新型iPad Pro 10.5実機レビュー もう「miniがいい」と言えなくなったワケ
例年にない"ハード豊作"となったAppleの開発者会議"WWDC17"。すでにハンズオン速報で実機の印象をお伝えしましたが、6月13日に発売を控えたiPad Pro 10.5インチモデルに、もう少し真正面から触れる機会がありましたのでレビューをお届けします。



なお、ハンズオン会場にあった実機はiOS 11のデモを兼ねていましたが、試用したのは現行OS(iOS 10.3.2)を搭載したものです。


▲コチラはハンズオン会場のiPad Pro 10.5インチ。秋にリリースされるiOS 11は、新iPad Proの機能・性能をフル活用すべく設計されています。ところどころWWDCの展示機を混ぜつつのレポートとなりますことをご了承ください。

まず、ありきたりではありますが開封の儀式を厳かに執り行なわさせていただきたく思います。

開封の儀


▲例によって原寸大で本体がプリントされている化粧箱。スペースグレイの512GBモデル、Apple SIM内蔵のセルラー版。いわゆる最上位構成なので値段は11万7800円(税別)になりますが、最小構成は6万9800円(税別) 〜です。

▲iPhone然りですが、ベゼルが黒いモデルは液晶とのツライチ感(一体感)がバツグンですね。


▲付属品はほぼ従来どおり。本体側の機能向上によりUSB3.0による高速充電・転送が可能になっているとAppleでは説明しています。ただ、付属のLightningケーブルがUSB2.0なので、別途Type-C Lightningケーブル(MFiライセンス品はなく、Apple純正で2800円〜)を使う必要があります。

▲Touch IDは第2世代のモノを搭載。ホームボタンとして、ちゃんと押し込めるタイプです。3D TouchはあくまでiPhone向けということなのでしょう。

▲セルラー版のアンテナ周りは9.7インチモデルと同じライン状のデザインに。12.9インチもこのデザインに変更になっています。左上の隅にちゃんとイヤホンジャックも搭載。ジャック無しもiPhone専売特許のようですね。もちろん、Proシリーズならではの計4スピーカーによるステレオ仕様となっています。


▲セルラー版は右側面下部にnano SIMスロットを備えています。

セルラー版も設定でモバイル通信をオフにしておけば、画面上に「SIMなし」と表示されることなく、Wi-Fi版同様に使えました。Apple SIMが内蔵されていることを考えると、SIMを差さずに使うつもりの人へも、やはりコチラ(セルラー版)をオススメしたくなります。

参考記事:iPad ProのApple SIMが便利(旅人目線のデジタルレポ)


▲カラーバリエーションは、ほかにシルバー、ゴールド、ローズゴールドがあります(9.7インチと同じバリエーション)。写真はWi-Fi版。

▲ちなみに12.9インチにはローズゴールドがありません。写真はシルバー、ゴールドのWi-Fi版。

質感含む外装の完成度は、安定のAppleクオリティーといった感じですね。

新Proの位置付け

製品発表時に、前モデル(iPad Pro 9.7インチ)から向上したポイントがいくつか挙げられました。9.7インチのProは2016年4月発売ですが、この10.5インチでリプレースされるため、Appleの製品サイトから姿を消しています(無印の9.7インチは継続)。現状のラインアップは以下の通りとなっています。


iPad mini 4は2015年9月発売で2017年6月現在も現役。無印iPadも原型はもっと昔ですから、MacBook Air然り「飛躍的進化の見込みは薄いが、ラインアップから外さないモデル」というものがAppleには確実に存在していますね。

9.7インチProから乗り換える?

iPad Pro 9.7インチのユーザーが10.5インチに買い換える理由から考えてみます。


▲9.7インチから10.5インチへ画面は大きくなりましたが、表面積はわずか7%しか増していません。

詳しい違いは先に掲出した新旧iPad Pro仕様比較をご覧いただくとして、ザッと挙げるとCPU処理速度の向上、解像度の向上、リフレッシュレートが倍増、ストレージ512GBモデルの追加、カメラ性能の向上、細かいところでは画面輝度が20%アップしたりしています。

なかでも液晶のリフレッシュレートが倍の120Hzになった点をAppleは強くアピールしています。実際、タッチに対する追従性は非常に高くなっており、CPUの向上以上に体感速度に影響していることがわかります。動画を撮っても新iPad Proで再生していただかない限り違いをお伝えできないのが心苦しいのですが、ウェブサイトなどを表示してスクロールした際、まったく引っかかりがないどころか、動いている文字すら注視すれば認識できるようになりました。また、Apple Pencilを用いた際のサンプリングレートも2倍に跳ね上がっています。



ここまで表示周りが充実するとバッテリー消費が心配になりますが、リフレッシュレートは24Hz〜120Hzの可変式となっており、静的コンテンツと動的コンテンツでリアルタイムに変動、無駄なバッテリー消費を防いでいるため、ほかのiPadシリーズと変わらぬ十分な駆動時間を保っています。USB3.0対応で充電時間が短縮されたことを考えると、実用性は向上したと言えるでしょう。

また、新たに用意された日本語JIS配列のキーボード(税別1万7800円)が使いたい人は、10.5インチか12.9インチのiPad Proを選ぶことになります。


▲Smart KeyboardはJIS配列版が選択可能になりました。

......と書きつつ、9.7インチProでも10.5ならび12.9インチ用のSmart Keyboardは使おうと思えば使えるようです。

参考記事:iPad Pro用Smart Keyboard(JIS)& Apple純正アクセサリを試す

▲キーボード自体はたいへん打ちやすいですが、これさえあればPCいらず......とは筆者の場合、まだいきません。秋に提供されるiOS 11に期待!

とはいえ、iPad Pro 9.7インチの製品寿命は(無印より断然高性能ですし)まだまだ長いハズ。今から買う人は売れ残りのiPad Pro 9.7インチが激安ということでもないでしょうから(Apple製品は中古でも売値が落ちにくい)、Proなら10.5ないし12.9インチのコスパもよい512GB版を個人的にはプッシュします。

問題はmini愛好家

問題は筆者を含め、身近にも多いのですが、iPad miniのサイズを好んで愛用しているユーザーですね。先ほども書きましたが「飛躍的進化の見込みは薄いが、ラインアップから外さないモデル」入りしているので、アップグレードがあったとしてもMacBook Air的なカンジ(CPUちょっと上げるとか)しか今後、望めそうにありません......。


▲10.5インチのiPad Proと7.9インチのiPad mini 4。

解像度は10.5インチが2224×1668ドットで7.9インチ(mini)が2048×1536ドット。ppiはそれぞれ264、326なので、表示のきめ細やかさはminiのほうが高かったりしますが、それを認識できるほどに人類の目は進化しておりません。単純に表示(文字など)はminiのほうが小さくなるので、お年ごろの人は見えにくいかもしれません。ProMotion、P3、True Toneといった技術がmini(と無印)には非採用なので、画質はProに軍配が上がります。表示自体も、Proのほうが"より手前にある"ように見えます。miniはペン使えないので問題にならないですが、この"画面の手前にある感"は、技術的には非常に高度なもので、Apple Pencilの使いやすさにも一役買っています。



iPad mini 4本体と、さらに比較してみます。

▲乗せるとこのような感じ。Pro 10.5インチのほうが画面占有率が高いので、いわゆる"今どきの子"に見えますね。


▲厚みはまったく同じで、共に6.1ミリ。iPhoneより薄いんです。

どうしてもminiのサイズが好きだったので、まだまだ頑張れるスペックだし......と、筆者もその理由で9.7(Proも無印も)をスキップしてきました。しかし、こうして双方に触れてみると、性能差があまりに歴然としているので、サイズには変えられない魅力に心が揺り動かされます。

まず、なんといっても動作の快適さ。miniだけを使っていたときは気にならなかった、一瞬引っかかるような感じが、Pro 10.5体験ののち気になるようになってしまった......。たとえばYouTubeアプリで縦画面から横画面に持ち替えた際の表示の切り替えなど、Proだとスッといくのが、miniだと若干ですがカクカクっとした動きになります。ほか、アプリの起動やタブの切り替えなどもコンマ数秒の違いでしょうけれど、体感ではそれなりの差となって現われます。

それから、スピーカーの音量。これは比較になりません。Proのほうが倍では済まないほど大きい(12.9インチは10.5よりさらに大きい)。YouTubeの話ばかりになりますが、音量が小さいコンテンツだとボリュームを最大にしても聞き取りにくかったりしますよね? その問題がないほどにまで大きくできます。



4スピーカーで高音、低音をわけてのステレオ再生なので、外部スピーカーをつながなくても十分な音質で楽しめ、ゲームなども大迫力。低音も本体を持つ手にズンズン響くほどです。リビングのTVを見ながら手元のスマホ、タブレットで別なコンテンツを楽しむ人も多いそうで(集中しなさいって)やってみましたが、どちらのスピーカーから出ている音がわからなくなることすらありました。大型TVと比べても遜色のない音量、音質が小さなボディーから鳴っているからです。

iOS 11を前提に考える"次に買うべきiPad"

iOS 11の新機能は100以上とアナウンスされていますが、とりわけiPadに対しては2010年初代iPadが出て以降、最大のリリースと言われています。とくにiPad Proを活用するためにデザインされており、機械学習やARサポートもCPU(GPU)、カメラの性能の向上と結びついています。カメラはドキュメントスキャナーとしても使えるので、Apple Pencilとの親和性もバッチリです。

関連記事:iOS 11はiPad用機能もさらに強化

iOS 11のホーム画面には"Dock"が追加されています。Macユーザーにはお馴染みのもので、単純にiPadに移植しただけと思われがちですが、アプリランチャーというよりは連携性を意識したものです(よって連携する必要性のあるアプリをDockに登録するのが好ましいわけです)。Dockの左端にはMac同様、Handoffのアイコンが(必要時)表示されます。


▲OS 11のDockに、限界までアイコンを登録してみました。結果、10.5インチだと16個、12.9インチだと18個まで入りました(開発版なので変わる可能性はあります)。

Dockの右端から3つぶんのアイコンスペースは、Siriの提案アプリ領域となっています。すでに通知センターに実装されていますが、ユーザーの行動に基づきAI(Siri)が判断したサジェストが、より目に入りやすく表示されます。

Dockのメリットは"マルチタスキング"との親和性です。Dockからアプリのアイコンをドラッグし、右へスライトオーバーしスプリットビューにしたり、位置を変えたりと、まさに自由自在。分割表示は左側の3分の1、半分、3分の2と段階的に変更できます。ウインドーは最大4つまで出せ、アプリ間をまたいだファイル(ドキュメント)の操作もドラッグ&ドロップで行なえます。

※ファイル操作のデモ(WWDCハンズオンより)ファイル操作は両手でないと難しいため、画面の大きなiPadでないと操作しづらそうです。そもそもiOS 11のマルチタスキング系機能は、Pro以外のiPadでは限定的となる可能性が高いです。

"ポストPC"というコトバも久しく聞かなくなりましたが、iOS 11のiPad Pro向けフィーチャーは、どうしてもパソコンのほうが便利だった最後の部分に対しての、それこそファイナルアンサーのように見て取れます。

ARの波に乗り遅れることなかれ

AppleはWWDCで開発者向けにARキットをリリースしました。これによりAR対応アプリ開発の敷居がグンと下がることを意味しており、"新しい波"が来るかもしれません。すでに「ポケモンGO」などが対応を表明しています。



ゲーム以外にも、例えば家具のカタログなどで、実際に自分の部屋に置いてみたりといったことが可能になります。ARはiPad用というわけでもないですが、やはりいいカメラ、大きな画面のほうが相性いいでしょうから、WWDCでもiPad Proを用いたデモが注目されていました。

以上、どう考えてもiOS 11でiPad Proは最強化します。今秋、iOS 11がリリースされ、iPhoneユーザーが騒ぐのを尻目にiPad Proならではの新機能を大いにひけらかしたいがためにも、筆者もminiへの執着をやめようと決心したのでした。

参考記事:WWDC17発表まとめ