は契約社会で、個人と会社の関係はお互いに厳しい。申告した成果を達成できなければ辞めてもらう社会だ。日本は曖昧なところが良くない。上司と部下のお互いにとってもったいない。契約社会になるべきではないか。部下が年間の目標を立て、達成すれば給料を上げるという契約をする。その目標に向けて仕事をすれば、上司は不要な干渉をしなくなる。パワハラはなくなり、若い人は成長する。その上で、思いやりなどの日本的な良さを残してほしい」
厳しい環境を恐れるな
−若手社員に期待することは。
「若い人は他人のせいにせず、自分が頑張ってほしい。最初は言われた通りに真面目にやり、自ら進んで貢献してほしい。これが私の念願だ」
「一方、スマートフォンに依存する人が増え、考える力の衰えが懸念される。鍛えるには読書がいい。偏らず、いろいろな本を読んでみてほしい。最近、私は幕末史を読む。若い人が日本の大きな構造改革を成し遂げた、すごい時代だったとあらためて感じる」
−企業のビジネス変革には何が必要ですか。
「各企業が厳しい環境を恐れず挑戦すれば、それぞれの企業の中に変革できる人材、英雄が出てくると信じている。それには苦戦した方がよく、不況になった方がいいかもしれない。当社も何度もつぶれかけ、創業者以外にも、井植歳男さんや高橋荒太郎さんなど救世主が現れた」
日本の土俵で勝負を
−変革に向けて、経営陣などの若返りは必要でしょうか。
「大企業も含めた企業全般において、30代や40代の人が社長をやるような時代に早くなってほしい。それくらい変わっていかなければならない」
「私が社長に就任した00年、メールのできる携帯電話が登場して、コミュニケーションが大きく変わった。技術進化が人間社会と企業経営に極めて大きく影響した。だが、個人も組織も進化に対応できていなかった。この時、順応が早かったのは若い世代だ。この世代が力を発揮できる会社にしなければいけないと思った」
