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 交流戦も苦戦、成績不振の責任を取って、堤辰佳ゼネラルマネージャー(以下=GM)が退任した。その後任には“元プレーヤー”の鹿取義隆氏(60)が選ばれたが、高橋由伸監督(42)の表情は晴れない。

 「歴代の巨人GMは『サラリーマンGM』でした。堤氏は慶應大学野球部のOBで高橋監督も絶大な信頼を寄せていました。でも、プロ野球経験者を望む声がフロント内にも出ていました。高橋監督は就任2年目なので彼を庇う声も多い。ペナント低迷の責任は誰かが取らなければならないし、そうなると、大型補強を強行した堤氏が…」(球界関係者)

 巨人は83年に及ぶ球団史のなかで、ワーストとなる12連敗も喫した(6月7日)。プロ野球記録は98年、千葉ロッテの18連敗。2ケタ連敗を記録したチームはほかにもある。連敗は「13」でストップさせたが、ここまで低迷したチームをどう建て直すのか、それが新GMの使命となる。

 90年以降、大型連敗を喫したチームは、以下の通り。

98年 千葉ロッテ=18連敗
08年 現DeNA=14連敗
99年 広島 =13連敗
15年 埼玉西武=13連敗
98年 阪神 =12連敗
99年 阪神 =12連敗
12年 オリックス=12連敗
05年 東北楽天=11連敗(2度)

 2ケタ連敗を喫した後、そのチームが優勝するまで何年を費やしたか…。

 千葉ロッテはシーズン優勝こそ逃したが、日本一に輝いたのは、05年。7季を要したわけだ。広島は2016年までの長いトンネルを経験した。阪神が暗黒時代を抜け出したのは、03年。東北楽天はチーム創設から優勝まで「3251日」を費やした。

 鹿取GMは今後、チームをどんな戦力補強し、どうやってチームを再建するのかを高橋監督と話し合わなければならない。しかし、GMが交代しても、当面の巨人は「沈んだまま」と見る声も多く聞かれた。その理由は、高橋采配にある。

 「高橋監督は『動かない指揮官』です。失敗したときのリスクを恐れるというか、走者が出たら、エンドランを仕掛けるようなことはほとんどありません」(前出・同)

 その一例が『盗塁』である。

 前任者・原辰徳氏のラストイヤーとなった15年、チーム総盗塁数は「99」。だが、高橋監督になって、「62」まで激減した。原監督は僅差の場面でもノーアウトで走者を出すと、代走を送り、盗塁を仕掛けた。前任者は失敗よりも、成功したときを考えていた。高橋采配の全てを否定するつもりはないが、今の戦力では今季中の首位戦線復帰は難しいだろう。

 また、高橋監督はスタメンオーダーこそいじるが、走者を置いた場面では単独スチールのサインを滅多に出さない。結果、相手チームのバッテリーに「巨人は走ってこないから」とナメられ、たとえ代打が投入されても、バッターとの「一対一」の単純勝負になってしまうのだ。

 こうした“采配の未熟さ”を補うのが、コーチ陣のはず。一軍コーチの顔ぶれを見ると、指導者経験の少ない40代も目立つ。二軍担当の年長コーチとの入れ替えも妙案だが、こんな声も聞かれた。

 「コーチ陣の入れ替えですが、巨人に限らず、それを最終判断するのは監督です。連敗中、コーチ陣の入れ替えが進言されていましたが、高橋監督は受け付けませんでした」(ベテラン記者)

 連敗中、高橋監督は「(敗戦結果を)受け止めるしかない」とも語ってきた。責任感の強い人柄がそう言わせた。コーチ陣を庇い、敗戦の責任を自分一人で抱え込むつもりでいたのだが、フロントは待てなかった。その結果が、もっとも信頼する先輩の“更迭”となってしまった。鹿取GMが最初に着手すべきは、戦力補強ではなく、高橋監督の性格を把握することではないだろうか。

(スポーツライター・飯山満)

※写真・高橋由伸監督(42)