ケフィア事業振興会の被害者語る「亡くなった妻のお金を返して」

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「私がだまされた1,100万円は、5年前に乳がんで亡くなった妻とコツコツと貯めた老後資金でした。教員をしていた妻の退職金も含まれているので、本当に申し訳なくて……。今回の件は、2人の子どもにはとても話せません」

愛知県の笹村浩二さん(77・仮名)は、そう語ると天を仰いだ。

負債1053億円、債権者数約3万4,000人――。3日に破産を申し立てた「ケフィア事業振興会」は、干し柿やヨーグルトなどの加工食品のオーナーになれば、約半年で8〜10%の利息を支払うとして会員を募集。今回の破綻で、少なくとも340億円あまりの投資金が戻ってこない事態になっている。

被害対策弁護団のひとりで、リンク総合法律事務所の中森麻由子弁護士が解説する。

「仕組みは複雑ですが、典型的な会員制オーナー商法です。投資した人の8割は60歳以上の高齢者で、そのほとんどが“投資に慣れていない女性”という印象をもちました。5年以上にわたって金利が支払われてきたこともあり、銀行に預けているという感覚で信用していたようです。老後のために貯めておいたお金を投資した方が多く、被害額が1億円を超えた例も。みなさん長年にわたって出資してきたので、被害額の平均は100万円を超えていると思われます」

’11年にはじまったケフィア事業振興会のオーナー制度。昨年11月から、会員への配当や元本の支払いが遅れ、訴訟問題に発展した。前出の笹村さんが続ける。

「亡くなった妻が、6年前に新聞広告を見て、通販で干し柿を買ったことが始まりでした。その後、パンフレットが届き、1口5万円で干し柿のオーナーになれば、半年で5%の金利がつくという案内が書かれていました。金利の高さに戸惑いがありましたが、立派な社屋があったし、事業も手広くやっていた。さらに届けられる商品が思いのほか、おいしかったこともあって、軽い気持ちで2口10万円を申し込みました。その半年後には利息分が足されて10万2,500円が振り込まれたので、完全に信用してしまいました。その後も20万円、50万円と出資額を増やし、それにつれてプレミアムやゴールド会員に。金利も8〜10%に上がりました。妻が亡くなり、“自分を見失っていた”のかもしれません」

メープルシロップやジュースなど、18種類の商品のオーナーになったという笹村さんはこう嘆く。

「太陽光やバイオマスなどの発電の“サポート制度”にも出資しました。今にして思えば、投資ではあるけど、健康をうたった食品や社会貢献など、自分がいいことをしていると錯覚してしまったのかもしれません。昨年11月ごろにシステム故障で、支払いが遅れていると連絡があったきり……。私と妻の1,000万円を返してください」

同社の鏑木秀彌社長は、いまだ公の場に姿を現していない。