『図解! 業界地図2017年版』(ビジネスリサーチ・ジャパン著/プレジデント社刊)

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■コンビニ競争は総合商社の代理戦争?

ファミリーマートは、サークルKサンクスを事実上飲み込む」

『図解! 業界地図2017年版』でも言及しているように、コンビニのファミリーマートとスーパーの「アピタ」「ピアゴ」を展開するユニーグループ・ホールディングス(HD)は、9月1日に経営統合し、ユニー・ファミリーマートHDとしてスタートした。

ユニーは子会社にサークルKサンクスを抱えており、統合会社のコンビニ部門は当面、「ファミリーマート」「サークルK」「サンクス」の3ブランドで展開。将来的には、「ファミリーマート」に一本化する予定だ。

15年度末現在、3ブランド合計の国内店舗数は1万8006店舗。セブン&アイHD傘下のセブン−イレブン・ジャパンが国内で展開している「セブンイレブン」1万8572店舗に肉薄する。

この状況を受けて、ローソンの動向に注目が集まるのは必然だ。同社の国内店舗は1万2395店舗。セブンイレブンに次ぐ2位から3位に転落した。大株主の三菱商事も動向をきにしていたようだ。持株比率34%弱から50.1%に引き上げ子会社する。

ローソンはこれまで広島が地盤のコンビニのポプラに出資。16年4月には神奈川を中心にコンビニを展開するスリーエフとも資本業務提携を結び、スリーエフのコンビニ事業の一部を買収するという動きに出ている。フランチャイズ先をサークルKサンクスからローソンに移籍したのは、シー・ヴイ・エス・ベイエリアだ。同社は110店舗を超すコンビニフランチャイズ店を運営する上場会社である。

ユニー・ファミリーマートHDの大株主は伊藤忠商事。ローソンの筆頭株主は三菱商事である。ファミリーマート連合とローソンの競争は、伊藤忠商事と三菱商事の代理戦争という側面も強い。

■総合商社と食品会社の複雑な資本関係

伊藤忠商事は、セブンイレブン向けが多いとはいえ伊藤忠食品、日本アクセスなどの食品卸を抱える。三菱商事の子会社で食品卸の三菱食品は、売上高の2割強がローソン向けである。

それだけではない。『図解! 業界地図2017年版』の「食品(1)(2)(3)」を見てみると、コンビニやスーパーに欠かせない食材を提供している食品会社と商社の関係がよくわかる。

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▼伊藤忠商事が出資している主な食品企業
伊藤忠製糖 不二製油グループ 昭和産業 雪印メグミルク プリマハム

▼三菱商事が出資している主な食品企業
大日本明治製糖 塩水港精糖 永谷園HD 日本食品化工 六甲バター 伊藤ハム米久HD
日清製粉グループ本社 日東富士製粉

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上記以外にも、伊藤忠商事と三菱商事の両社は日清食品HDの株式を所有。伊藤忠商事はサークルKサンクス向けの弁当や調理パン、おにぎりなどを手がけているカネ美食品に出資していたが、ユニー・ファミリーマートHDを通して、関係が強まった形だ。カネ美食品はユニー・ファミリーマートHDの関連会社である。

流通最大手イオンのコンビニ、ミニストップの国内店舗は2221店舗。セブンイレブンやファミリーマート連合、ローソンに比べて小ぶりで、収益力も見劣りするだけに、イオンも打開策を打ち出したいところだろう。考えられるのは、ローソンとの協力関係だが、ローソンを子会社化する三菱商事は、イオンの筆頭株主でもある。

大きな影響力は及ばないものの、三井物産もセブン&アイHDの株式を2%弱保有している。

セブンイレブンが1歩も2歩も抜け出しているのは事実だが、ファミリーマートとローソンの2、3位の座を巡る争いと、それを取り巻く総合商社の動きからは目が離せない。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)