「やすらぎの郷」第7週。倉本聰先生は「高倉健がモデル」っていうけど、ボクらの健さんはこんな人じゃない

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倉本聰・脚本のシルバータイムドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)第7週。

前週から引き続き、主人公は誰なんだというくらい、「秀サン」こと高井秀次(藤竜也)を中心に展開した秀サン・ウィークでした。


伝説のスターが紙おむつを……


若いつもりで25キロのバーベルを持ち上げた結果、ギックリ腰になってぶっ倒れるという大恥をかいてしてしまった秀サン。

しかし、それくらいで老女たちの発情はおさまらなかった。さすが、女性をみんな「マタタビをかいだ猫」のようにしてしまうマタタビ体質の持ち主!

秀サンのヴィラには介護をしようという老女優たちが多数押しかけ、ごったがえしていたのだ。

「脂粉の香りでムンムンしちゃってて、昔の遊郭、思い出しちゃった」

「おまけにみんなババアだから、何となく加齢臭も漂っているし」

リアルに室内の様子が伝わってくるけど、それにしてもひどい表現!

しかも、秀サンひとりではトイレにも行けないから、老女優たちがパンツを脱がせて紙おむつをかはせようと大騒ぎしているらしい。

「高井秀次が紙おむつねぇ……」

伝説のスター、男の中の男と呼ばれた秀サンにとっては、これ以上の羞恥プレイはないだろう。

大納言(山本圭)の語るように、まさに「地獄だぜあれは」だ!

そんな状況に耐えかねたのか、秀サンが失踪してしまい、「やすらぎの郷」内は騒然となる。

秀サンひとりでは動くことができないので、例の老女優たちの誰かが、秀サンを独占するために連れ去ったという見方が大半だったが、実は秀サンは菊村栄(石坂浩二)の部屋に。

「やすらぎの郷」職員であり、元・暴走族の宮下一馬(平野勇樹)が秀サンから懇願され、菊村に相談もしないまま、彼の部屋に秀サンを隠したのだ。

「高倉健がモデル」というわりにヒドイ扱いじゃない?


入所当初、老女優たちからやたらとチヤホヤされていた菊村なのに、マタタビ・フェロモン全開の秀サンが「やすらぎの郷」に入所したことによってアッサリ非モテグループに追いやられてしまい、今後、ふたりはライバルとして何かと張り合う関係になるのかな……と予想していたのだが、そうでもなかった。

菊村の部屋での秀サンは、ただのわがままっ子!

かくまってもらっているのに、当然のごとくベッドは占拠するし、部屋の中でタバコを吸わせないし、家主面でやりたい放題。老女優たちと同じく、菊村に無理難題をふっかけて振り回す側のポジションだったのだ。

ライバルかと思ったら、アンタもわがままヒロインたちの一員だったか。

そして、菊村は秀サンに振り回されまくっていたが、秀サンは秀サンで、脚本の倉本聰に思いっきり振り回されていた。

さんざんやってきた石坂浩二いじりに飽きて、「新しいおもちゃがやって来たー!」という感じだろうか。

紙おむつをはかせようとする老女優たちに、パンツを脱がされそうになる。

菊村の部屋で発見された時には、尻を突き出してベッドにうつぶせになっているという、いわゆるホモ的にウェルカムなポーズ。

自分ひとりじゃトイレにも行けないから「ウンチ、出たいんです、手伝ってください」なんてセリフまで言わされる。

いびきが「ニャーニャー」と猫ちゃんの泣き声そっくり!

もはや、海からボートに乗って颯爽と登場した秀サンの面影ゼロだ。

伝説のスター・秀サンがこんなことをさせられているなんて……というか、演じている藤竜也もよく受けたな、この役!

『週刊文春』5月25日号で、倉本聰自身が秀サンのモデルは高倉健と明かしていたが、それにしてはひどいキャラクター設定だ。

もし高倉健が健在で、この役をやらされていたらと思うと……まあ断ってただろうな。

倉本聰と高倉健は、ドラマ『あにき』や映画
『駅 STATION』などでコンビを組んでいるが、その時に何かあったのかと勘ぐってしまうレベルだ!

「逝きましょう」か「生きましょう」か


この第7週で注目すべきポイントはやはりウンコ・ションベン問題ではないだろうか。冗談ではなく。

この『やすらぎの郷』、人生の最終回を迎える老人ホームが舞台というわりには、これまで介護問題がほとんど扱われてこなかった。

メインキャスト陣が、80歳前後にしてはメチャクチャ若いし元気なので、及川しのぶ(有馬稲子)が若干ボケているのと、菊村の亡妻・律子(風吹ジュン)の最期が認知症で大変だったと回想で語られているくらいで、介護シーンというのはほぼナシ。

みんな身体も頭も元気で、依然、恋愛するも気マンマンだし……老人たちがメインキャストではあるものの、老人ホームというよりは、『テラスハウス』のシェアハウス生活を見ているような感覚だ。

しかし、ここにきて秀サンがギックリ腰によって寝たきり化。はじめてメインキャストの中から「介護される」人間が出たのだ。

ションベンをがまんしたり、ウンチするのを手伝ってもらったり、紙おむつをはかされそうになったり。

今のところ、コメディタッチで描かれており、深刻な介護といった雰囲気ではないが、老人ホームのドラマならばやはり、そのあたりの話も描かなければウソだろう。

第32話で、「お昼ごはん、まだ食べとらん」とつぶやきながら徘徊するボケ老人が登場したのも印象的だった。あ、やっぱりそういう人も入所してるんだ。

寝たきりで動けなくなると、急速にボケが進むなんて話もあるし、秀サンがこのまま認知症に……なんて展開もあるのか!?

もちろん、老人たちのドラマだけに、どこかのタイミングでメインキャストの誰かが亡くなってしまう(ドラマ中でね!)ということも十分考えられる。

ドラマにつけられたキャッチフレーズ「さいごは笑って、いきましょう」は「逝きましょう」なのか「生きましょう」なのか……。

とりあえず菊村と秀サンによる、内緒のドキドキ同棲生活がどんな結末を迎えるのか、今週も見逃せないぞ!
(イラストと文/北村ヂン)