後半戦に本塁打を量産した西武・山川=メットライフドーム

写真拡大

◆ ルーキー・岩見雅紀の驚異的“本塁打率”

 「新人王をとりたい」。去る11月22日に行われた楽天の新入団選手発表会見で、ドラフト2位の岩見雅紀(楽天)が力強く宣言した。そう甘くはないのがプロの世界だが、それでも岩見には期待したくなる。東京六大学野球リーグでは歴代3位となる通算21本塁打をマーク。しかも、1本塁打に必要とする打数を表す“本塁打率(打数÷本塁打)”が常識では考えられないような数字だからだ。

 岩見の大学通算成績は、61試合に出場して178打数52安打、21本塁打。打率こそ3割を下回る.292だが、安打のうち4割以上が本塁打という数字を残している。まさに「当たれば本塁打」という打者というわけだ。そして、その本塁打率は8.48という驚異的なもの。

 この数字がいかにずば抜けているかは、岩見を上回る歴代1位の23本塁打を放った高橋由伸(慶大/現巨人監督)、22本塁打を記録した田淵幸一(法大/元阪神・西武)と比較すれば明白だろう。高橋の大学時代の通算成績は366打数23本塁打で本塁打率は15.91。田淵は342打数22本塁打で本塁打率15.55。

 岩見は高橋、田淵の倍近い確率で本塁打を放っていたということになる。早くに中心選手として活躍した高橋や田淵と異なり、岩見は大学3年時からレギュラーに定着して一気に本塁打を量産した遅咲きの選手。大学4年時の秋季リーグでは43打数12安打7本塁打、本塁打率6.14という数字を残している。つまり、プロ入り直前の段階では、高橋と田淵をはるかにしのぐ長距離打者に成長していると言えるかもしれない。

◆ 今季の本塁打率トップは山川穂高の10.52

 では、2018年から岩見が挑戦するプロの世界の本塁打率はどうなのか。今季、両リーグで20本塁打以上を記録した選手の本塁打率ランキングを見てみよう。

【2017年本塁打率ランキング】※20本塁打以上

1位(10.52):山川穂高(西武)     242打数23本塁打

2位(12.74):エルドレッド(広島)   344打数27本塁打

3位(13.40):ゲレーロ(中日)     469打数35本塁打

4位(13.66):デスパイネ(ソフトバンク)478打数35本塁打

5位(13.91):バレンティン(ヤクルト) 445打数32本塁打

6位(14.15):マレーロ(オリックス)  283打数20本塁打

7位(14.45):柳田悠岐(ソフトバンク) 448打数31本塁打

8位(15.00):ロメロ(オリックス)   390打数26本塁打

9位(15.37):中村剛也(西武)     415打数27本塁打

10位(15.72):レアード(日本ハム)   503打数32本塁打

 当然ながら、パワーヒッターがずらりと名を連ねる。実に7人が助っ人外国人だ。そして、彼らを押しのけてトップの座に就いたのは、球宴後の後半戦だけで19本塁打を記録した山川穂高(西武)。10.52打数に1本塁打という本塁打率は、2位・エルドレッド(広島)の12.74を大きく引き離す数字だ。シーズン終盤にチームの4番に定着した山川は、今オフの第1回アジアプロ野球チャンピオンシップでも、U-24ながら全試合で日本代表の4番を務めるまでに成長した。

 山川のほかにランクインした日本人選手は柳田悠岐(ソフトバンク/本塁打率14.45)と中村剛也(西武/15.37)。さらに、ランク外では11位・T―岡田(オリックス/16.26)、12位・鈴木誠也(広島/16.81)、15位・筒香嘉智(DeNA/17.96)と、各球団を代表するスラッガーが続く。

 本塁打は野球観戦の大きな楽しみのひとつ。特に現地観戦の場合は本塁打が飛び出すかどうかで観客の満足度は大きく変わる。わざわざ球場を訪れて本塁打を見逃すような不運を招かないためにも、彼らの打席から目を離してはいけない。

文=清家茂樹(せいけ・しげき)