アメリカの自動車メーカーとディーラーの間には、大きなギャップがあるようです。世界的エンジニアで米国在住の中島聡さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、電気自動車を売る気がないとすら思えてしまう自動車ディーラーの姿勢が明らかになった調査結果を紹介するとともに、電気自動車シフトにもたつくトヨタに対して苦言を呈しています。

私の目に止まった記事

● Car companies aren’t even trying to sell electric cars

どの自動車会社も電気自動車の時代が来ることは強く意識しており、実際にプラグイン・ハイブリッド車や電気自動車を売り始めてはいますが、実際に自動車を販売しているディーラーの行動とは大きなギャップがあるという話です。

Sierra Club(カルフォルニアの環境保全団体)が全米300のディーラーで調査したところ、ディーラーで働いているスタッフは電気自動車のことを理解しておらず、試乗しようとしても充電されていなかったり、連邦政府による税金クレジットについて説明できなかったり、という状況だったそうです。

私も、全く同じような経験をBMWのディーラーでしたことがありますが、その背景には、ガソリン車・ディーゼル車を売った方が利益率が高い(ディラーはサービスでも儲けることが出来る)、電気自動車へのシフトは出来るだけ遅らせたい(そもそも生産量が少ない)などの事情があります。

これがまさに、米国で「テスラの一人勝ち」を作り出している原因でもあり、こんな状態が後2年も続くことになったら、先を走るテスラとの差はとても大きなものになってしまいます。

それにしても、トヨタ自動車の動きは本当に遅くて心配になります。「電気自動車を作ろうと思えばいつでも作れる」ことは分かりますが、実際に消費者にとって魅力的な電気自動車、売れる電気自動車を作ることは簡単ではないと思います。充電ネットワークの充実も必要だし。

後から考えると、「ハイブリッドの成功が逆に仇になった」とか「水素自動車市場が思うように立ち上がらなかった」のが原因という事になるのでしょうが、ハイブリッドだけでは勝負できないことも、水素がダメなことも2年ぐらい前から明確だったので、その時点から本気で電気自動車の開発をしていれば、今頃市場に投入できているはずです。

私の目に止まった記事2

● This Dutch Startup Converts Heat Into Cold Via A Stirling Engine, And Could Just Save The Planet

スターリングエンジンという仕組みを使って、エネルギーをほとんど使わずに、熱交換をする仕組みをSound Energyという会社が開発したという報道です。

スターリングエンジンは、理論的には存在しうる熱機関の中で最も高い効率で熱エネルギーを仕事に変換できる可能性を持つ仕組みですが、装置が大きくなる、気密性が保てなくなる、などの理由で、実用的なものはこれまで作れていませんでした。

この会社の説明によると、まずは熱エネルギーをループ上のパイプの中の音エネルギーに変えるそうです。通常のエンジンやヒートポンプのように可動部分はなく、パイプの中にはアルゴンガスが詰まっているそうです。

表面的には似非科学のようにも思えるかも知れませんが、スターリングエンジンについては昔から興味があり、「誰かがこれを実用化してくれるに違いない」という期待を抱いていた私としては、是非とも実用化して欲しいという気持ちを込めて紹介します。

例えば、データセンターの排熱は、ファンを回すのにエネルギーが必要ですが(空冷の場合)、熱はエネルギーであり、外気との差がある限り、そのエネルギーを利用することは可能なはずです。スターリングエンジンは、まさにその「熱の差」を運動エネルギーに変換する仕組みなので、サーバーから発生する熱そのものをエネルギー源としてスターリングエンジンを動かすせば、余計なエネルギーを使わずに排熱が出来るはずなのです。

image by: KELENY / Shutterstock.com

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