こんな序盤で正体がバレるウルトラマンは初めてだ「ウルトラマンオーブ」7話

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池袋サンシャインシティで開催されている「ウルトラマンフェスティバル2016」も、いよいよ明日(28日)まで! 夏休みはもう終わるけど、ヒーローの活躍は終わらない。『ウルトラマンオーブ』先週放送の第7話「霧の中の明日」を振り返ってみよう。


不吉な予知夢ばかりを見てしまう少女、ハルカ(宇野愛海)。予知夢に現れる怪獣をスケッチしてブログにアップしていたハルカに、SSPのナオミ(松浦雅)たちがコンタクトを取る。予知夢のことを聞いたSSPの面々は「怪獣の被害を抑えることができるかも」と色めき立つが、ナオミは暗い表情のままだ。

「明日は見えても、明日を変えることなんてできない」

ハルカは自らの能力を忌み嫌っていた。たとえ予知できても、彼女には悲劇的な未来を変えることはできないからだ。「こんな力があっても、今までいいことなんて何もなかった」と言うハルカに、ナオミは幼い頃に見た光の巨人の夢について話す。第1話のOP、過去のオーブがマガゼットンと戦っている場面が映し出されるが、ナオミとオーブにはどのような関係があるのだろうか?

ついにウルトラマンオーブが怪獣に敗北する予知夢を見るハルカ。目の前に現れたクレイナイ ガイ(石黒英雄)を指差して思いっきり「ウルトラマンオーブ!」と叫び、ガイは飲んでいたラムネを盛大に吹き出す。ハルカはガイが変身するところまできっちり予知夢で見ていたのだ。オーブリングのことも言い当てられ、「すごいな、そこまでお見通しか」と、つい正体をバラしてしまうガイ。シリーズのこんなに序盤で、(しかも唐突に)正体がバレてしまうウルトラマンなんて初めて見たよ。
「ウルトラマンがどうしたの!?」「変身して!」と押し寄せてくる子どもたちに「ぼく、ラムネのお兄さんだよ!」と苦しすぎる言い訳をするガイが可愛らしい。

ガイは、あらためてハルカに協力を要請するが、ハルカはそれを拒む。「どうせ運命を変えられないなら、こんな力、はじめからなければ良かったのに」と嘆くハルカに、「俺だって同じだ! 救世主なんかじゃない」とガイは苦い顔で応える。

ガイことウルトラマンオーブは、かつての戦いで大切な人の命を守ることができず、自分自身の力も、本来の姿も失ってしまった。今は他のウルトラマンの力を借りて、やっと戦っている状態なのだ。それでも希望は捨ててはいない。

「過去は変えられない。けど、未来は変えられる」

こうまでしてガイがハルカの協力を求めるのは、ウルトラマンオーブが人の力を借りなければ戦えない戦士であることと関係があるのだろう。ウルトラマンオーブは無敵のヒーローなどではなく、人の力を借りて戦う“弱い”ヒーローなのだ。

ハルカの予知夢どおりに現れた怪獣は、硫酸怪獣ホーだった。かつて『ウルトラマン80』に登場した怪獣で、失恋した少年のマイナスエネルギーによって生まれたものだ。人間の負の感情であるマイナスエネルギーが怪獣を生み出すという概念は『ウルトラマン80』の大きなテーマであり、ホーはその代表的な存在だ。

ホーはその後、『ウルトラマンメビウス』のウルトラマン80が客演したエピソード「思い出の先生」にも登場している。非常にファンからも評価の高いエピソードなので、機会があったら、ぜひとも映像で見てもらいたい。

暴れるホーに立ち向かうガイだが、ハルカはそれを止めようとする。予知夢の通り、ウルトラマンオーブは負けるというのだ。

「やっぱり明日は変えられない! 運命には逆らえないの!」

ホーはハルカの悲しみと無力感、つまりマイナスエネルギーから生まれた怪獣だった。そのことに気づいたガイは、ハルカを叱咤する。「しっかりしろ! あんた自身の心が明日を闇に染めてどうする!」。

「あんたが夢に見た運命なんて、俺が変えてやる」

ヒーローのセリフとはかくあるべし。ガイはウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスの力を借りて、バーンマイトに変身! ところが、ホーのマイナスエネルギーの力に苦戦を強いられてしまう。戦いを見守るハルカの心に変化が表れる……。

「運命は変えられる……変えなきゃ! 負けないで、オーブ! 立って、ウルトラマンオーブ!」

ハルカの心からマイナスエネルギーが消えたため、ホーも力を失った。スペシウムゼぺリオンに変身したガイは、一瞬の静寂の後、立ち尽くすホーをスペリオン光線で消滅させてしまった。

『ウルトラマン80』矢的猛先生の教え



今回のストーリーは、次のように要約できるだろう。

「明日は見えても、明日を変えることなんてできない」(ハルカ)
「過去は変えられない。けど、未来は変えられる」(ガイ)

「やっぱり明日は変えられない! 運命には逆らえないの!」(ハルカ)
「あんたが夢に見た運命なんて、俺が変えてやる」(ガイ)

こうやって考えると、非常にシンプルなストーリーだ。ウルトラマンシリーズには、これまでにもハルカのような人間の予言者や超能力者はたびたび登場してきた。『ウルトラマンティガ』「拝啓ウルトラマン様」の挑発的な予言者キリノマキオや『ウルトラマンガイア』「呪いの眼」の超能力少年・沢村修作などだ。今回の隠れサブタイトルにもなっていた『ウルトラセブン』「明日を捜せ」にも予知能力者ヤスイが登場した。彼らに比べて、ハルカは非常に人間らしい存在だと言える。彼女の持つ予知能力はSF的やオカルト的なストーリーに発展することなく、自分自身の心の問題へとつながっている。

どんな能力を持っているか、どんな環境に置かれているかが問題ではない。たとえば、貧困は辛いものだ。しかし、貧困から逃れられないと自分で決めつけていては、他者の力を借りることができても、やはり貧困から逃れることはできないだろう。やはり必要なのは意志の力だ。その上で、人の力でも何でも借りればよい。

「そんなに難しいことではない。ほんの少し勇気を出せばいいことなんだ」

これはガイの言葉ではない。『ウルトラマン80』「先生の秘密」で主人公の矢的猛先生(長谷川初範)の教えを受けた登校拒否児童の塚本少年が、26年後の『ウルトラマンメビウス』「思い出の少年」で教師になって同じような登校拒否の教え子に伝えた言葉だ。ハルカの心はこのときの登校拒否少年たちに近い。そして、同じような気分に陥っている人は今の日本に大勢いるはずだ。

というわけで、ホーという怪獣を通して、36年前の『ウルトラマン80』と10年前の『ウルトラマンメビウス』とつながっていた第7話でした。

さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第8話は「都会の半魚人」。海底原人ラゴンと深海怪獣グビラが登場するぞ! 見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。闇を照らして、悪を討つ!
(大山くまお)