日本IBMが本社内に設けた予報センター

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 気象予報の精度向上や企業におけるデータ活用機運の高まりなどを背景に、気象データをビジネスに生かす動きが多様な業種で広がりつつある。日本気象協会(東京都豊島区)やウェザーニューズなどの民間気象会社はそうした気象ビジネス市場の拡大を図る。一方、市場の拡大期を狙って新たなプレイヤーが来襲した。IT業界の巨人「IBM」だ。人工知能(AI)ブームのけん引役となった「ワトソン」を武器に顧客の獲得を狙う。迎え撃つ民間気象会社は新たな競合企業が持つ圧倒的なブランド力を警戒する。

 東京・日本橋の日本IBM本社。その8階の一室には複数のモニターが並び、気象状況などを映し出す。「アジア・太平洋気象予報センター」と呼ばれるその部屋には、気象予報士が24時間365日常駐し、気象モデルが算出した予測に補正をかけて予報を配信する。500メートルメッシュで「今後15日間における1時間単位の気象予報」などを顧客企業に発信する。

 日本IBMの加藤陽一ザ・ウェザーカンパニージャパン・リーダーは「我々は世界の160以上の気象モデルを学習させたAIを活用することで高精度に気象を予測できる。他の民間気象会社にはない仕組みだ」と説明する。

 米IBMは2016年1月に気象情報大手の米ザ・ウェザー・カンパニーを買収した。それを受け日本IBMは企業向け気象予報サービスを17年3月に始めた。気象ビジネスに参入した理由について加藤リーダーは「IBMはほぼすべての業種を顧客に持ち、事業を支援している。その中で気象はあらゆる事業に影響を与えており事業の意志決定に気象情報は不可欠だからだ」と述べる。

 ただ、日本IBMの狙いは単純に気象予報データを提供するだけではない。気象予報データと顧客が保有する多様な業務データを掛け合わせて、顧客の事業と気象との相関を解析して事業の成長などに寄与する気づきを与える。例えば、小売業界における商品需要の予測や航空業界における安全と効率を両立する最適な運航ルートの算出などが想定される。その解析にIBMが持つワトソンが生かされるというわけだ。

 加藤リーダーは「気象ビジネスにおいて我々は後発だが、ワトソンなどの経営資源を活用することで、他の民間気象会社にはできないサービスが提供できる」と強調する。一方で気象業界の関係者からは「気象ビジネスへの参入は、むしろワトソンを売り込む手段ではないか」とも指摘される。

 日本IBMの気象ビジネス参入に対し、民間気象会社からは「気象ビジネス市場は長年300億円前後で推移しており、大きく成長できなかった。市場を育てる意味で大手の参入は心強い」と歓迎の声が挙がる。ただ「競合する場面は当然出てくる。その際に『IBM』というブランドは脅威だ」と本音も漏れる。今後拡大が見込まれる市場だが、顧客獲得競争は激しくなりそうだ。

広告業界でプロジェクト動く
 こうした中、日本IBMの気象データを活用したプロジェクトが広告業界で動き出した。電通テック(東京都千代田区)が日本IBMと連携し、気象変化による顧客の心理状況を捉えて広告を配信できる顧客情報管理(CRM)システムを開発した。食品や飲料、旅行、外食、化粧品などを扱う企業を対象に10月をメドに先行運用を始める。

 電通テックのプロモーション・コンサルティング1部に所属する田中陽部長は日本IBMの気象データの活用を決めた背景について「(気象データに加えて)ワトソンなどの活用によりCRMシステムを高度化できる期待があったから」と打ち明ける。

 同システムでは過去の気象データとツイッターなどSNSのデータから気象の変化と生活者の心理変容の相関を解析する。その心理変容に応じた広告活動を顧客の住所やメールアドレスなどと共に事前に設定する。心理変容に応じた広告活動のイメージとしては、外食チェーンの場合「気温上昇時には塩分・ミネラルの補給方法として『冷製スープ』のクーポンを展開する」などだ。