米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加国は8日、南米チリの首都サンティアゴで新協定「TPP11」に署名した。協定文が確定し、各国は国内の承認手続きを本格化させ、早期の発効を目指す。各国の手続きは順調に進み、発効は当初予定していた「2019年の早い時期」から「年内」に早まる可能性も浮上。日本は重要品目も含めた農産物の大幅な市場開放を迎える

 日本からは茂木敏充TPP担当相が出席した。公表した閣僚声明では「将来の広い経済統合のための高い水準を促進する基盤を創出する」との声明を発表し、離脱した米国を含め、新規加盟に関心を示す国を歓迎する姿勢を示した。

 だが、米国はTPPの復帰は再交渉が前提との立場。再交渉となれば自動車や農業分野などで、大幅な市場開放を求めてくるのは必至だ。交渉を主導する日本には、安易な再交渉に応じないよう、毅然(きぜん)とした交渉姿勢が求められる。

 署名式に先立って開いた閣僚会合では、協定の早期発効に向けて取り組むことを確認。発効後の協定の運用や、新規加盟国の扱いについても議論したとみられる。署名式後の記者会見で茂木担当相は「発効に向け、日本が率先して機運を高めたい」と述べ、発効に向けて引き続き主導的な役割を果たす意向を示した。

 6カ国が国内手続きを終えた60日後に発効する。日本政府は3月中に今国会に協定承認案と関連法案を提出し、6月までの成立を目指す。共同会見では、18年中の発効を見通す国が相次いだ。

 正式名称は「CPTPP(包括的および先進的なTPP)」。米国離脱前の元の協定と比べ、関税分野は修正せず、同じ内容になる。一方、ルール分野では、米国が主張した知的財産分野など22項目の効力を凍結する。日本が合意した米の無税輸入枠など、各国が米国と約束した内容は協定から除かれる。

 日本は農林水産物の82%の関税を撤廃。重要品目では、牛肉関税の9%への削減や、バター・脱脂粉乳など最大7万トンの低関税輸入枠などを受け入れる。米国が復帰せず元の協定の発効が見込まれない場合に、輸入枠縮小などの再協議ができる規定を盛り込んだ。

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