水素サプライチェーン本格化、日本の技術は世界をけん引できるか
豪政府の補助金を受け、川崎重工業やJパワー(電源開発)、岩谷産業、丸紅、豪AGLエナジーの5社がコンソーシアムを組み、豪州の褐炭から製造された水素を液化し、日本へ輸送する供給網の構築で実証事業に取り組む。
二酸化炭素分離回収・貯留(CCS)技術と組み合わせており、CO2(二酸化炭素)フリーの水素という点も特徴の一つだ。
豪ビクトリア州の褐炭可採埋蔵量は推計約2000億トン。日本の総発電量の約240年分に相当する。ただ、褐炭には多くの水分が含まれ、重量当たりのカロリーが低い。輸送に向かない上に自然発火するため、使途は限定的だった。
中核メンバーの川重技術開発本部副本部長兼水素チェーン開発センター長の原田英一執行役員は「褐炭を有効活用し、クリーンエネルギーの源となる水素を製造することで両国に利益をもたらす」と意義を強調する。20年代半ばまでに商用化を見据えた実証試験に乗り出す計画だ。
日本政府は水素を再生可能エネルギーと並ぶ新たなエネルギーの選択肢として位置付ける。最大の課題は低コスト化。褐炭など安価な原料から大量に水素を製造・輸送するためのサプライチェーン構築が「供給」サイドの取り組みと、FCVや水素発電など「利用」サイドの技術開発を強力に後押しし、50年にもガソリンや液化天然ガス(LNG)と同程度のコストを実現するのが水素基本戦略の柱だ。
水素供給網では千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船の4社によるアプローチも有力だ。ブルネイで調達した未利用資源由来の水素を有機ケミカルハイドライド法により消費地まで輸送し、火力発電の燃料として利用する。
8月から実証に必要なプラントの建設が始まる予定だ。4月下旬、ブルネイで下準備が始まった。天然ガスの液化プラントで発生する未利用のガスの供給を受けながら水素を製造し、トルエンと化学反応させることで液体化して貯蔵し、川崎市臨海部に輸送する。
実証では最大年210トンの水素を供給する。これはFCV約4万台に充填できる量に相当する。液体の水素を気体に戻し、昭和シェル石油傘下の東亜石油(川崎市川崎区)の京浜製油所で火力発電の燃料に利用する。
技術の肝は千代田化工が持つ水素を気体化する技術。水素とトルエンを分離する自社開発の触媒がカギを握る。トルエンを船に乗せて水素の調達地で再利用することにつなげる。循環型の仕組みにより、水素を安定的に供給できるようにする。石油用のタンカーやタンクなどを使える利点も大きい。
4社は17年夏から「次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合」を運営。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)と日本政策投資銀行とも研究面で協力関係を築く。
「利用」サイドの動きも本格化する。ポイントの一つがFCV。昨今、中国の電気自動車(EV)や蓄電池政策に加え、英国やフランスのガソリン車禁止などでEVシフトに注目が集まるが、「その背景には日本が先行するFCVへのけん制との声が一部にある」(経産省)。
