最悪の結末となった。兵庫県三田市に住む27歳女性が被害に遭ったバラバラ殺人事件は、改めて民泊施設の闇の一端をさらした。

 女性は2月15日に同市の勤務先を出た後に行方不明となり、親族の届けを受けた県警は翌日、防犯カメラの映像などから大阪市東成区の民泊マンションに外国人と入っていたことを突き止めた。22日には、米国籍でニューヨーク在住のバイラクタル・エフゲニー・バシリエビチ容疑者(26)を奈良県内の路上で確保し、監禁容疑で逮捕。24日〜25日にかけ、各所で解体された女性の遺体の一部が次々に発見されたのだった。
 「バイラクタル容疑者の供述通り、24日に西成区の民泊マンションの部屋で頭部が、25日に大阪府島本町の山中で着衣のない胴体と両腕、京都市山科区の山林で両脚が相次いで見つかり、DNA鑑定で行方不明だった女性であることが判明。死体遺棄と死体損壊の容疑で28日、バイラクタル容疑者を再逮捕した。2人はスマートフォンの“マッチングアプリ”で知り合い、女性が部屋に連れ込まれたと見られている」(捜査関係者)

 マッチングアプリは会員制のSNSで、GPSを使いアプリを使用している人を検索し、落ち合うというもの。2人はこのアプリで連絡を取り合った上で、写真共有アプリのインスタグラムを使い、やり取りをしていたという。
 「バイラクタル容疑者は昨年、少なくとも3回来日し、香港などアジア方面から日本へ入国していることが分かっている。今回は韓国の釜山から1月31日に関西空港へ着き、2月12日あたりから東成区のマンションの部屋を利用していた。容疑者は事件発覚前、このマンションに複数人の別の女性を連れ込んでおり、結果的に無事ではあるが、以前から観光ビザを使って入国、日本人女性を引っ掛けていた可能性が高い」(前出・捜査関係者)

 女性の頭部が発見された西成区の民泊施設は、関西空港から南海空港線で約50分、新今宮駅から徒歩5分の場所に位置し、日雇い労働者の街として有名な、あいりん地区とは目と鼻の先にある。
 近隣住民の話。
 「(現場となった西成区のマンションは)外国人は出入りしてたけど、そんなんこの辺りでは当たり前のことやし、特に関心を持っては見てへんかった。ただ、事件が表沙汰になる何日か前、異臭がするんやないかという話になって、警察に相談するかどうかを言ってたところやったんですわ」

 外国人観光客が急増する関西、とりわけ大阪府では宿泊施設不足が深刻化。さらには'25年の万博・カジノ誘致を見据え、'13年の国家戦略特別区域法の成立後、府は民泊を推進する条例を成立させ、規制緩和に乗り出した。
 民泊事情に詳しい西成区のボランティアは、こう話す。
 「ただし大阪の場合、民泊施設とはいえマンション等の空き物件や一般の住居を有効利用したものから、ラブホテルを転用したものまで、本当に様々なものがあります。西成区あたりで一番多いのは、やはり日雇い労働者を相手にした簡易宿泊所を改装したもので、最大の特徴は、破格の利用料金。西成区であれば、一泊1000円の部屋もざらにあります。ただ、素泊まりで集客は看板とネットだけ。部屋もうなぎの寝床で、衛生状態は決していいとは言えません」

 そうした民泊施設が増える西成区などではいま、建設工事の合理化などにより日雇い労働者の宿泊者が減る一方で、関西空港からのアクセスのよさから欧米系のバックパッカーが増えているという。それに乗じて急増しているのが、旅館業法に基づく営業許可を得ていないヤミ民泊だ。今回、バイラクタル容疑者が女性を連れ込んだ東成区のマンションと、頭部が発見された西成区のマンションの宿泊部屋も、無許可のヤミ民泊部屋だったことが分かっている。