1994年10月8日、「10.8決戦」と呼ばれた試合は、NPBが監督、コーチ、選手ら858人に行ったアンケート調査「プロ野球史を彩った最高の試合」（2010年）で1位に輝いた球史に残る一戦として知られる。69勝60敗で同率首位に並んだ巨人と中日によるシーズン最終戦は、「勝った方が優勝」という前例なき戦いとなり、日本国中が見守った。

試合は、槙原寛己氏、斎藤雅樹氏、桑田真澄氏の豪華リレーと、落合博満氏や松井秀喜氏のホームランなどにより、巨人が6-3で勝利した。伝説の一戦から23年。20日放送、TBS「バース・デイ」では、「”伝説の10.8決戦” 23年目の真実 激闘を演じたあの男たちは今」として元中日・山田喜久夫氏の現在を伝えた。

3点リードされた5回に2番手として登板した山田氏は、「0点で帰ってきてってことしか頭になかった。もう少しこうやっとけばよかったかなとか、少なからずある」と今も悔しさを滲ませると、当時の心境を「気合い入ってましたね。みんな、車に乗ってこないように。ビールかけするから。ジャイアンツを喰ってやる。ひと泡吹かす」などと振り返った。

それでも山田氏は、プロ2年目の松井氏と対戦すると2ボール1ストライクから投じたカーブが甘く入ってしまい、試合を決定付けたといっても過言ではないホームランを浴びてしまった。この時、山田氏は、僅か4球、1アウトも取れずに降板している。

「マウンド降りる時です。どこに帰ろうかなと思いました」という山田氏は、「後から聞いたんだけど、おふくろと親父が。おふくろが特にファンの人にスタンドで謝ってたって。そういうのを聞くとちょっと辛い」、「みんな泣いてました。僕も泣いてました」などと、その裏側を明かす。

その後、左肘のケガも重なり出場機会が激減した山田氏は、広島にトレードされた後、28歳で引退。引退後は打撃投手を経て、2014年から名古屋市内に、わらび餅専門店を開業した。

この転身にも「10.8決戦」が影響しているという山田氏。「自分の中で10.8投げたっていう。フォアボール出さずに逃げずに投げ切ったっていうのは。結果的にはホームラン打たれてるんですけど、いい自信になった」と話すと、「もう一度あの時に戻れたら、どんなボールを投げますか？」という質問には「もう一回、俺はカーブで勝負すると思う。アウトコースいっぱいに決めて」と語った。