貴乃花親方(写真:日刊スポーツ/アフロ)

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一向に解決への道筋が見えない大相撲暴行問題。こじれにこじれた末に日本相撲協会は、いつしか被害者である貴ノ岩・貴乃花親方へと矛を向け始めています。

16日には、春日野広報部長(元関脇・栃乃和歌)から、冬巡業不参加の貴ノ岩が診断書を提出していないということに対して、処分も視野に入れているということが報じられました。春日野広報部長からは「職務放棄だね」という発言も出たと言います。

なるほど、巡業を休むにあたり無断欠勤はダメですよ、というのは雇用者側の意見としては当然でしょう。しかし、貴ノ岩は左前頭部裂傷など頭部への怪我、それもカラオケリモコンなどによるとされる「暴行」で受けた怪我によって休んでいるのです。

容体について行きつ戻りつの部分があれば「症状固定」という安定期を待つことも必要でしょう。報道陣が詰めかけている状況や、本人の精神状態を考えれば、診断書をもらうために病院に行くことそのものが、回復への逆効果となる可能性も高い。そもそも、そうした怪我で休んでいることは協会側も先刻承知のはず。休むこと自体は貴乃花親方を通じて連絡がされているわけですから、診断書があろうがなかろうが無断欠勤にはあたらないでしょう。

ここで杓子定規に診断書を求めることが、本当に角界にとって正しいことなのか。ルールはそうであっても、今やっているのは「暴行事件の被害者に対して脅しをかけている」ことにほかなりません。「謎の暴漢に誘拐された力士」がいて、そのせいで巡業に参加できなかったとしたとき、犯人からの電話に「身代金の交渉を始める前に、休むにあたっての診断書を出せ」とでも応じるのでしょうか。出せない事情があるならば、柔軟に対応すべきでしょう。協会の内規はともかく、一般社会において「休むときには診断書が必要」などという決まりはないのですから。

それにルール上の問題で言えば、貴ノ岩にはひとつも非はなく、処分を加えるというのはまったくの筋違いです。

何故なら、18日時点で巡業を取り仕切っている責任者は、巡業部長である貴乃花親方だからです。貴ノ岩は、「巡業部長である貴乃花親方」に対して症状を報告し、「巡業部長である貴乃花親方」によってヨシとされているのです。あえて職務怠慢を問うならば、それは協会内での周知を怠った貴乃花親方のみ。貴ノ岩に矛を向ける理由はひとつもありません。「巡業部長に冬巡業を休むことを報告して受理された」ときに、「もしかしてほかの人にも言っておいたほうがいいかも?」なんて思うワケがないのです。

本場所では診断書を提出した貴乃花親方が、冬巡業では診断書を提出しないのも、巡業のことであれば自分が責任を被れると踏んでいるからでしょう。戦いは徹底的にやるが、弟子を守る気持ちは忘れない。貴乃花親方なりの見極めというものが、診断書を提出する・しないの使い分けにも感じられますね。

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