PCは死んでいない? ゲーミングPCが救いの神に/猪口 真
PC業界の不振が叫ばれて久しい。かつて、「PC is dead」という言葉が出回るなど、すでに終わったとみる専門家は多かった。ところが、何十年かぶりに明るい話題が出ている。それはゲーミングPC市場だ。
近年、個人向けのゲームが複雑化高度化していく中で、ゲーム機は何度かのイノベーションを繰り返し、端末の多機能化とネットワーク化が進んできた。ゲームの端末機の変遷は激しく早い。これまでも様々な端末が出ては消えてきた。市場も10年ほど前に急拡大したものの、その後数年にわたって落ちこんだ。ところが再度iPhoneの登場によってモバイル端末によるゲームが活性化し、数々のゲーム提供会社が登場(当初はSNSをやっていた会社が次々とゲーム会社に転身したのは記憶に新しい)し、現在すでにそのピークも超え、拡大を続けている。
なんといっても、現在の隆盛はスマホによるところが大きく、現在の世界のゲーム市場でも半分以上をモバイル端末(タブレットを含む)と言われている。
ゲーム用PCが登場
そのなかで、現在、ゲーミングPCマーケットの伸びが大きくなっている。一部メーカーでは、以前からゲーミングPCマーケット向けに製品を提供してきたが、ここへきて、eスポーツの盛り上がりとともに俄然活況を帯びてきた。
ゲーミングPCとは、文字通りゲーム用に作られたPCで、CPUやGPU、メモリ、すべてにおいてハイスペックとなっており、ビジネスユースのPCが数万円から購入可能なのに対して、10万〜25万円はするハイスペックマシンだ。
PC自体の単価も高く、しかも次々にハイスペックを求める新作ゲームが登場するために、PCの寿命も短い。ビジネス用のPCであれば、7〜8年使う人はざらだが、ゲーミングPCの場合、2〜3年だろう。
日本のゲーム人口は7000万人ともいわれており、3人に2人はゲーマーというわけだ。全員が何らかの端末を持っているというわけではないだろうが、全体の約2割程度と言われるゲーミングPCユーザーの数を考えれば、とてつもなく大きな市場だと言えるだろう。海外のPCメーカーも、非常に積極的だ。
ここ数年大きな伸びを見せているゲーミングPC市場だが、市場を引っ張るのは、間違いなくeスポーツだろう。日本の競技人口は約390万人、観戦、視聴者も160万人程度いると言われている。(ファミ通ゲーム白書による)
この状況であれば、PCメーカーは迷わずゲーミングPC市場に参入するだろう。高価格で買い替えも頻繁なのだから。
盛り上がる「eスポーツ」
「eスポーツ」は、一般社団法人「日本eスポーツ連合(JeSU)」も設立され、もはや完全に市民権を得ている。eスポーツといってもほかのゲームと何が違うのか、ゲームではなくスポーツなのか、という疑問も湧くが、この団体によれば、「eスポーツ」として公認されるには、以下の条件をクリアする必要があるようだ。
eスポーツ公認条件
1. ゲーム内容に競技性が含まれること(競技性)。
2. ゲームとして3か月以上の運営・販売実績があること(稼働実績)。
3. 今後もeスポーツとして大会を運営する予定があること(大会の継続)。
4. e スポーツとしての大会の興行性が認められること(興行性)。
12月16日には、千葉市でeスポーツの世界大会が開催され、なんと優勝した選手は、賞金約1億1千万円を手にしたという。もちろん、これまででの国内最高賞金額であり、これからも人気は高まる一方だろう。
こうしたイベント性の高まりを背景に、SteamのようなPCゲーム配信のプラットフォーマーが日本にも進出し、日本語でできるゲームタイトルも増えてきた。当然新しいゲームはグラフィックもプログラムも高度化しているため、PCが中心になってきており、端末の選択もゲーミングPCが主体となっていくことだろう。
逆に言えば、ゲームによってデバイスを選択するような世界が進むということは、マルチプラットフォーム化が進み、状況によってはスマホであったり、ゲーム端末であったり、PCであったりと、同じゲームを様々な端末で遊ぶ世界になる。
こうした概念は、PC環境では当たり前の世界であり、PCが中心になれば、ますますマルチプラットフォーム化進展し、ゲーム市場の拡大には大きく寄与するだろう。
だから、最初は手軽な端末でeスポーツに触れ、同じプラットフォーム上にある、より高度なゲームに参加する、という流れもできてくるのだろう。
さらに、プレイヤーだけではなく、観戦者も含めたコミュニティが発展していけば、また独自のネットワークがつくられることになり、より一層のすそ野の拡大につながっていくとみられる。